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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
祈り姫
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58

 「はっ!」と右手に持った短こん棒を振って、次に左手でこん棒の先端を掴む。またその次に流れるように体をひねって、身体全身を回る。


 最後は中腰の姿勢に固定し、両手がこん棒を横に持った状態で、誰もいない地面にグッと締めくくる。


 ここで彼女は動きを止めた。


なぜ彼女――ノールの動きが止まったというと、彼女の想像では、自分はこん棒で敵を制圧したのだ。


 ノールは今、神官のこん棒術を練習している。


 「……もう一度。」

 

 少し汗を拭き、ノールは短こん棒を持ち直して、武器の手を前に出す。姿勢を構えた。


まず武器を前にして……身体は完全に直線にならないように立つ。次は攻撃を仕掛けしにきた敵にぶつかり合わないように避けるーー「はっ!」と彼女はすぐさま横に移動し、こん棒を振った。


敵の身体を狙うより、攻撃を阻止するのが最優先!


サッ、フッ。彼女はイメージトレーニングの敵を仮想し、武器を所持する部位を狙う。


洗練された動きは簡潔性を語って、無駄な動きは簡単に見せられない。


横移動、縦移動……歩幅を合わせて、直線の攻撃と横切りの攻撃……


サッ、サッ、フッ。


彼女は足運びに注意しつつ、こん棒を振った。ここで、彼女はまた仮想の敵を想像し始めた。


ノールの前にイメージトレーニングでの敵が自分に向かってきた。武器を手にした敵はその武器を自分に振ってきた。


一振り、二振り……自分の攻撃によって、武器手が振れなくなった。


 ……痛みを与えるのはこのタイミング!


 「はっ!」と連続の攻撃が続き、サッ、フッ、フッ、こん棒を突き、振る音が出た。


また順手に横回し、縦回し……縦押し、横押し……!と、彼女は身体と手を動かし、次々と動いていた。こん棒を払い上げると、一周回って、プッシュしたようにこん棒の両端に持って、押す。


ここで風もまるで喝采を送っているように、ノールの肌に吹いていた。動きによって発生する風だ。


「ふう……」一息を入れて、彼女はもう一度こん棒を縦と横回しして、最後は一振り……と思わせて、次に方向転換して、仮想敵の顔にこん棒の尾端で突く。


ここまで練習すると、ノールはやっと両手を胸に収めた。今度こそ練習が終わったのだ。


 「はあ……」数秒の時間に目を閉じ、息を吐いた。


長こん棒なら、回し技が多いけど、短こん棒なら、小回りの技が一番効く。


ノールは旅の時にラーリーに教わったことを思い出しつつ、手遊び感覚で軽くこん棒を振っている。


……そういえば、神官はなぜこん棒術を学ぶ必要があるか、ラーリー先生が言った覚えがある。たしか――


 「――武器にこだわる必要がない。それが神官のこん棒術。そうでしょう?神官様。」とまるでノールの思考を読み取ったように、旅館の店主が言っていた。このことに対して、ノールは驚いていない。店主の隣にデイリーがいるから。


店主はさっきまで、デイリーに神官のことについて説明したのだ。


時々こそこそ話をしている二人だったが、こん棒術の練習に集中しているノールはずっと気にしていなかった。聞いてもすでに授業でわかった話だ。


そのため、ノールはさっきまで二人のことを無視してきた。


だが、話しかけられたら、さすがに無視できない。彼女としても無視したくない。ノールは二人の方に目を向いて、微笑みを作って言った。


 「ええ。生活用品でも代用できる技ですから。」ある種、平民のための技でもある。ちゃんと生活していれば、小物の鈍器はいくらでも見つけられる。こん棒にこだわる必要がない。神官は武器を求めない。


