大賢者
何故かここに来て魔王の息子に遭遇した。
名前はアスモデウス、確か破壊を司るとかなんとかって本で読んだ気がする。
ここではこういったビッグネームがぽんぽんと出てくるのか、まぁ俺がもつユニークスキル達が凄すぎるからあまり何とも感じないが。
俺がアスモデウスを正面に捉えながら次にどうやって動くかを考えていると頭に声が響いた。
『すいません、次は私にやらせてくれませんか?剣聖にばかりいい所を取られる訳にはいきません、それに多少なり彼奴とは因縁があるもので』
それは大賢者だった、いつもの凛とした声に少しの後悔と怒気を孕ませてアスモデウスと戦わせて欲しいと提案してきたのだ。
だから俺はこう返す。
『別に構わない、ただし全力で潰せ』
『了解 御主人様』
俺は大賢者から帰ってきた返事に満足し、体の全てを明け渡す。
★★★
俺は目の前の糞ガキをどうやって殺すかを考えていた。
あぁぁ!殺す!絶対に殺してやる!頭をぐちゃぐちゃに潰してから体を切り刻んでやる!
いいや、そんなものじゃ生温い、俺様をコケにした罰はこんなものでは済まさない!
あぁ、そうだあるじゃないか、とっておきの罰が!
俺はその光景を頭に思い浮かべニヤリと笑う。
あぁ、早く絶望した顔を見せろ、見せてくれ。
せいぜい俺様を楽しませてくれよ?
ただ一つ気になる事がある、先ほどまで感じていた糞ガキの気配が異様な気配に変わったことだ、どこかで感じた事のある、そう遠い昔に…だが思い出せない。
まぁ、どうでもいい目の前の糞ガキの死は決定事項だ、それだけは何があっても変わらない。
★★★
「あぁ、まさかまた体を動かして魔法を使える時が来るとは、主には感謝しなくては……剣聖も同じ気持ちだったのでしょうね」
大賢者は体の具合を確かめながら感慨深くそう語る。
ふむ、今の主の体は全盛期の私の体よりよっぽど馴染みますね、それに魔力はほぼ無尽蔵と言っていい、これならば私の魔法をいくら撃とうとも問題はない。
魔法を生き甲斐とする私にとってこんなにも素晴らしいことはない。
さて、始めよう、主に言われた通りに蹂躙を。
「先ずは小手調べです、アスモデウス」
「あぁん?小手調べだと?何を言って…」
私はとりあえずバースト・フレアを9重発動、凄まじい爆炎がアスモデウスを多い尽くす。
「ぎゃぁぁぁぁ、焼ける!焦げる!いぎゃぁぁぁぁぁ」
アスモデウスには再生能力がある、まぁ今はその再生能力が仇になっている様ですがね。
再生しては焼かれ、再生しては焼かれる、ただ焼かれる訳ではなく尋常じゃない爆風により体の各部位もちぎれ飛んでいる。
この程度でこの様とは……かの魔王サタンの息子とは思えませんねぇ。
「あばっ、ゴホッゴホッ、クソッタレ…なんなんだお前は……魔法の9重発動なんて聞いたことがないぞ!畜生、殺してやるよ今すぐなぁ。顕現しろ『死槍・メナス』!今の一撃でお前にはこの槍を使うだけの価値があると判断してやった!光栄に思え!」
ようやく私の魔法が収まるとアスモデウスは地面から黒い槍を呼び出した、あれは…確かサタンが持っていた。
なるほどサタンなき今、彼が使っていた武具は子供達が使っているのか。
まぁ、持っていても使いこなせるのかは別だ、死槍・メナスを含めた六本の武器はサタンであるからこそ使いこなせていた、その膨大な力を抑えるのは並大抵なことではない。
ですが、いきなり切り札を出してくるとは…
思考に耽っていると、不意に主の声が聞こえてきた。
『なぁ、大賢者あの槍はそんなにやばいのか?』
『えぇ、あの槍は魔王サタンが創り出したもので、魔王六器の中の一本です、その中でも特に破壊に特化した逸品であの刃に少し触れるだけで、触れた部分は膨張し弾け飛びます、原理を説明すると長くなりますがどうしましょうか?』
『あはは、お前の説明は確かに長そうだ今回はやめておこう、とにかく凄い槍って事はわかった、だがそんな武器あいつが使いこなせるのか?俺にはとてもじゃないがそうは思えない』
その意見には私も同意見だ、今のアスモデウスでは槍の10%の力も引き出せないだろう。
ただの宝の持ち腐れだ。
『確かに今のアスモデウスでは無理でしょうね、このままでは本当に私の魔法に消し飛ばされるだけになります』
『''今の''ね…意味深な言い方をするな?大賢者。それはまだあいつに成長の余地があるって事か?』
『それはアスモデウス次第ですね、自分の欠点に気づけなければそれは一生ないでしょう』
『そうか、まぁ俺には関係ない、余計な口を出したな、戦闘に戻ってくれ』
そこで主との念話は途切れる、思考が加速されている間の会話だ、現実の体感時間では1秒たらずの出来事だろう。
念話を終えるとアスモデウスが口上を垂れ流している最中だった様だ。
「この槍に少しでも触れれば終わりだ、俺様に楯突いたことを後悔して死ね!」
「はぁ…変わりませんね、アスモデウス。あの頃から何も変わってない」
私は哀れみを込めそう口にする。
「砕け散れ!『破轟』」
「『不落の城壁』発動」
私は右手を目の前に突き出し固有魔法を発動させる、私が創り出したこの魔法は如何なる攻撃も無効化する、それは魔法然りこの様な物理攻撃全てに有効だ。
しかし大天使ラファエルのスキルの様に万能ではない、これは防ぐ事ができるだけで、受けた魔法等を反射させる事などはできない、それに防げる許容範囲を超えれば消滅する。
「ちょこまか小賢しい!メナス!出力を上げろ」
ふむ、これは少し不味いですね、いくら力のコントロールが不完全とは言え流石はサタンが作った武具だ。
私を守る『不落の城壁に』罅が入ってきてる…
その時頭に声が響く、それは主のものでもましてや他のユニークスキルの声でもない、その声は機械的で淡々とした口調だ。
凄く懐かしい。
『大賢者様、不落の城壁が破られかけています、αは魔力出力上昇を提案します』
まさかまたこの声を聞けるとは。
『久しぶりですねα、他の姉妹はどうしましたか?』
『β、ζ、θは待機中です』
『まぁ、私がそう設計したのですから当然ですよね、では防御ではなく迎撃お願いします』
『了解、御主人様、βスタンバイ…レディ?』
『β、魔力チャージ完了、迎撃開始します』
このα、β、θ、ζというのは私を守る自動迎撃システムだ、私は幾ら魔法が使えても近接戦ではあまり
戦えない、それを補う為に作り出したのがα達だ。
遠距離は私が戦い、近距離はα達が戦うこれでどんな相手でも隙なく立ち回れる。
「さて、アスモデウス、早く終わらせましょう、あまり主を待たせる訳にはいきませんので」




