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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
魔法
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85

 とある偉大な魔法使い様が言っていた――「魔法は、集中力がないと放てない。思考してから言葉に出るもの。」


 この話の根拠は、魔法を使う前に一つの手筈である。


 思考。


イメージでも想像力でもない。


単に思考であること。頭を回転させること。


 数字を当てはめるや3*3の数字を元に戻す、またはものを移動し、指定されたものが出せる道を作るや一つの文字を移動し、言葉を組み立てるなど、とにかく思考するのは魔法の肝要だ。


 そして、これらは後に人を呼んで“概念”である。種族ごとにやり方も違うため、通称を“概念”にした。


 吸血鬼の概念、人間の概念、獣人の概念、また竜族の概念のように……特に正式な名前を付ける必要がない。


 だが、とある兄妹の討論で魔法の概念が名前を付けられた。


 「――つまり数独、数字パズルの並べ替え、そして、スライディングパズルとクロスワードパズル……簡単に説明すると、この世界の人たちが言った魔法の概念というのは、実は私たちの世界の『パズルゲーム』なんだ。」


「じゃあ、魔法は集中力がないと放てないというのは……」


「パズルは解けないと謎に成立しないと同じ、魔法の概念が成立しないと使えないんだ。だから、この話の本当の意味はあくまで“集中して”解ける必要がある。別に桃ちゃんが才能がないわけじゃない。」


 「そうか……」


 「それに、パズルのことを触ったこともないのに、いきなりパズルを解いてって言われても、突然できるようになることはないだろう。だから、今が使えなくても、気に病む必要はない。」


 「うん……そうね。兄さんありがとう。」


 これは、とある兄妹が魔法についての会話である。


 また、妹の方はとある人物の「魔法」についてそう言っていた。


 「でも、こうしてわかっていれば、だんだんよくわからなくなるね……」


 「うん?魔法のこと?」


 「うーうん。兄さんもわかるじゃない?アイツの『魔法』……」


 「ああ、そうか……そうだね。考える時間が必要ない『魔法』、確かによくわからなくなる。」


 「兄さんは何も知らない?」


「さあ……よく考えても何もわからない。ただ私が確定で言えるのはフロンさんと同じ、アイツの『魔法』は『普通の魔法』ではない。まさに『狂った魔法使い』の名前みたいに、魔法の概念自体も狂っている。」


 「そうか……」


 二人は「魔法」のこと、何もわからなかった。


**** 


実は、フロンはちゃんと作戦を考えていた。


それは二つの作戦。


一つは、奇襲を仕掛けること。


敵の注意力は自分に集中していない、気付いていない時が奇襲を仕掛ける良い好機だった。


このまま直接相手に攻撃するのはとても真っ当な戦法だった……が、それを実行するには一つ重要な前提がある。


それは、「相手が普通の体を持っている」こと。


フロンができる攻撃魔法――あるいは今実施できる魔法の「結晶体」の中では、そのほとんどが現象を起こさせる、直接身体にダメージを入る魔法だ。


このまま攻撃したら、井上若実本人に傷つけるのは避けられない。


下手すると、簡単に殺してしまう。


だから、チューニングを通してこの作戦を知っていた井上星は、当然この選択肢を排除した。


フロン自身も実行したくない。


ただフロンの理由は単純に井上若実に傷つけてはダメだという理由じゃない。


『――実は私、攻撃に関する魔法はほんの一握りしか持っていません。若実様に傷つけるのはダメですし、無駄にしてはいけません。当然、完全に持っていないわけではありませんが、私が直接本体(精神)に攻撃できるのは……二回だけです。この二回とも外してはいけません……』


これはフロンが作戦を伝える時に井上星に伝わったこと。


一瞬で複雑な考え方、気持ちが秒もいらなくなるほどの時間で通じ合える、これがチューニングの利点である。


同時に欠点でもある。


もし若実様を殺せば、アレはここからいなくなるだろう……だが、それはあくまで「ここから」……つまり、本体(精神)を攻撃しないと、単に無実な人を殺してしまう。


フロンの「目的」、また今後の目標を考えると、これをやったらただの本末転倒である。


これはフロンが奇襲をしない理由、したくない理由である――チューニングの欠点は、本人が知られたくない気持ちも知られてしまうことだ。


ドラゴンは消耗戦ができない。短期決戦も向いていない……むしろ、戦う場面なんてそもそも望まない。


逃げることを選びがち。逃げるために何を犠牲するのか、この戦闘は何のためのことなのか、簡単に考えられてしまう。


ある程度の冷血さ、合理さ……それはフロンが井上星に不信感を抱かれてしまう理由、また反感を買うものだ。


だが、フロンがここにいる理由、あるいは今の「TRPGチーム」にいる理由は、「大事なものを守る」ためだった。


その大事なものを守るための気持ちも当然、チューニングによって井上星に伝わっていた。


井上星はその気持ちを信じている。


だから、井上星はもう一つの作戦を実行する。


****


「脳よ、精神よ!我に従え!」


――マインドバリア!と彼は感じていた。わかっていた。


今回の「手触り」は前回までのものとは全く違うものだと。


 だから、彼は自分が全く眼中にいない相手に口答えされるとは思わなかった。


「……うん?この魔法の“感覚”……バリアか?なんでわたくしの魔法はバリアに対処されていた?解析された?この戦闘中に?いやいや……おかしい、そもそもこのような『実験体』はなぜ――」


