夜のベッドルーム
ベッドに腰掛けて、ボーッとしていた。
すると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。開けると、会長がいた。
「入って良い?」
聞くので、断るわけにも行かず、良いと答えた。
会長は入ってくると、ベッドに腰掛け、私に隣りに座るように促した。私は座った。
しばらくじっとしていたが、会長は私の肩に手を回し、もう一方の手で胸を触り始めた。
あー、やっぱりそういうことをするのかー。
半分驚きで、半分あきらめの気持ちが湧いた。
きれいだ、きれいだ、と会長は何度も言った。そんなことを言われたことがなかったので、すぐには信じられなかったけど、会長にはそう見えるのだろう。
会長は私のパジャマを脱がし、私は下着のみで、ベッドに腰掛けていた。
会長はベッドから降り、私の足元にしゃがむと、私の足の先を舐め始めた。くすぐったかった。
私の足元にひれ伏す会長を見て、別に惨めとか、そういう感情は全く起こらなかった。ただの行為で、これで済むのならこれで済ませたい。
会長はなめる場所を少しずつ上にずらし、ふくらはぎから太ももに舌を移してきた。
それから、会長は服を脱ぐと、私に覆いかぶさってきた。彼の体は貧相で、肌はしわくちゃで、ごく少ない肉がたるんでた。
私の上に乗り、会長は自分の股間辺りに片手を伸ばし、何かを一生懸命にしていた。私はやがてパンティーを脱がされると覚悟していたが、なかなか会長はそうしなかった。
そのうち、会長は私の上から退き、ベッドの縁に腰掛けて、ぐったりと首を落として、しょぼくれているようだった。
「もう年じゃ」
会長の体が反応しなかったのだ。彼は私に謝った。
「年にはかなわん。こんなヨボヨボのジジイには、お前も興味を持たんだろう」
私は返答に困った。
「若いってのは、良いもんじゃな、羨ましい。いくら金があっても、若さは買えん。高い服着て、高い車乗って、高いもん食べて、豪邸住んでも、お前さんみたいに金に興味のないもんには敵わんよ。金に弱い女には効果があるんじゃが、お前さんはそうではないのー」
多分、私はまだ精神的にそこまで行っていないのだと思う。
ぽつりぽつりと、会長は自分の過去を話し始めた。子供の頃は貧乏だったこと、若い頃からとにかく働き詰めだったこと、3度結婚したものの、仕事一筋で毎回妻とはすれ違いになり離婚したこと、そして、この年になって死を身近に感じ始めて、やっと何が大切か分かったこと。
「わしの人生は、失敗だった」
ぼそっと、押し出すような声で、そう言った。
そのセリフは私の心にも突き刺さった。私も自分をそう思っていたから。私のような不幸な人はいない方が良い、不幸な人は私一人でたくさんだと思っていたのに、目の前にそういう不幸な人を見ると、気の毒になった。自分と同類なんだと思うと、とても可哀想に思えた。
同時に、こんな金持ちで、自治体連合から重宝されていて、大企業の経営者だから人望もあって、会いたいと思った人に会えるから権力もあるのに、それでも幸せになれないものなのか、と不思議に思った。
私の短い人生経験からは、何もコメント出来なかった。
会長はそのまま服を着て、部屋から出ていった。




