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令和の乱  作者: 岡田一本杉
アルバイトをするまで
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33/148

転機

ある夜、いつもと違う方向へ食料を探しに出かけた。

自転車で走って、何気なくたどり着いたところは、広い敷地に団地がいくつも建っていて、その奥の広場にはジープや装甲車が並んでる。

自衛隊の大宮駐屯地だ。

真っ暗で、ひっそりとして、誰もいないみたい。

自衛隊なら、保存食とかあるだろう。

フェンスを乗り越え、食べ物の有りそうな建物を探す。

ふと、中央の建物に明かりが点いているのに気付いた。電気が生きているだった。

ということは、人もいるはずだ。

そこには近付かないように、食品倉庫らしき建物を探した。今までの経験から、大抵の建物は荒らされて、扉が壊されている。

懐中電灯はもちろん無い。月明かりだけが頼りだ。

体育館のような大きなかまぼこ型の建物の近くを歩いている時に、中から声をかけられた。

「日本の方ですか?」

急に声をかけられて、びっくりした。

はい、と答えると、

「体育館の扉の鍵を開けてもらえませんか?」

この体育館は外からかんぬきで施錠されているので、かんぬきを外してほしいと、頼まれた。

迷った。

ここは自衛隊の駐屯地であり、当然私は勝手に入った。

その理由を聞かれたら、食料を盗みに来ましたとは答えられない。

「ぜひお願いします」

体育館の中から、悲痛な叫びが聞こえた。

押しの弱い私は、体育館の角を回り込み、扉のかんぬきを外した。

扉が中から開けられた。大勢の人が中にいた。

「閉じ込められていました。開けてくれて、本当にありがとう」

私は感謝された。

自衛隊大宮駐屯地第32連隊の隊員だった。

体育館の中を覗いた。薄暗闇にだんだん目が慣れてくると、内部の様子が見えた。

床一面に布団が敷き詰められていた。所々に、食事の跡があった。女性や子供もいた。

この中で、隊員たちは家族とともに暮らしていたようだ。

団地があるのに、何でこんな所で暮らしたのだろう?閉じ込められた?誰に?

状況が飲み込めないまま、私は立ち尽くした。

リーダーらしき人が指示を出し、隊員が10人くらいずつの班に分かれて、駆け足に体育館から出ていった。

半分くらいの隊員と、女性や子供は、体育館に残った。

「外の状態はどうなってるの?」

何を聞いているのか分からなかったし、質問の意味が分かったとしても、そもそも何も知らなかった。そう答えるしかない。

彼らは、自分たちの状況を話してくれた。


停電で、現場が混乱していた、ある日、武装した兵の乗ったヘリが数機、運動場に着陸し、防衛省の方面隊総監の命令書を持ってきた。

32連隊を武装解除をし、以後彼らの指揮系統に入るようにとの内容だ。

幕僚本部との連絡がつかないため、命令書の真偽が分からない。

断ると、32連隊長は銃を突きつけられた。同時に、大宮駐屯地のほぼ全部の施設が武装した兵に占領された。

そして、隊員全員が、敷地内の宿舎の家族とともに、無理やり体育館に閉じ込められた。

1日1回、彼らが食事を持ってくる。質素ではあるが、飢えはしなかった。


私が一人で食料調達に走り回っている時に、こういう苦しい境遇の人達もいたんだ。私は一応今まで通りのベッドもあったし、まだ恵まれていたかも。

パーン、パパーン。

遠くで、数回の銃声。

叫び声が何回か聞こる。日本語と、意味のわからない言葉。

再度、銃声。今度は連続的に。

それから爆発音が数回。少し向こうの建物から炎と煙が立ち上るのが見える。


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