財宝発見
水はとても澄んでいて、かなり透明度が高かった。頭のライトの照らす先がコバルト色にずっと見渡せて、自分が空中に浮かんでいるような気分に勘違いしてしまいそうだった。水面近くでは、時々魚がすぐ間近で泳いでいたが、潜るに従って見られなくなった。
数分、彼女の後に続いて潜り、湖底のごろごろした岩だなが見えてきた。湖底に着地しようと近づくと、急に水温が下がり、体中が冷たくなった。
「雪解け水の地下水が、湖底の岩の間から流れ込んでるみたい」
琵琶湖の水は、川から流れ込むものが大部分だが、それだけでなく、直接地下水が水中に、岩の隙間からしみ出ることもあるという。琵琶湖の北側は日本でも有数の豪雪地帯で、万年雪があるので、氷点下の雪解け水が湖底付近に直接流れ込んでいるらしい。
冷凍庫並みの冷たさだ。あまりの冷たさに、苔など植物も全く生えておらず岩がむき出しになり、魚やエビのような小生物も全くいない、透き通るような無の、広大で静寂な、死の世界だった。
夏希は周囲を見渡した。千両箱のようなものはどこにもなかった。
「何にも無いね」
私はほっとした。これで戻れる。その時、彼女の少し後ろに、人影のようなものが見えた気がした。
私は、彼女の肩越しに、彼女の背後を凝視した。頭のライトが彼女を背後を薄っすらと照らし出した。
明らかに、人がいた。鎧を着ていた。不気味。
彼女に近づき、後ろと合図した。
彼女も振り向き、水中の人物に気付いた。彼女は怖れもせずに、その人物の方へ湖底をジャンプするように近付いていった。
すると、人物は一人ではなく、数人で列をなしていて、彼らは皆鎧を着て、腰に刀を差していた。戦国時代に沈没した輸送船の武士だった。
「伝説は本当だったんだ。ここは冷たいから、死体はほぼ冷凍で腐らなかったのね」
武士たちは鎧のせいで、みな立ったままの姿勢だった。数百年前の人間にも関わらず、冷水のため肉は腐らず、表面は蝋化して、見た目はまるで生きているようだった。
武士団の中頃の4人の手には、鎖で大きな箱が繋がれていた。
彼女はその箱に近づくと、フタの一部を引っ張った。脆くなった木のフタは簡単に剥がれた。
中から、キラキラ輝く小判が見えた。
「やったー」
ヘッドフォン越しに彼女の歓声が聞こえた。
私は小判の価値が分からない。もちろん高価だということは分かるが、自分が手にしたところで使いみちも分からないし、それほど魅力を感じなかった。まさに猫に小判状態だった。
「エアーが少なくなってきたから、一度上がろう」
そう言うと、彼女は先に上に行った。私も続いた。
あっという間に武士団は小さくなっていき、しばらくして水面近くまで来た。




