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愚者

遅れてすいません。


『β迎撃システム、模倣『剣聖』、再現レベル10%、スタンバイ……了承…開始します』


いやいや流石私が作ったシステムだ、たかだか10%といえど『剣聖』の動きを模倣できるとは。

まぁ、既に『剣聖』の力を使いこなしている主の体ならば模倣レベルを上げても大した問題は無いだろうが。


だが所詮は模倣、偽物に過ぎない、実際に『剣聖』と戦えば戦いにはならないだろう。


しかしアスモデウス程度であれば今の力で問題無いでしょう。


「殺す!殺す!絶対にぶち殺す!ばらばらにして殺してやる!」


アスモデウスは我を忘れたかのように殺すと喚き散らし、死槍メナスを振り回してくる。

そのめちゃくちゃな軌道を見切り軽くあしらいながらβは迎撃を始める。


上から振り下ろされたメナスを砂鉄から錬成した剣で弾き返す、しかしただ砂鉄を錬成しただけではない、私が独自に開発した製法を取り入れている。刀身はこまめに振動させ切れ味を強化、そして砂鉄にすこしばかりのオリハルコンを混ぜ込んでいる。


代価を支払わない錬成は私の十八番だ。


「なっ!?たかだか砂鉄を固めただけの剣でメナスを弾き返しただと!」


βは現実を受け止めきれずに唖然としているアスモデウスに切りかかる。


最初は全てを防いでいたアスモデウスは疲弊しどんどん傷が増えていく、それは刻々と酷くなり次第に致命傷になりうる傷が量産されていく。




それはもはや一方的な殺戮だった。


アスモデウスは十六夜の体が動く度に体の何処かを欠損させており、断ち切られた場所から血を噴き出させ、そこが治ればまた断ち切られと繰り返す様に切り刻まれる。


グチュ。ブシュ。グチャ。グチュ。ブシュ。グチャ。グチュ。グチュ。グチュ。バキッ。メキッ。グチュ。

グチャ。


肉を断ち骨を割る音が辺りに響き渡る。


アスモデウスが魔法を使い反撃しようとすれば詠唱中に口を切られ、槍を使おうとすれば腕を根元から切断される、自慢の角で貫こうとすれば角をへし折られ、もはや戦いですらなかった。


それは十六夜とアスモデウスの力が隔絶しているという証拠であり、最初からアスモデウスに勝機など一片もなかったのだ。


アスモデウスがそれに気づくのは少し遅すぎたと言えるだろう。


仮に大賢者じゃなく、出てきたのが剣聖であったとしても結果は変わらなかっただろう、そんな事は些事に過ぎない。




「お、俺様はす、す、全てをは、破壊す、する、破壊の王あ、あ、アスモデウス、お、お前だけはぜ、ぜ、絶対に道連れにし、してでもこ、殺してやる」


アスモデウスは既に壊れていた、言葉すらまともに発することができない程に。

誰だって同じ目に合えばこうなる事は間違いないが、腐っても魔王の血を継ぐものならもう少し耐えて欲しかった。


「βお疲れ様です、他の姉妹達もスリープモードに移行してください」


『了解、御主人様』


私は自らの手でアスモデウスを屠る為に、α達迎撃システムをオフにする。


「あぁ、無様な姿ですね、アスモデウス、サタンの忠告を聞かなかった貴方の自業自得ですが…まぁいいでしょう終わりにしましょう」


「グヘッアハッぐははははははははははははははははははははははははははは、あははははっ、サ、サ、ササイコウノ、コ、コ、コロシカタ、エ、エ、エンサノクサリ、ム、ムサ、ムサ、ムサボレ、ス、ス、スベテヲ」


私の言葉を聞いたアスモデウスは狂ったように笑いだした、やはり完全に壊れてしまったようだ、後半の言葉もただの戯言だろう。


だが一つだけ気になるワードが出た………あの鎖は、まさか!?


