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あざときに名を出したるは省察の便宜上なれども、此処らで彼女なるを軽くひと明かし。
彼女の名は、右城無季 (うじょう・なき)。
予め申し置くも、決して(うしろ・むき)に非ず。愛称は無季 (なき)ちゃん、其のままである。
さりとて数年来、ちゃん付けおろか下の名で呼ばれしことも皆無であるが、以降は敢えて(無季)と綴らせて頂こう。
地元企業の事務員にして、其の立ち位置は勤続年数からの必然。
中堅の更に中間、中の中の中。積みたる歳月に相応しからん仕事振り、可もなくば不可もなく。
収まり良き杭たらんを心掛けし凡の主。
加減良きに控えん主張と協調性、程々なる気配りにて、妬まれず、嫉まれず、疎まれず。
無季の外面たる処世術なり。
「好きでやってんじゃねぇよ」
さてさて、外面も序の流れとありなん。
容姿も軽くと触れおくば、端麗には及ばずもパッチリ目元にすっきりフェイス。そこそこ整いたりし顔立ちと自惚れようか。
ありふれたる平均身長にして、悪目立ちの無き標準体型。やはり可もなくば不可も非ずと言いたれど、昨今は気掛かりあらんや、苦心のご様子。
斯くして在り様へと固執せんが気質となれば、況して身嗜みに抜かりある筈も無し。
「あざとさを感じさせない清楚系を意識した、さりげなツヤ肌に自然な立体感を演出したメリハリのあるナチュラルメイクを云々……ミディアムヘアをくるりんぱでローポニーと、落ち着いた大人の女性を表現しつつも可愛らしさを残した云々……」
いやはや、本人曰くの拘りたるや。此のまま衣紋の隅々までと語り尽くさん勢いなれど、其れは割愛させて頂こう。
「まだ20代でも押し通せるはず!」
時折とスマホの自撮りに語り掛けんは、自負もどき鼓舞もどき。
無季が外面にて誇示したる矜持とは裏腹に、内に秘めしは果たして如何なるものなりや。
ともあれ揺蕩うアラサー、まだまだ序の口なれば横道もひとまず此処まで。




