国際金融資本
翌朝、服に着替えて、ダイニングへ行った。食べる人は二人だけなのに、バイキング形式で、いろんな食材が用意されていた。私は欲しい物だけを選んで、席に着いた。
会長は、外へ散歩しているようで、私がダイニングに来たことを使用人から知らせを受けて、戻ってきた。
二人で同時に食べ始めた。
私は、今日帰りたいと伝えた。会長はあっさりと良いと言い、朝食後にヘリで戻ることになった。
帰りの目処がついたことと、昨晩の彼の苦悩を聞いて、彼も普通の人なんだという親近感が少し湧いたことで、私は彼にたずねた。
「都内に住んでいて、中国軍の略奪とかに、遭わなかったですか?」
会長はしばらく考えていたが、やがて口を開いた。
「君にとって、中国は敵か?」
当たり前すぎることだったので、私はうんと答えた。
彼は、東京の自宅や会社は、中国軍が暴徒から警備してくれていたと言った。私が不思議そうな顔をすると、彼は続けた。
「中国のスポンサーは、わしらなんじゃよ」
私は分からなそうな顔をしたままだった。
なぜ、中国が日本を攻撃したか、その理由が分かるかと聞かれたので、分からないと答えた。
「わしらが攻撃させたんじゃよ」
彼は少し自慢げだった。
「わしらと言っても、わしの会社だけじゃなくて、そうじゃのー、経済界全体の意志といったところかのー」
会長は、日本と中国は、全くと言って良いほどきれいに産業が棲み分けされ、経済的に分業が確立されているので、経済利権の対立が起こり得ないと言った。つまり、中国にとって日本を攻撃することに利はなく、むしろ害はありえる。
「じゃー、何で?」
私は聞いた。
彼は経済の仕組みから話し始めた。世界中が経済成長を始め、発展途上国がなくなりつつあること、先進国ではインフラが充実し投資対象がなくなったこと、ネット決済が広がりSWIFTを通さない資金の流れが産まれ、欧米系の金融機関が危機感を持ったこと、そして世界的に金利低下の現象が生じていること。
金利の低下は、金融機関に死滅的なダメージを与える。最初は日本のみで見られた現象だったのに、気がつけば海外に飛び火し、アメリカやヨーロッパでも見られるようになった。
「わしらは危機感を持った、このままではジリ貧は目に見えていた」
もちろん、新しいサービスや新しい製品を提供すれば、一時的に利益は確保できる。しかし社会の中間層がやせ細っていってしまっては、企業は成長できない。つまり、世界経済は袋小路に陥りつつあった。
そんな時に、中国がいかにも世界覇権を目指すかのように軍備拡張に傾いた。本来、これは全く恐れるべきものではなかった。なぜなら中国には守るべき海外権益がほとんど無いし、中国自身が深刻な外貨不足で、そんなことをする余裕すら無かったからだ。
しかし、これは良いカモになった。社会が混乱すれば、閉塞感を打破して新しい市場が開けるし、その混乱の原因を中国のせいに出来る。




