天変地異
台風の影響で更新遅れてしまいました…申し訳ないです。
この魔法は『魔法』という概念を覆すものだ。
『魔力炉』それは魔法を発動させる為に必要な魔力を自身の魔力を消費せず、魔力炉が生み出し続ける魔力で魔法を発動させることができるという優れもの。
まぁ、『魔力炉』を創り出すのにそれなりの魔力を消費しますが、創ってしまえばこちらのものです。
主の魔力がほぼ無尽蔵とはいえ、私が編み出した『創造』魔法を連続で使えばかなりの魔力が減ってしまいます、ただ今となってはそれすらも気にする事はない。
思う存分に力を振るう事ができる。
「ただ、これを使うと戦闘と言うより天変地異の類になってしまうのですが、まぁここは主が忌み嫌う世界。どれだけ破壊しようと心は痛みません」
「今の独り言に聞き捨てならない言葉があったんだけど、聞き間違いかなぁ?『古代魔法』って言った?言ったよね?そんなもの使えるなんて本当に何者なのかなぁ!?」
「おっと、『古代魔法』如きでそんなに喚かないで下さい、耳に響いてしょうがない」
私は鎖の攻撃を『創造』によって創り出した宝具で防いでいく、『宝具 イージスの盾』あらゆる攻撃を通さない伝説の盾。
その盾は黒く、所々に紅い斑模様と禍々しい宝石が装飾されており盾の中心部には閉じられた瞳が存在している。
最初からこれを出していれば良かったのではないか?と思うかもしれませんが、そう簡単に出せるものでもないのです、幾つかの条件を満たしてようやく発動させることができる。
「あれぇ?おかしいなぁ、なんで攻撃が全く通らないの?んー、ただの盾ではないのは分かるけど、そんな馬鹿げた性能の盾は見た事も聞いたこともないよ」
鎖から困惑が伝わってくる、鎖の創造主であるサタンですらこんな芸当はできないのだから。
「さて、そろそろ私も反撃させてもらいましょうかね、『創造 覇僧樹 』」
鎖と十六夜の間に一本のなんてことの無い木が生えた、太く逞しい幹には緑なんて自然らしいものは無く、それは紅く、ただ紅く鮮血の様な光沢を放っている、それ以外の特徴と言えば全てを飲み込みそうな程に大きく禍々しい口が付いている事だけだろうか。
実に不気味な存在である。
「これで消えて下さい、昇華なさい『覇僧樹』」
私は覇僧樹に魔力を注ぎ込み、昇華を促す。
私から流れ出た魔力は幹についている大きな口に吸い込まれていく。
魔力という名の栄養を受け取った覇僧樹は急速に成長し、幹からどんどんと枝を生やしていく。いや厳密に言うとそれは普通の木に生える様な枝ではなく、黒く爛れた人間の腕である。
「ーーーあっあぁあぁぁぁあ、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い、殺したい、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いぃぃい」
生命力を得た口が動き出した、その口から出る言葉は怨み、憎しみ、激しい怨嗟の言葉のみ。
ただでさえ不気味な木はより一層不気味さを増していく。
「この木を見るのは三度目ですが、やはりおぞましいですね、我が妹はやはり異常だったのでしょう」
「ねぇ化け物、そのおぞましい存在はなにかなぁ?」
私は覇僧樹を見ながら生前に存在した妹の事を思い出していた。
鎖から発せられる声が耳に入って来ないほどに深く深く、私は記憶の海にへと沈んでいく。
★★★
???年前
《大賢者の研究所》
「あははは、これは傑作だなぁ、ねぇ兄者もそう思わない?」
私の事を兄者と呼び子犬の様な笑顔を見せるのは、妹であるローレライだ。
美しいエメラルドグリーンの髪に、翡翠色の瞳、そして髪の間から出る特徴的な尖った耳はエルフのものだ。
これだけで私とローレライが血の繋がった兄弟ではないと分かると思います。
「ローレライ…またその様な失敗作を…魔法というものはーーー」
「あぁぁぁあ!また兄者のお説教が始まる!わぁぁぁぁ聞こえなーい」
ローレライを拾ったのは運命のイタズラだったのかもしれません。
