何気ない出来事
翌朝、夏希に今日はどうするの?と聞かれたので、ぶらぶら散歩と答えた。昨日、友だちになると言ったのに、本当のことを言えないのは、すごく悪い気がした。
小高い丘の上から、湖面の船を見た。潜っている人と見張っている人が見えた。確かに中国軍だろう。でも、なんで中国軍がこんなところに?もしかして、本気で伝説を信じて、財宝探しをしているの?
何か1m四方の四角い金属の装置のようなものを水中に入れていた。
私はしばらくぼーっと見ていたが、湖面の船の位置が昨日よりある地点に集まりつつあることに気が付いた。もし、財宝を見つけたのなら、あの辺りの真下にあるのだろう。葛籠尾崎と竹生島を結ぶ線上の、竹生島から1/4位の辺りだ。
そよ風が気持ち良い。今晩、竹生島で第3師団の配置図をもらったら、夏希に別れを告げて帰らねばならない。でも、もう少しここに居たかった。
こういう狭い世界の中で、細々と、でも幸せに暮らせれば、良いものかもしれない。
そんなことを考えていて、ふっと下を向いた時、頭のすぐ上を何かがかすった。今のは何だったのだろうと、周囲をキョロキョロと見回してみると、近くの木の幹に、矢が刺さっていた。さっきまでは無かったものだ。
手にとって抜こうとしても、なかなか抜けず、力を入れてやっと抜けた。しっかりとした硬い木で出来ており、先端には荒削りの金属の矢尻が付いていた。お祭りとかのおもちゃの矢ではなくて、昔実戦に使われたような本物の矢だった。これだけのスピードで飛んでくれば、人に当たれば、十分に殺傷力はある。
私、狙われたのかな?
狙われる心当たりは無かった。でも、昨日、道を歩いている時、突然材木が倒れてきたが、あれも誰かの故意だったのかもしれない。
この集落では、私はよそ者だから?
あまり歓迎されてないのなら、配置図をもらったら、すぐにこの集落は出たほうが良い。
日が傾いてきた。夕日がオレンジ色に輝き、湖面近くの太陽の光が水面にキラキラ反射しきれいだった。湖面に出ていた船が、ぞろぞろと帰り始めた。
船を貸してくれる漁師との約束の時間が近付いてきたので、私は、立ち上がり、丘から降りて、港に向かった。




