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修行の代償

 「なにこれ」


 何か聞こえた気がした。いや、それで良いんだよ。


「ねえ、これなに?」


 さあね。そんな事より僕さ、魔法が使えるようになったんだ。


「ねとねと……してる」


 そらそうだよね。だって


「!?」


 だからさ。なにビックリしてるの? 気にしないで良いよ。


「いやだ。嫌だよ。なんで」


 せつねちゃんの媒体のカード、使わせてもらうね。

 その代わりこっちを使ってよ、君には大きすぎる対価だったね。


「痛い痛い痛いいあああああ」


 なあんてね。痛い? 知らないなあ、それって僕が受けた痛みと変わらないよ? 同じ痛みを分かち合えるんだよ?


「要らない……こんなのいらない」


 僕は君が嫌いなんだ。せつねちゃん。


 *

 窓を割って入って来たくれんちゃんの顔は青ざめていた。


「せつねを返して」

「無理。それに君は怖くて漏らしたんだろ?」

「もう怖くもない。お前の所になんて置いておきたくなかった。だってお前は」


『悪魔なんだもの』


 戯言を言うくれんちゃんに僕は驚く。

 僕は人間だ。それは絶対変わり得ない。


「なんであの時、僕に普通に接してくれたのさ」

「だってせつねの初恋の相手だから」

「理由にならない」

「“貴方であった時”だったから」


 僕は僕だ。くれんちゃんにはわからない。

 椅子に座る僕の膝の上には眠るせつねちゃんがいる。


「ここは僕のプライベートだ」

「違う」

「ウザイんだよお前! 何が言いたい? 僕は何も悪くない。全部こいつが悪いんだ!」


 くれんちゃんはあっけなく僕の前で散った。腸が破裂し、目が凹む。

 たのっしい! なにこれ、何回でも殺し、生き返らせるこの快感。


「ごろじ……てやる」


 ん? いいや。精神崩壊したら牛にでもやるか。


「おまえ 」



 *


「……って言う話だ」


 重い、重いよ。


「お前の別のストーリーだ」

「知らないよ。僕にどうしろと」

「このストーリーからせつねが消えたのだ。吾輩はお前を頼るほかならない」


 いや無理だよ。まず僕にはダークファンタジー臭のする物語に介入する余地がないから。


「お前、せつねがいなければ題名の『金欠魔法少女せつねちゃん』ではなくなるだろうが!」

「いや知らないし、くれんちゃんがいるから別にいいかなって」

「吾輩が困る。ネタが減るから」


 本音か。それがお前の本音なのかあああ。


「だが今のお前には腹黒さが足りない。金はあってもな」


 なんだって!?


「よくアニメや漫画で見る『修行』というステータスアップ。世間的に俺は強くなったをやるぞ」

「あの強さを手に入れても何も楽しくない」

「そこは新設定で相反する力を作れば問題ない」


 うわ、考えが汚い。


「バトル嫌いなんだけど」

「馬鹿か。最初の基本は精神攻撃から始まるんだ」


 この日僕はジエルに【修行】として『死が俺を待っている☆』の一期を無料動画サイトで見させられる事になった。

よし、戦争だ! シリアスへと進むか……から枝分かれした二つのストーリーの続き。

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