大天使の本気
「今のでよく分かった、どうやら舐めすぎていた様だ、次からは本気でいこう。
この辺り一帯焦土と化すだろうが、人間なんぞいくらでもいる構わないだろう、いいな?ロキ」
「ふぉっふぉっ、アルカディアは少し気に入っていたのですが仕方ありませんね、存分にどうぞ」
会話からしてこの辺が消え去るのは決定事項みたいだ、アルカディアは俺自身で滅ぼしたかったが仕方ない。
それに力をコントロールできない今はどうすることもできないしな。
「後悔しろ、愚かな人間」
ラファエルと呼ばれる少年の体から純白の光が迸り直ぐに収束していき体に纏わり付いた。
その光からは神々しさと清らかさを感じる、天使と言うのは伊達じゃない。
ラファエルはその光を右手に集中させ形を整え一本の槍を創り出した。
「消えろ」
その言葉と同時にラファエルは右手に持つ槍を振り下ろした。
その瞬間凄まじい閃光が目を焼き、ズガァーンと言う轟音を響かせ砂塵を巻き上げる。
「ふぉっふぉっ、随分と見晴らしが良くなりましたな」
咄嗟に横に避けた俺は目を疑った、先程俺が立っていた場所からアルカディア方面に向けて巨大な溝ができていたのだ。
いくらなんでもやり過ぎである、これは俺の予想だがあの光をモロに食らえば根源も消える。
「避けたのかあれを、馬鹿な事をするな、あれなら痛みを感じず死ねるというのに」
嫌味な奴だ、ルーシーの兄弟とは思えないな。
でもさっきと比べ物にならないくらい強くなってるのは間違いない、恐らくあの光のせいだろう。
さて、あの槍を見て俺の体はどう対応するんだろうか、避けようと思ってからじゃ絶対に間に合わない、その辺はあいつを信じるしかないわけだ。
おっ?どうやら俺も動き出すみたいだ、相手は獲物を持ってるけど俺はなんも出さないのか?
「………【創造】 聖剣カラドボルグ 【創造 】聖剣クラウ・ソラス」
出したと思えばまさかの聖剣二刀流である。
今の俺って鬼なんだよな?鬼が聖剣なんか創ってしまっていいのだろうか、まず聖剣なんてポイポイ創れてしまっていいのだろうか?
インフレが凄まじいな。
「そんなおもちゃ何本出した所で意味はない、この神光槍ブリューナクの前では全て紙切れ同然だ」
聞いたことのある名前だ、確かどっかの神が持ってた槍だっけ?まさかこんな所で見れるとは、それにしても神の槍、ね。
本当におっかないなぁ、でも武器の強さだけで勝負が決まるわけじゃないでしょ。
とはいえ、槍と剣では相手にリーチがある分不利だ、多分突き刺されても薙ぎ払われてもゲームオーバーな無理ゲーだが、あいつならなんとかしてくれるだろう。
「今度こそ存在ごと消し去ってやろう」
言うやいなやただの一足飛びで俺の目の前に現れた。
この状態だからこそ反応できるが、そうでなければただの一足飛びがワープしたかの様に見えると思う。
俺の体は即座に二本の聖剣をクロスさせ槍を防ぐが、二本の聖剣はミシミシと音を立てて罅がはいり始めていた。
ラファエルの力も意味不明だがこの槍も馬鹿げている。
神に創られた体に、神が使っていた槍……そりゃ強い。
「やはり言った通りだ、貴様はただの鬼畜、神の使徒である我々には勝てない」
傲慢だな、その傲慢さは命取りだぞ。
力を受け入れた自分自身ですら把握できていない力、そんな力をお前如きに止められると思うのか?
「………【創造】天叢雲剣 【創造】天羽々斬」
二本の武器を創り出した瞬間ガードに使っていた聖剣は粉々に砕け散った。
新しく創造した二本の武器は日本に伝わる伝説の刀と剣だ。
確かスサノオが持ってて八岐大蛇を斬った武器だっけ?さっきまで出してた聖剣より強いオーラを感じる。
「ふん、小賢しい、何度やろうと同じだぞ」
俺は槍を弾き返し、そのまま斬りかかった。
「なっ!?弾かれた!?くっ…」
ラファエルは咄嗟に槍を回して俺の攻撃を防ぐ。
槍を持ち直す瞬間を狙い連続で斬りまくる、そこである事に気づく、全く刃こぼれしていないのだ。
さっきの聖剣ならボロボロになってておかしくないのに、天羽々斬と天叢雲剣は欠けるどころか、ブリューナクを圧倒していた。
と、武器を観察していると急に視界が暗転し、目を開けるとまたあの暗闇の空間に揺蕩っていた。
『あー、あー、テステス、聞こえるか?』
随分とふざけた奴だな、今の状態分かってるのか?
