閑話 アンクの冒険譚ー6
大変お待たせしました…年末に向かうへつれて本当に忙しすぎて時間が取れない(´×ω×`)
<マーリン魔術学院>学院長室
淡い光が消え私と八人の子供達は体育館からここへと転移してきた。
この子達は何が起こった!?という一般的な反応はせずに私の部屋の装飾に興味津々だ。
「この指輪はなんだろう?凄い魔力を感じるけど」
「わぁーーーきれいな指輪だね!」
「そう言えば十六夜兄さんも似たような指輪を付けてたな」
「さて、そろそろ話をしてもいいですか?」
私は子供達の会話を断ち本題に入る様に促す。
子供達の会話に出てきたイザヨイという人物と指輪の事も気になりますが今は置いておきましょう。
「すみません、それで学院長が僕達なんかに何の用があるんですか?」
「僕達はただの貧民、目に止まるとしたら色々な種族がいる事ぐらいだ」
「そうね、魔法に関する知恵も無ければ戦闘の方法も分からない、私達は多少魔力があるだけの子供に過ぎない」
「そんな僕達が何故学院長という人物に呼び止められたのか、不思議なんですよ…警戒して当然です」
とても貧民の子供とは思えない程の大人びた対応…随分ちゃんとした躾をされているのですね。
これはこの子達が大人になった時に困らない為でしょう。
保護者と思われる少年は随分と先を見ている。
「そんなに警戒しないで下さい、私はただ話をしたいだけですから」
「その話と言うのは?」
「あぁ、すいません、私とした事が…その前に皆さんのお名前を教えて頂けますか?」
「では僕から、僕は…………」
私はお茶と茶請けを出しながら皆の名前を聞き、顔と名前をすり合わせて行く。
人の名前と顔を覚えるなど私には数秒あれば事足りる。
「では次は私が自己紹介しましょう、私は<マーリン魔術学院>学院長ゼラ・ファウストと言います以後お見知りおきを」
「宜しくお願いします、ゼラさん。ではそろそろお話を聞かせて頂けますか?」
私と初めて会った時から常に周りを警戒し大人びた言葉遣いをするこの男の子は犬人族のリト、右耳に大きな傷があり片耳でしか音を判別出来ていない様だ。
しかし…この警戒心は少し異常ですね。
「えぇ、では前置きは無しでお話ししましょう。貴方達には類まれなる魔法の才能がある、そこで是非我が学園の特待生クラスで魔法を学んでみませんか?」
特待生クラス。
そこはほんのひと握りの生徒しか入る事の出来ない場所、魔法の深淵を覗こうとするエリートが集まる魔境である。
だがこの子達ならば首席合格する事も可能だろう、正しい知識と優秀な指導者を与えれば。
「学園入学を目指していた僕達からすれば、願ってもいない提案です……しかしそんな簡単に決めてしまって良いのですか?」
「えぇ、将来有望な人材ましてや〈マーリン〉の後継になり得るかもしれない君達を手放してしまうのは愚の骨頂なので、それに私個人としても貴方達に興味が沸きました」
この子達ならば本当に私をこの呪縛から解放してくれるかもしれない、そんな打算的な考えが無いとは言いきれない、だがこんな私でも何百年と魔の道を歩んできた求道者この子達がどこまで強く聡くなるか……私はそれを見届けたい、そう思ったんだ。
「では、皆さんの意志をお聞きしても?」
リトは兄弟達の顔を見回し一人一人の決意を確認する。
「リトにぃ、私達がっこーに入れるの?」
「あぁ、これでアンク兄さんにいい報告ができるな」
「うん!」
「どうやら決まり、の様ですね、それでは必要書類などは後日送付します、今後の詳しい日程などを記した物を同封しますのでよく確認して下さいね」
「分かりました、色々とありがとうございます」
リトは恭しく頭を下げる、その所作には何処と無く高貴なものを感じさせる。
そうか…最初から感じていた妙な違和感は…
それと合わせて彼の育った環境が、他人…いや汚い大人を信じられないリトの人格を作ったのだろう。
この学園でこの子達にも家族以外の繋がりができれば、友と仲間と呼べる者達と励み競い合えば少しは変わるかもしれません。
あぁ、私とした事が随分柄ではない事を。
だが、この子達の笑顔を見ていると何故か胸がほわっと軽く暖かい気持ちになる、何故だろう。
こんな気持ちは、私がかつて父と呼び慕っていた<大賢者マーリン>と過ごしていた幼少時代以来ですね。
<冒険者ギルド>
さて、僕は冒険者ギルドにやってきた訳だが、今凄く困った状況にある。
簡潔に説明すると、ギルドに併設されている酒場で飲んだくれていた自称古株冒険者のおっさん二人に絡まれた。
まぁ、その理由も馬鹿げたものだ。
なんでも僕の目付きが気に食わなかったらしい。
「おいおい、だんまりか新人?ケハハハハ!おい!皆見ろよ!冒険者目指してここに来た割には一言も言い返せないらしいぞ?」
「ここはな?てめぇみてぇな餓鬼が来る場所じゃねぇんだよ、冒険者ってのはタフじゃなきゃ務まらん、理解したらさっさと回れ右して家に帰んな」
「「「そうだ!そうだ!かーえーれ!かーえーれ、」」」
二人の古株冒険者に便乗して周りにいた他の冒険者までもが僕に対して見下した目線と罵声を浴びせてくる。
なんとも幼稚な事だ、冒険者とはこんな奴らばかりなのだろうか?
