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帝国の猛攻


異世界(アース)に存在し得ない兵器の数々が次々と火を噴く、無数の薬莢が排出され標的である十六夜達に襲いかかる。

火を噴き続ける機関銃の横では迫撃砲が牙をむいている、砲弾は放物線を描き着弾しすぐ様爆発するその破壊力はやはり眼を見張るものがあり地面を抉り木々を燃やし尽くす。

だがそれは普通の人間に対してだ、彼ら帝国の人間が相手にしているのは人外という言葉がぴったりの三人組だ。


「ふぅ、効かないけど暑いし跳弾が鬱陶しいな」


「そうだね、でも魔力で壁を作れば気にならないよ?」


「お二人共本当余裕ですね、私は【時空魔法】で消し飛ばすしか防御できなくて」


銃声や爆発音が鳴り響く中普通に話し合っている、地球の人間が見れば驚きで腰が抜けてしまうだろう。

いや、こんな馬鹿げた光景地球の人間じゃなくても驚く、現に機関銃や迫撃砲を扱っている帝国の兵士達も開いた口が塞がっていない。


「な、なんなんだあいつら! あり得ない! 王が授けて下さった武器が効かないなんて!」


指揮官らしき男は明らかに動揺していた、王であり勇者でもある彼から授けられた武器が通用しないという事実に。


「あり得ない!あり得ないんだ、こんなのは認めんぞ!撃て!撃つんだ、奴らを絶対にここで殺せ!」


その叫びは壁の下にいる十六夜達にも聞こえていた、爆音が鳴り響く中でもしっかり聞こえるあたりよっぽど怒っているんだろう。


「指揮官があぁなったら終わりだろ、とりあえず壁に穴を開けるか」


十六夜は右眼を閉じ左眼だけを開ける、開いている左眼は紅く光りまるでルーシーの眼の様だ。


「頼むよ【魔眼】」


十六夜がそう一言呟くと【魔眼】の力が発動し高く聳え立つ壁の一部が粉塵を巻き上げ木っ端微塵に吹き飛んだ。


「使い方が随分と上手くなってるね、やっぱり実戦は多くを教えてくれる」


ルーシーは自らの力をモノにし始めた十六夜の姿を見て感慨深そうな顔を見せる。

今までの戦いでもそれなりに使えてはいたが荒削りだった、力加減やユニークスキルの発動スピード、ラファエルとの戦いが彼を大きく成長させたのだろう。


「ルーシーさん何か言いましたか?」


「いや、何もないよ…さぁ壁に穴も開いたし行こうか」


「そうですね、それにもう十六夜さんいませんし」


「ほ、ほんとだ! 僕達を置いていくなんて酷いなぁ!」


「ふふっ、その割にはルーシーさん笑ってますよ」


そうルーシーは笑っていた、それだけ十六夜の成長が嬉しいらしい。ルーシーからすれば我が子がどんどん成長していく様な感覚なのだろう、まぁルーシーが募らせている想いを知ればその限りじゃないが。


「良いじゃないか僕だって笑う時は笑うさ」


「なら行きましょう、十六夜さんを待たせるのは悪いですから」


こうして十六夜に続きルーシーとアーシャも帝国へと足を踏み入れた。






★★★


〈帝国 地下 研究施設〉


黒い髪に黒い目まるで日本人の様だがそうではない、その顔は日本人離れしかなりの美形だが片目は潰れて光を映していない、そして腰には一振りの剣を携えている。


「貴様らクズが殺されていないのは偉大なる王の慈悲によるものだ、その薄汚い命を少しでも長く燃やして精々役に立て」


「「「「了解しました、カルマ様」」」」


全くのズレなく同じ言葉を口にする四人の男女、それは王である彼に牙を剥き返り討ちにあった勇者達だった。

今は洗脳され虚ろな目をするただの物言わぬ人形だ、帝国に十六夜達が入り込んだ今カルマは王の命令通りに彼らを十六夜達へ差し向けようとしている。


「では行け、後これは王からの命令だが住人にはできるだけ被害を出すな」


「「「「了解しました」」」」


そうして勇者である男女四人は帝国の王と【剣聖】の命により死地へと送り込まれた。

だが彼らはまだ幸せかもしれない洗脳されてる間は痛みを感じない、つまり地獄の様な苦しみを味あわずに済むのだから。


「この身がどうなろうとも絶対に王を守って見せる……彼に受けた恩を考えれば自分の命など……いや、王も守り自分も生き延びる…【剣聖】という名に恥じない様に」


全てを投げ打って彼は王を護るだろう、十六夜が王に迫った時彼はどの様な対応を取るか想像に難くない。





★★★


地獄の様な弾幕の雨を抜け壁から帝国に入ると、そこには信じられない程に近代化が進んだ街並みがあった。まぁこの世界にしてはという範囲内だが、それでも充分発展していると言える。

