↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/63

閑話 アンクの冒険譚ー7

仕事の合間合間に書いてたらこんなに空いてしまいました…


「もしかして…今からその子の所行く気ですか?」


「あぁ、問題あるか?」


その言葉を聞き女の後ろに控える秘書風の男は深いため息をつく。

苦労人なのだろう、彼の目元には濃い隈が張り付いている。

それに対し女は悪びれる様子もない、いや悪いとすら思ってないのだろう。


「始まったよ……団長のふるい落とし」


「ついてねぇな、あいつも」


「まぁ、今まで死んだ事はないんだ心配しすぎるなって」


「君達がその子の事をずっと話してるのが原因なんだ、少しは考えてくれ……はぁ」


そう言って彼はまた深いため息をついた。


「よし、行くぞ案内しろ」


「分かった分かった、だからそんなくっつかないでよ〜」


誰もその女を止めようとはしない、こうなったら何を言おうと彼女は行くのをやめないと知っているからだ。


そして、彼女は団員の一人である少女に案内を頼み早々と会議室を出ていった。

その姿を見る秘書風の男はこう呟く。


「全く……今回に限って死人が出るなんて最悪の事態がない事を願いましょう、苦労を司る神がいたら呪ってやりたいですね、とほほ」


それを見る団員達は引きつった苦笑いを浮かべるのだった。








★★★


僕はファーゼラスの部屋へ案内され手短に事の顛末を話し、冒険者になりに来た事を伝えた。


その時言われた言葉は。


『やはり来ると思っていたよ、アンク少年、もう冒険者カードは作成済みだ』


仕事が早い!というか何故そこまでの確信があったのか不思議でしょうがない。

だけど、もうできているのであれば時間を無駄にする事もない、早々にクエストを受けて金を稼ぐとしよう。


「ありがとう、僕は早速クエストに行く事にするよ」


「なに、気にしなくて良いさ。それに君の目を見れば分かる、今まで何百と見てきたからね、何をしてでも上に上り詰めるという覚悟の宿った目を……」


まぁ確かに上を目指したい気持ちは大いにある、なんせ十六夜さんに追いつきたいのだから、それは他の兄弟達よりも強い自信がある。

冒険者になるのは生きていく為のお金を稼ぐ目的もあるけど、これから起こるであろう色々なことを僕の経験値にする狙いもある。


そしてファーゼラスはそんな僕にこんな助言をしてきた。


「もし冒険者として上に上がりたいなら、冒険をしなさい、自分を高みへと押し上げてくれる壁を壊してその先へ。しかし勇気と蛮勇を履き違えてはいけない、それを履き違えると待っているのは死だけだ、今は分からなくてもいい、だがこの言葉だけは覚えていてほしい」


僕を見るその目は懐かしい何かを僕に重ねているようなそんな感じがした。


「……分かった、胸にしまっておくよ」


僕の返事を聞いたファーゼラスは柔和な笑みを浮かべ嬉しそうにしていた。


(この人からは十六夜さんとは違った優しさを感じる)


僕はふとそんな事を思いながらドアノブに手をかけ、ファーゼラスの部屋を後にした。







★★★


冒険者カードを受け取った僕は早速受付に行き、受付嬢にクエストを斡旋してもらう。


僕は最底辺からのスタートだ、受けられるクエストもかなり限られてくる。


(やっぱり採取系のクエストばかりだね)


紹介されるのはどれも低級な素材採取系のクエストや、街の汚物処理場の掃除ばかり。かろうじてある討伐クエストはゴブリン退治くらいだ。


ゴブリン退治……少し物足りない気もするけど、ランクを上げるには討伐クエストが手っ取り早い。

さっさと規定数を討伐して帰るとしよう。


「ではゴブリン退治を受けるので手続きをお願いします」


「かしこまりました、では気をつけて行ってらっしゃいませ」


冒険者カードにクエスト受注の判を押してもらい、僕は意気揚々と目的地へ出発する。


その時何故か受付嬢が心配そうな顔をしていたが、僕は気にもとめなかった。


「さて、速攻で終わらせて帰ろう」









★★★★★


「おい?どこにいる?お前は私の時間を無駄にしたいのか?」


「そ、そんな事言われても〜」


冒険者ギルドの一角で黒髪の女が少女に凄い形相で詰め寄っていた、そのただならぬ雰囲気にギルド中の人間が釘付けになっている。


「お、おい見ろよあれって確か」「あぁ、初めて見たぜ【女帝】クラウディア凄い迫力だな」


野次馬と化した冒険者達がこそこそと黒髪の女を噂している、それほどに彼女は有名らしい。


「はぁ……居ないものしょうがないか、アイリスその少年の特徴は?」


「う、確か……綺麗な金髪で全身に細かい傷があったような……」


「全くお前はそれでもうちのクランの一員か?興味を持ったやつの見なりくらいしっかり覚えておけ馬鹿者!」


アイリスという少女はクラウディアという女性にこれでもかと言うほど怒られていた、その光景に他の冒険者達は震え上がっている。


【女帝】というのは名ばかりではないようだ。


誰もが近づくのを拒否しそうなその空気の中一人の受付嬢が二人の会話に割ってはいる。


「お説教中の所申し訳ありません、クラウディア様少し宜しいですか?」


「なんだ?アスフィじゃないか構わない話してくれ」


「では手短に、なんでもクラウディア様は金髪の少年をお探しの様子、その少年ならつい先程クエストを受けてギルドを出られました」


「ほう?それでどんなクエストを受けた?」


「ゴブリンの討伐クエストです、単身(ソロ)で向かわれたので少し心配しておりました。今までそれで帰ってこなかった冒険者を嫌という程見てきたので」


アスフィと呼ばれた受付嬢は【女帝】にアンクがゴブリン討伐に向かった事を教える。

彼女なりに新人(アンク)の身を案じているのだろう。


「そうか……ゴブリン如きでは相手にならんだろうが、私が試す前の準備運動には丁度良いだろう、アスフィ礼を言う」


「いえ、お役に立てて何よりです」


「アイリス行くぞ」


一人忘れられていたアイリスは団長のお説教が早く終わって少し安堵していた、何故なら普段は一度熱が入ると終わりが見えない程に長々とお説教が続くからだ。


「はーい!……見つかって良かった」


「さて、どれほどの奴か楽しみだ」


「ひっ……!!」


アンクの元へ向かおうとするクラウディアの顔は好奇心と期待で満面の笑みを浮かべている、だがそれは花のような美しい笑顔ではなくアイリスが思わず寒気を感じてしまうような【女帝】が魅せる臨戦態勢の時の笑みであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。