「カッコイイ!ねえ、ノール様!教えてくれてもいい?」デイリーは上目遣いの感じにノールに言った。


「え、ええ……私は大丈夫ですが……」とノールはこっそりと店主の方に見た。


「こう言うと思ったから、なるべく君に見せたくないんだが……」


「ひどいよ!父さんは今までずっとこうやってこっそり見ていただろう!」


二人のここまでの経緯を簡単にまとめると、明日ノールは出発するつもりだから、彼女は旅館の裏庭を貸して、こん棒術を練習した。ちょうど少し仕事の時間が空いたデイリーは見つけて、ノールの許可を取って、練習を見学したのだ。もちろんデイリーは自分の父親のことを強引に無視したが。


また、店主実はかなりこん棒術を見てきた。小さい頃、成人の頃、所帯を持つからの今……その中に、ラーリーとノールのこん棒術、彼の中に一番評価が高い。


「監視という意味も含めているから、仕事だよ。」だから、一人が欠けても、店主は今夜も「監視」した。


「本当に?」店主はデイリーに疑いの目に向けられた。


「本当だ。父さんは嘘をつかない!」と堂々と嘘をついた店主。


二人の会話の真実を知っているノールがクスっと笑った。


この笑い声を聞いたデイリーは言った。


「……ねえ。父さんがひどいと思いません?ノール様。」と同意を求めに来たデイリーに、ノールはただ「あはは」と苦笑いした。


「ほらほら、困らせるんじゃない。」


「むう……」と頬を膨らせるデイリー。


「私はもう15歳だよ!自立したい娘の気持ちを考えてほしいけど。」


「はぁ……」店主は自分の娘にしょうがないようでため息をついた。


「まあ、元々俺が決めるようなことじゃないが……」


「つまり?!」


 「……神官様の迷惑でなければな。」


 「ええ、大丈夫ですよ。神官の巡礼、こういう意味も含めています。“住民たちの悩みを解決して、防衛術を教える。”冒険者だけでなく、神官も住民の味方です。だから、迷惑になりません。」


 「やった!」


 「ですが、デイリーさん。一つだけ約束してほしい。」


 「うん?それは?」


 「……悪用しないでください。」


冗談の雰囲気がないため、また、ノールが冗談を言えるような人ではないため、デイリーは普通に約束した。


 「……うん。約束します。そんなことしません。」


 「なら、教えます……が、時間は大丈夫でしょうか?店主様。」とノールは店主に確認した。


店主はデイリーに一目を見た後、しょうがない感じに頭を掻いた。


 「残りの仕事は俺自身でやるから、娘と仲良くしてていいですよ。」


 「そうですか……申し訳ありませんね。」


 「いいえいいえ、こちらこそ。」と店主が言った。


話が一段落の隙につけこんで、デイリーはすぐに言った。


「でも、ノール様は本当に行かないんですか?ギルドに。」デイリーが言うギルド、当然冒険者協会のことだ。


 「……うん。」


 「ここのギルドは他の町とは違いますよ……」ちょっと怖いかもしれませんが――と、後の話はこっそりと付け加えるデイリー。


 だんまりのノール。


 ノールの様子を見て、デイリーは諦めず続いて言った。


 「昔のことがわかっていますよ。聞いていましたし……でも――」


 「デイリー。」


呼ばれていたデイリーも一瞬でだんまりとなった。 


 “すみません。かなり特徴のある名前ですが、わかりません。”ノールがこの旅館で四人についての話を聞いてみたら、一言で言えばこんな感じだった。


 そして、二人に一通り聞いてみたら、そこでデイリーが提案した。


“人探しなら、ギルドに行ってみたらどうでしょうか?”と、少し意外な発言である。


ノールは少し目を閉じて、しばらく考えこんでいる様子。


 続いて、「とりあえず、こん棒術を教えましょうか。」と言った。


 「……うん。では!よろしくお願いしまーす!」と、あえて明るい感じに言ったデイリー。


 そして、もうしばらく二人の様子を見ている店主。


二人がしっかり交流していることを見て、店主は少しあたたかい笑顔になって、その場を後にした。


****


 翌日。


 ギルドの前に立つノール。


 彼女は心を決めていた。

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