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「生の小ですね、かしこまりましたぁ」
別段、狙いを定めたわけもなく。
たまたま傍を通りしに捉えて呼び留めたるは、小気味良し若き好男子の店員なり。
省人効率化を謳いたる昨今の世。やれセルフオーダーだの、タッチパネルがどうだの、風情も随分変わりたれども、此処は古き良きかな対面方式。
無季の注文に心地良き山彦の愛想を残すと、如才なく巧みに空のグラスを拾い上げたり。
快活のステップにて喧騒の中へ戻っていく店員であった。
「無季ちゃんのタイプだね」
「うむ、ストライクゾーン、だな」
未練なり眼差し、無季が心寄りにその背を追うのも致し方なし。
内省さん、直情の開陳を上目遣いに誘いたれば、ひょいと飛び乗りたるは無節操の正直。
高陵の花と弁えたれども、対岸の遠巻きにて満たさんとするはリアリティ無き淡い欲念なりや。
「無季ちゃんより年下っぽいね」
憚りに遠慮知らずは、内省さんの特権。
一瞥であれ仰視であれ、片手の指ほど開きは明々白々たるリアル。敢えて形容せし本意に婉曲の猜疑が募りたるは片意地が過ぎようか。
「……まあ、あれぐらいなら許容範囲つーか、寧ろありっつーか」
穿ちの吟味を放り投げし、一黙後のフィラー。
無季の面持ち、臆面なくも嗜好に傾倒したれば、緩みに伸びたる口元に慎みすら見えず。
所詮は物見遊山にして、言い草も何様と図太きことなり。
「だね」
淡白にて流さん共感のフィラー。
自足の悦に浸らん、無季のぬるき柔和へ合わせしかな。内省さんは漫然のテーブルにて前のめりたるや、歯も見せぬ微笑に含みを湿らせん。
「…………いや。やっぱさ、ありじゃないんだよなぁ」
透け透けのアンビバレンス紛い。
内省さんの底意を察して舵を切らんは曖昧なる推量。我へと返りてひと吹きの自嘲を鼻に鳴らさば、無季は眼前のむず痒さをさり気に逸らさんと、面映ゆさに苦笑を浮かべたり。
「なんつーか、ほら、相応てのも大事じゃね、実際問題さ」
迂遠なるシビアを垣間見せ、言い伏せにて身の程へと襟を立てしは、無季なりの分別か。
唐突の改まりを響かせしコツコツ。テーブルの天板を打つ右手の中指が面目非ずを刻む。
「そうなの?」
「そうだよ」
阿吽なる一問一答のリズム。
鼻先に迫りし和顔愛語の繕いと、退きに能わず顰めっ面の負荷にて、此の小さきテーブルを近事のなぞりへ傾かせん。
「この前の街コンだってそうじゃんか、完全にアウェイだったし」
無季は口先尖らせるや、確とならん所以を迫りし同調の圧。不埒の拍子をとらんと右手の指先、勤しみて耳障りを一層奏でん。
「まあ、別に期待して行ったわけじゃないし、いいんだけどさ!」
「つか、もう二度と行かねぇし!」
心身一如かな、能動と無節操のセッション。
具現化されし情緒に、糊塗なりし一言一句の映えたる負け惜しみ。天板へとビートを刻みし、自己完結たらん粗末な管巻きラップ。
先折諸々ごちゃまぜにて、方向性すら迷子のフラストレーションが、締めにて執心らしき余情を引く。
「そっかー」
「そうだよ……」
内省さん、つれなしの迎合を影薄きに伸ばさん。
端にして淡なり。奇しき噛み合いにて、無季の右手へと被らば、もち肌の如くと吸い付きて絡め取るは鬱悶の律動。
斯くして不埒も一時の怠惰に戻りたれば、テーブルへと訪れしは仮初の平坦かな。
漫然たらんを収束せし片意地に遺漏を滲ませつつも、差し当たり座を鎮めし甘受、まことに結構。