後もう一つ不思議な事がある、何故ここの住人は外の爆音を気にしていないのだろうか。


「全く……これはいわゆる内政チートってやつか?これを一人の勇者でやっているとは思えない、ここには結構な数の勇者がいそうだな」


アルカディアでは三人しか殺せなかった、ここ帝国では何人殺せるだろうか……


「桜花がいれば最高なんだがな早く殺してやりたいよ……ふぅ、落ち着け。焦っても変わらないそう教わっただろ霞 十六夜。何故か追っ手もこないし…さて勇者の情報でも集めるか」


俺は確実に変わっていたアルカディアにいる時よりも暴発しそうな感情を抑える事が出来るようになってきた。


「まぁぶつくさ言ってても始まらない……っと、おいおい早速会えるとはな嬉しいよクズ共」


まさかこんなに早く会えるとは思っていなかった、それも向こうから来てくれるなんて随分優しい事だ。

だが何かおかしい何だろうこの感覚は……はぁ洗脳か、奴らは仲間内で洗脳なんかしてるのか。


「カルマ様の命令により、貴様を排除する」


「和奏随分と間抜けだな、あれだけ周りの人間を見下していたと言うのにその周りの人間に洗脳されてるんだから、そのカルマとか言う奴が主人か?」


「・・・・・」


「だんまりか、まぁいいそれに山岳 聖夜 西条かよく分からん面子だが大方和奏の口車に乗せられたんだろ?」


和奏は人を騙すのが上手かった、まるで詐欺師の様な巧みな話術で自分の世界に引き込む。

真面目な山岳と西条が丸め込まれるのも頷ける、聖夜はどこか抜けてそうだったし納得だ。


「さてさて、こんな街中で襲ってくるなんてお前らの主人は頭が悪いな」


だがやっぱりおかしい、何故住人達は悲鳴の一つも上げずに普通に生活してるんだ。


「まぁいいそれもお前らの主人に聞けばわかる事だ、さて殺し合おうかクズ共」


そう言った瞬間西条と山岳が襲いかかって来た、西条は二本の剣を両手に持ち華麗な動きで翻弄してくる恐らく位の低い聖剣だろう、山岳は魔法で風の槍を作りこちらに飛ばして来た。


「っと……住人がいようと御構い無しか?洗脳されててもやっぱり元の異常性は変わらないな、【魔眼】また頼むよ……ん?体が妙に重いな」


西条と山岳の攻撃を避けている内に聖夜と和奏が俺に魔法をかけたみたいだ、効力的に恐らくデバフ特化の能力だろうが地味に鬱陶しいな。


「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」


俺の動きが鈍くなったその瞬間、四人は各々が持つ恐らく最大火力であろう魔法とスキルを繰り出して来た。


でも甘い、そんなもので死ぬなら俺はとっくに万は死んでいる。


「打ち消せ【破砕の魔眼】」


【破砕の魔眼】ユニークスキルである【魔眼】から派生した特別な魔眼、その効力はその眼で捉えた魔法やスキルを打ち消す。

物理的な攻撃力は無いものの、その効力は凄まじい。


打ち消された魔法とスキルは淡い光になって消える、その光景に今は自我が無いはずの和奏達も少し動揺を見せた様な気がした。


「初めて使ったけど上手くいったな、ありがとう【魔眼】助かったよ」


『いえいえ〜私も新しい力を使えて良かったですし、また呼んで下さ〜い』


何回か話して分かったがやはり【魔眼】のキャラは少し軽すぎる、女子高生と話している様な感じに陥ってしまう。


「さて、時間は有限だ死んでもらおうか?今回はどんな殺し方がいいかなぁ、ふふっあはははは、よし決めた」


十六夜は嗤う。復讐対象への殺し方を考える時の彼は本当に悪魔の様な形相だ。


「お前らは火炙りにしてみよう、人間ってのは良く燃えるそうだからなぁ。ってルーシーとアーシャは何してるんだ?………まさか人間に足止めされてるのか?」


ルーシーとアーシャが人間に足止め?流石にあり得ないだろう、冗談抜きであり得ない。

だが魔力で場所を調べる限りルーシーとアーシャの前に一人の人間がいるのは確かだ。


「あの二人が負けるとは思えないが、念の為行った方が良さそうだ。悪いが今回お前達に時間は取れない、速攻で終わらせるぞ」


復讐に時間を割けないのは残念だが背に腹は変えられない、だがこれで一気に四人を消せる幸先の良いスタートを切れるんだからプラマイゼロだな。

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