★★★
その日私は錬金術に必要になる素材を取りにかなり遠方へと出向いていた。
その素材は私が唯一作れない素材でわざわざ取りに行く必要があったからだ。
2日をかけてその素材を回収し、研究所へと帰ろうとした矢先、森の中で火の手が上がったのだ。
一瞬ドラゴンか何か他の魔物の仕業だと思ったが、どうやらそうではないらしい。
遠見の魔術で火柱の上がっている方を見てみると、そこはエルフの隠れ里だった。
そこで私は少しの興味が沸いた、エルフというのは強力な結界を張り村を森の中から隔離している。
その存在を見つけるのは困難であり、その結界を破るのも並大抵な魔力と魔法では無理だ。
だがそれが破られ、今まさに村が蹂躙されようとしている。
私はその存在が気になった。
久しぶりに骨のある相手がいそうだと。
私はすかさず『飛行』の魔法を展開しエルフの隠れ里へと向かった。
★★★
わずか数秒で着いたにも関わらず、エルフの隠れ里は既に壊滅状態だった。
そして、エルフを蹂躙しているのが人間だとわかった瞬間私は言い知れぬ殺意を抱いた。
それがこの世界の人間という事であればこんな殺意を抱かず淡々と殺して終わりだったのだが、彼らは異界の人間であり勇者と崇められる存在だったのだ。
勇者達はエルフ達を殺し、気に入った奴は犯し、それでも壊れなかった奴は奴隷にしていた。
なんとも度し難いものだ、人間という種族は。
「あっはっはっ、いいなぁ!こんな美人をヤレるなんてよ!異世界様々だぜ」
「はっはっは!違いねぇ!おらっ!もっといい声で鳴けよ!」
「ふふふ、こんなイケメンが私の言いなりに……あぁゾクゾクしちゃう!」
『殺す、殺してやる!父を!母を!姉を!弟を返せ!下等種族がぁぁぁぁぁぁあ!』
私が生き残りなしと判断し、村ごと広範囲殲滅魔法で焼き払おうとした瞬間、頭に慟哭が聞こえてきた。
その声の主は小さな女の子、だがその言葉から発せられる殺気は有り得ない程に濃く強かった。
私は咄嗟に『受動探知』を発動させ、声の主を探す。
だが一向に引っかからない、私の探知を駆使しても探し出せなかった。
私は手法を変えもう一度探知に入る、私は自分の魔力を霧の様に作り替え村へゆっくりと流していった。
魔力の霧は村へと広がり全体を覆い尽くす、そしてそのタイミングに合わせ私は魔力を震わせる。
震えた魔力に反応したのは合計で二十七個、その中でも特に強い魔力を判別し、少女の場所を特定する。
「いた……だがこれは…」
私は遠見の魔術で少女の姿を見て絶句する。
エルフだった筈の彼女の頭には黒い角が生えていた、髪の色は抜け落ち白髪に、そして肌は茶色くなり、もはや別の種族だった。
「強すぎる憎しみで混ざったのですね…角が生えているダークエルフですか…そんなの聞いたこともありませんが……彼女の魔法の才も原因の一つの様だ」
『みんな出てきて!あいつらを……殺して!』
彼女の持つ魔力が暴走し始めた、どうやら何か大掛かりな魔法を発動させるようですが。
私は危険を感じすぐ様『飛行』を解除、そして村へと降り立つ。
村を蹂躙していた勇者達は、天から降り立った私という人物を不思議そうに眺めていた。
見た目はただの少年だが、内包する魔力は勇者達を遥かに凌駕する。
「なんだ?ガキ、お前も混ざりたいのか?あはははは」
私は勇者の戯言を無視して言葉を紡ぐ。
「お前達愚か者のせいで有り得ないものが出てこようとしている、あれは世界に災厄をもたらす程の存在だ、お前達程度の命で沈まれば御の字、しかし収まらなければこの世から消し去るしかない。
私と言う存在がいた事に感謝しなさい、痛みも無く殺してあげるのだから」
「は?てめぇ何訳わかんねぇ事を………って、お、おいなんだそりゃ!?」
「さようなら憐れな勇者達、『魔力炉』解放.Lv∞、『創造』『太陽』、消え去りなさい!」
私は渾身の魔力を込めた『太陽』を地へと落とした。
私は周りに纏っている『反魔法』のおかげで暑さも痛みも何も感じないが、外にいる勇者達は違う。