「いや……そうでもないみたいだね」
僕が目を向けた先にいたのは、他の冒険者達とは装備も気迫も練度も桁違いな集団だ。
なんだろう、どこかで見た事のある様な…
頭に浮かんできた名前を口に出す前に、目の前にまだ立っていた古株冒険者二人にそれを邪魔される。
「おい!てめぇ耳ついてんのかぁ?ちっ、もういい冒険者の大変さってのを教えてやる」
「あぁ、それが良い覚悟しろ?糞餓鬼!」
「全く…本当にめんどくさい人達だな!」
僕は二人の大振りな拳を相手の股下を潜り避け、背後から後頭部へと蹴りを見舞う。
蹴りを後頭部へ受けた冒険者二人は意識を失いギルドの草臥れた床へと倒れ込んだ。
誰が見ても分かる、単純な光景。
冒険者ですらない子供に、古株冒険者であるおっさん二人がやられ意識を刈り取られた。
僕がボコボコにされる光景を待ち望んでいた野次馬達は、魚のように口をパクパクさせながら固まっていた。
しかし、ある集団だけは別だった、彼らがアンクを見る目は逸材を見つけた歓喜に支配されていた。
だが、それをアンクが知る由もない。
「さて、とりあえず受付に行ってこれを渡すか」
僕はそしらぬ顔で受付へと足を進めた。
冒険者ギルドでアンクが騒ぎを起こしたすぐ後。
<冒険者ギルド クラン???会議室>
冒険者ギルドには金を払えば部屋を設けられる制度がある、そしてその制度を使うのは大方クランと呼ばれる集団だ。
クランと呼ばれるのは冒険者が集まって作る集団の事で、有名なクランであればある程高名で高ランクの冒険者達が集まっている、つまり人間をやめた化け物達の集まりだ。
だが、そんなクランは数える程しかいない。
そしてそのひと握りである有名クランの会議室ではある少年の話題で持ちきりだった。
「おい、見たか?あの動きただのガキじゃねぇぞ、久しぶりの逸材だったなぁ」
「えぇ、あの子は必ず上がってくるでしょうね」
「楽しみだな、ああいった若手の成長を見るのは」
「ガッハッハッ!酒がうめぇ!それよりお前らあんなガキにちょっと大袈裟じゃねぇか?」
「そうだよぉ〜まさかあの子供をクランに入れるなんて言わないよねぇ?」
だが、勿論好意的な意見だけでは無い。
否定的な意見も多く見られる、だがこれが普通だろう。いくら良い動きをしたからと言っても、高ランク冒険者からしたら少年など赤子同然なのだから。
そして、皆が会話をする中一人沈黙を続ける一人の女がいた。
その女はこの世界ではかなり珍しい黒髪で、何処か日本人を連想させる顔立ちをしている。
そして眉目秀麗という言葉が良く似合う。
「静まれ」
女のその一言で騒がしかった部屋は瞬時に静まる。
「さて、お前達が噂しているその少年、今何処にいる?」