自分は真実を言っているだけだ。


「――はっ!それはお前の魔法は別に大してことじゃないからだよ。」


彼はわからない。なぜ、相手がそんなことを言えるのか。


「……あ?」


「……お前、自分の『魔法』に自信があるようですね。」


全くその通りだから、彼はそう言った。


「……だから?」


「――だから、そんなこともわかってないんですよ。お前は。」


この実験体は一体何を言いたがっている?と彼には何もわかっていない。わかっているのは、


「自分の『魔法』はいかにちっぽけな矮小で、すぐに解析されて、とんでもなくくだらない、ゴミクズのような魔法とはなぁー!」――こいつが自分を蔑んでいたいだけ。


 音よ、精霊よ、頼む!同調チューニング


 ……


何も知らないくせに。自分の「魔法」は本当の魔法だと、真実の魔法だと、そして、真に強い魔法だと知らないくせに、よくもそんなことを言える。こいつはやはり、ただの「実験体」だと、彼は自分が冷静だと思っている。


何の感情も沸いていないと思っている。


 だが彼は相手を見下している。見下しているから、相手のことをもっと強く打たなければ。


 認めろ、認めろ、認めろ――すでに怒りの感情に任せて、思考が怠っている彼は、見下している相手に認められるはずがないし、自分の過ちに気付くこともできるはずもない。


 1秒


 2秒


 3秒……


 彼は何も喋っていない経過した時間はたったの三秒。この間、相手も何の動きもない。


 故に、彼は何もわからない。


 「脳よ、精神よ、我に従え!」


 精霊よ、頼む――マインドシールド!


ピキィピキィピキィピキィピキィピキィ――


何も知らない彼は今回の「魔法」の強度を強くした。防がれても彼は笑った。彼は「手触り」でわかるから。相手が弱くなっている。


 「ははっ!どうだ?調子に乗るなよ?今まではこちらが手加減しているだけだ。お前は――」


 それでも彼はわからない。何も知っていない。


「……はは。お前、これしか使えないの?ちょっと威力強くなっただけで、なーんにも変わっていないじゃん――結局、僕に防がれた♪」


****


フロンおじさんが伝えた作戦は主に二つ:


 一つは奇襲。もう一つは――


『星様。お願い……もっと、相手の注意を惹きつけてほしい。』時間を稼ぐこと。時間を稼いで、助けを求める。これはこの作戦の主旨。


「……――結局、僕に防がれた♪」


井上星は作戦に従って、動いていた。


狂った魔法使いは黙っていた。再び口を開けたのは3秒後だった。


1秒


2秒


3秒……


「脳よ、精神よ――」


精霊よ、頼む――


良し!効いてる!だが、三秒だけでは足りない!もっと、もっと、相手に判断が鈍らせるやつを――


この後、両方が発展したのは「魔法」と言葉の戦いだった。


10秒、20秒、どれが一番相手に刺さること、どれが一番相手の命に刺されること……お互い飛び交う言葉が剣のように躱し交わされ、相手の隙を窺っている。


そして、この戦いの決着は、井上星の最後のこの話だった。


「結局お前は、ただの無駄にプライドだけ人一倍に高くて、激しいダブルスタンダードを持っている存在だろう。当ててみようか?お前、実は誰かに”認められたい”んだろう?そのちっぽけな『魔法』で!」


 1、2、3……これ以上の時間が経っていた。


3秒が経っていた時、井上星は何となく今だ!とわかっていた。この言葉がちゃんと相手に刺さっていた。


魔法を使うには、思考の時間が必要だ。


強大な効果が持っているほど、時間が長くなる。この理屈は普通な魔法でなくても通用する。


 相手は強大な「魔法」使うつもりだ。


 ならば、フロンは対応しなければならない。


 フロンは、とある魔法を準備している。


 竜よ、精霊よ――竜族の結晶魔法。これは強大な魔法を防ぐために。


また、フロンは次にある魔法を使っていた。


同調チューニング。これは救援を要請するために。


井上星がちゃんと時間を稼いだため、フロンが助けを求めることが成功した。


『……フロン。結晶魔法の準備は?』


 『できています。』


『二回でできる?』


『はい。必ず、二回で中から追い出せます。』


『では……神よ――』


それは突如に井上星の脳内に現れた声、知らない声だった。


そして脳が死ぬほど、膨大な何かが流れ込んできたものだった。


井上星は、その後のことは何も覚えていなかった。


井上星は、強大な魔法によって気絶した。


 覚えられるのは気絶する前に、人らしくない輪郭の人型の存在が現れた気がした。


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