皮膚は溶け、目玉は飛び出し、体の中の水分と血は沸騰し蒸発する、脳から足の骨まで全て、何一つ残ることはなく勇者達は影になった。
ちなみに勇者達に捕まっていたエルフ達は私の魔法でも修復不可能な精神的傷を負っていた為、『太陽』を落とす前に『転生』の魔法をかけ火葬とした。
来世では幸せな人生を送ってほしいものだ。
さて、残る問題は一つ、あのダークエルフの少女だ、どうやら魔法は無事に発動させることができたみたいですね、探知する限り彼女の根源は傷ついていない。
「発動させた魔法がなんであれ、碌なものではないのは確かだ、早く消し去らなければーーー」
私が『転移』で少女の元へ飛ぼうとした瞬間、目の前に彼女は現れた。
「どこへ行く!人間!貴様がこの惨状を創り出したのは分かっているぞ!」
私は彼女の剣幕よりも『転移』を使いこなし私の目の前に現れた事実に驚いていた。
まさか、『転移』を使いこなせる者が私の他にもいるとは…
「面白い、実に素晴らしい魔法の才能だ、間近で見て確信した、貴方は私の後継にピッタリの人材だ」
「貴様、話を聞いているのか!もういい!お前も人間なら死んでしまえ!『覇僧樹』!」
彼女がその名を呼んだ瞬間辺りの魔素が一瞬で無くなった、そんな事は通常ならば有り得ないが、私の目の前に現れた木を見た時その考えは吹き飛んだ。
『あぁ、人間憎い殺す憎い憎い憎い殺す、憎い憎い殺す憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い殺す憎い殺す憎い殺す憎い殺す憎い殺す憎い殺す憎い殺す憎い殺す憎い殺す憎い殺してやる!』
幹から生えた腕は無詠唱で魔法を発動させ私に向けて発射した。
その数は四、どれも勇者でさえ喰らえば即死レベルの魔法ばかりだ、しかし相手は私だ。
私は咄嗟に右手を前に突き出し『バースト フレア』を三十重発動し、全てを焼き払う。
だが幹は防がれるのを見越していたかのように追撃を仕掛けてきた、膨大な魔力を練り撃ち込まれたのは『古代魔法 破軍』天が震え大地が揺れた。数秒置いて落ちてきたのは黒い雷と白い炎だった。
あまりのエネルギーの奔流に私も飲まれそうになるが、私も古代魔法で対抗する。
「『古代魔法 幾重もの流星』砕け散りなさい」
私は天より遥か上の場所より隕石というものを呼び出し、地へと落とした。
巨大な隕石は熱を帯び有り得ないスピードで落下してくる、隕石が落ちた場所は大きなクレーターとなり地を溶かし始める。
「ちっ!クソが!『覇僧樹』!防御だ!」
幹から生えた腕は自由に動き回る様だ。地面に魔法陣を書き出した腕達は三本の魔剣を召喚し隕石を粉々に切り裂いた。
「なるほど次は魔剣……近接戦闘ですか、いいでしょう受けて立ちます『β 起動 目標 覇僧樹 』一片も残さず破壊しなさい」
『了解 ご主人様』
「人間がぁぁぁぁぁぁあ!」
そこからの戦いを一言で表すならば『天変地異』この言葉が一番しっくりと来るだろう。
何せ古い文献に語り継がれる程の戦いだったのだから。
戦いの後私はローレライを妹として、面倒を見続けた一人前の賢者になれるように、私の後継者になれるように。
だが、ローレライは恩を仇で返し私に……
★★★
古い思い出の海から帰った私は目の前の鎖へとこう宣告する。
「これが出てしまった以上貴方に勝ち目はありません」
「あははは、どうやら君は化け物の中の化け物だったみたいだねぇ?その樹が出てからというもの全く身動きが取れないし、周りの魔素を使うこともできない…為す術なしかぁ」
この木には何故かスキルが三個もついており、それぞれが一国を落とせる程の効果を持っている。
そのうちの一つが鎖の身動きを封じている『呪縛』
にほかならない。
「いえ、私など取るにたらない、私たちの主こそが最強です」
「あーあ、久しぶりの外だったのにもう終わりかぁ、残念、残念、全く勝負にならなかったし、はぁーあ、
つまんないのーーー」
その言葉を最後に鎖は『覇僧樹』の口へと収まった。
目には目を口には口を、ですね。