そして私は次の瞬間目を疑う光景を目の当たりにする。


アスモデウスの体に巻きついていた気味の悪い鎖が突然意思を持ったように動き出し、アスモデウスを貫き始めたのだ、鎖はアスモデウスの臓物を周囲に撒き散らしながら勢いを増していく。


一本だった鎖はアスモデウスの体を貫く度に一本、また一本と増えていき、たった数秒で三十は優に超える程の数まで増殖した。


「あれは、なんでしょうか…おぞましい光景だ」


私は笑い続けながら鎖に貪られていくアスモデウスを見てそう零す。

鎖はアスモデウスの体が自らの住処だ、とでも言いたげに鎖自ら開けた風穴を自由自在に内側、外側と行き来していた、目や鼻体の穴という穴からも飛び出している。


今のアスモデウスはただの化け物、シンプルだがそう呼ぶのが相応しい身なりになった。

鎖が飛び出した口をパクパクと動かしながら「コロ、コロ、コロス、コロス、コロコロ」と壊れたラジオの様に同じ言葉を繰り返す。


「まさか、あれが例の鎖だったとは…サタンも趣味の悪い物を創ったものだ…」


まともに言葉を喋れないアスモデウス以外に周りには誰も居ないはずなのに、誰かの声が私の耳に入ってきた。


「アハ、アハアハハハハハハ、馬鹿な奴だよねぇ、僕達の苗床になるしか存在理由がない奴がこんな化け物を殺そうだなんてさぁ?滑稽、滑稽見てて凄く笑えたよ」


私はその声の主をすぐさまに理解する。


ーーーあの鎖ですか…


「おやおや?気づいたぁ?そうだよ、今喋ったのは僕達だよぉ?アハハハハハハ」


ズシャッと言う音を立ててアスモデウスの背中を突き破り、勢いよく突き出してきた鎖には口が付いていた、それは言葉を喋り意思を持つ、その異形の口は流暢に言葉を喋り出す。


「君はこの苗床とはどうゆう関係だったのかなぁ?まぁどうでもいいんだけどね、とりあえず君がただの化け物って事だけは分かってるからさ、イヒヒヒヒヒヒ」


「貴方は何者ですか?サタンが創った存在なのですか?」


私は異形の質問を無視して、逆に質問を返していた。


「んん?僕達?僕達は魔王サタンによって生み出された大量破壊兵器、サタンは僕達を『愚者』と呼んでいたよ」


私が聞いていた話と全然違う…あの様な形態があるなど。


「あれれ?今そんな形態は知らないとか思った?ねぇ?思ったよね?アハハハハハハ、それは当然だよ、僕達は本当なら生まれる筈のなかった存在なんだから」


「貴方が生まれたのは偶然?そう言いたいのですか……ただの偶然で貴方の様な異形が生まれるとは思えない」


何かが生まれるには、何かしらの理由がある、それがどんな力の作用によって引き起こされたにせよ目の前の異形は存在してはいけない。


「アハハハハハハ、失礼だなぁ、今僕達が存在してはいけないとか思った?ねぇ?思ったよね?ーーーーそんな失礼な奴は、死んじゃえ!!!!!」


瞬間有り得ない速度でこちらへ向かってきた愚者はアスモデウスから生やした鎖で私に攻撃を仕掛けてきた。


「なっ!?」


ーーーこの私が反応できなかった。


私は間一髪のところで体を横に捻りなんとか鎖を躱す。一撃でももらえば主の体と言えど軽症では済まなそうだ。


ただ主の目は片方が欠損している、片目だけで避けるのは流石に厳しいものがありますね。


「面倒な鎖だ……しょうがない少しばかり私自身(・・・)の本気を出すしかない様ですね」


久しぶりにあれを使いますか、戦鬼と呼ばれていた頃の私に戻りましょう。

この戦い方は大賢者と呼ばれる遥か前、戦鬼と呼ばれていた時代に考案したなんともめちゃくちゃな魔法。


まぁ若気の至りというやつです。


「『魔力炉』解放.Lv∞.『古代魔法 創造』さて相手をしてあげますよ『愚者』私はさしずめジョーカーと言った所でしょうかね?」


「アハハハハハハ、面白いね!君!」








と言った感じで大賢者と『愚者』とか言う魔王が創った兵器の戦いが始まった訳だが……アスモデウスには敵ながら同情してしまった、出てきて数分でフェードアウト。しかも体に巻き付けていた鎖に苗床にされるモブっぷり…


異世界容赦ないな。


と、俺、霞 十六夜は急に始まった戦闘を観ながら心の中で呟いた。

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