『なんだよ、言い忘れてた事でもあったのか?今は戦闘に集中しろよ、それと急にここへ飛ばすな』
お話しして負けました、死にました、じゃ笑い話にもならない。
『くくく、まぁそう言うなって、それと仮にあの槍で刺されても今のお前は死なない」
まじか、正直刺されるだけでアウトって思ってたんだが。
『へぇ?それで、結局なに話しにきたんだよ』
姿形は俺のまんまだが、中身は相当違うらしい。
『お前気づいてんだろ?今持ってる刀と剣が常軌を逸してるってさ』
確かにこいつの言う通りこの二本は尋常じゃない程強い、神の槍と同等かそれ以上に渡り合っているのその証拠だろう。
『鬼と聖剣ってのは相性が悪くてなそこまで力を引き出せないんだ、ところがその二本は別だスサノオが持ってた時と同じくらいの力を引き出せる』
鬼と聖剣が相性悪いってのは俺でも分かってた、普通に考えてあり得ないし。
だけどこの二本は別ってどういう事だ?
『なんでだ?何故そんな事が可能なんだ?』
『そうだなぁ、日本の神話と鬼ってのは固く結びついてるから、とそれくらいしか俺からは言えない、まぁとりあえずはその二本があればお前は負けないってこった』
随分とチートじみてるな、まぁこれで負ける心配は無くなったわけだ。
正直詳しい事はどうでもいい、守りたいものが守れるならそれでいい。
『言いにきたのはそれだけか?わざわざ武器の事だけを言いに来るほどお前は優しくないだろ?』
『……くくくっはははっ、そうだな、確かにその通りだ、用件はもう一つあのロキって神は殺せない』
聞きたくない情報だな、神を殺せないとなるとかなり計画が狂って来る。
『ならどうするんだ?この状態でも神を殺せないのか?』
『あぁ、無理だ。神を殺せるのは神から直接力を使って創られた存在か、神だけだからな、それと神は少し特殊でな、根源以外に神格ってのがあってそれを破壊しないと滅ぼせない』
『なるほど、その神格とやらを破壊できるのがさっき言ってた存在だけか』
『そういうこった、まぁ神の力を簒奪する方法もあるが今は時間がない、ありゃ何百年もかかるからな。
とりあえずロキは送還させる地球にな、そこで地球にいる神に神格を破壊してもらう』
どんどん話がでかくなってきたな、頭がパンクしそうだ。
元人間の高校生が処理しきれる限界を超えてる。
『とりあえず大方の話はわかった、それで?どうすればいいんだ?今はラファエルと戦ってる最中だろ?』
『そろそろ約束の五分だ天使は問題ない、お前の意識が戻ればかたがつく頃だ。
神の送還方法は簡単だ、この世界とロキを繋いでいるパスを切れば奴は強制的に返される』
そういえば五分で倒せるって言ってたな、時間数えるの忘れてた。
とはいえ、神と戦ってパスを切るとか大天使倒すより無理ゲーだろ。
『そりゃ良かった。
それでさ、俺はどうやってあの爺いのパスを切ればいいんだ?難易度がおかしい気がするんだが』
『おっ?そろそろ終わるな、いい感じに苦しんでるぞ、くくくっいい気味だ。
っと、そんな難しい事じゃないぞ?この状態じゃなくても可能だパスを切るだけならな』
『早く教えて、さっさと意識を戻してくれ』
『くくくっ、わかったよ。
お前のユニークスキルの【王権】と【魔眼】を最大力で使うだけだ簡単だろ?あっ言い忘れてたけどどっちかの目が消し飛ぶからな』
そりゃご親切にどうも、今更目なんかどうでもいい。
『分かった、もう終わりか?ならさっさと戻せ』
『くくくっ、了解だ。神のことは頼んだぞ』
話が終わるとすぐに暗闇の空間は消え、意識が戻った。
現状を確認すると、約束どおりにラファエルは俺の目の前でズタボロになって地に伏していた、戦闘の経緯は見れなかったので分からないが相当酷くあしらわれたみたいだ。
腕と脚が根本から無いし…
「ぜぇぜぇぜぇ……がはっ…あり、え、ない」
「ふぉっふぉっ、いやお見事です、あの時牢屋にぶち込んだゴミとは思えないですな」
酷い言われようだな、さっさと送還してやりたい。
ん?力が抜けていく感じがする……鬼の力が抜けてるのか。
どうやら体の支配も解けたみたいだ、あいつも分かってるな。
「あーあー、よし喋れるな。
ルーシーの兄弟ならルーシーにトドメをささせてあげたかったが、仕方がない」
「やっ、やめ、ろ、人間!ごんなごとをして、ただでずむと思うなよぉぉぉぉ!絶対にごろしてやる!」
負け犬の遠吠え程うるさいものはない。
「そうか、じゃあな」
そうして、俺は両手に残っていた天叢雲剣と天羽々斬をラファエルの左胸に突き立てた。
「ガァァァァァァァァァァァ」
耳朶を震わせる断末魔をあげラファエルは光の粒子になり天に昇って行った。
誤字脱字は見つけ次第修正します。
一応確認はしてますが、あったら本当すいませんm(__)m




