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「余裕なんて、ねぇし……」
捨鉢の拍子、いっそケセラセラでも謡いたるや、荒城の月に沁みたるも良しのブルース。
猶予非ずの拗ね腐れ、舌の根湿やかなれども語尾へと続かぬ面映ゆし。
「ホント、やってらんねって、感じだけどさっ!」
四方より響かん快活なる青き笑語に、不覚と醸すは羨望と妬心。
理非を拗らせし故にて耳煩い、増さんばかりの厭世もどき。吐き捨てたる心地も負荷へとならんや、頬杖の支点が今にも横滑らん。
「…………でも」
「でも?」
一黙納めての刹那、放擲紛いに逆接したるは自問自答。
揺らぐ省察に主観の境界を見たり。弾かれし気位も今昔の超越に至らず、歪みたる不協和は認知の相対性。
虚勢も残滓を纏いて自我の地平面に引き伸ばされたり、因果は一元の収束へとなりなん。
さても何のことぞとなりしなら、ご放念にて結構。
「……そう、駄目なんだよね、動かないとさ」
萎え入りる淵にて藁をも掴まん図らずの合意。これは不撓不屈へと導きたる助け舟となりしか、将又この場を濁さんばかりの泥舟か。
「婚パ、もう一度参加してみる?」
仮令、暗雲低迷に淀みて花散り茎も萎えとて、捲土重来の根が残らば七転八起に諦念の冬は訪れず。
泡沫なる燻ぶりに申し訳なき程の熱が帯びしこと、気の所為と処すには惜しきかな。
「もう一度……、もう一度ねぇ……」
反芻なぞりて撞着に軋む頬杖から気を鼓さんや、もっさり。
猫の背なるを逆折りて、沿わぬ背もたれに身を投げ掛けたり。不遜の顎がふいと上がりし、黄昏色の照明が空虚を掠めん。
「まあ、それもありなんだけどぉ、分かってんだけどぉ」
煎じて勇往邁進もどき。躊躇と焦慮のブレンドも程良きに、馴染みの間投詞より抽出されたるフレーバー、無為無策の舌を転がしたり。
「とりあえず……」
「とりあえず?」
詰め下し難きを留めに置かんや、常套句。
隔たりのテーブルを跨ぎて、何時しか鼻先へと迫らんは仮象の反問。いよいよ結び近しを悟らば、一間も惜しみて食い下がる。
「……………………」
反復を重ねし自責のコンシャス、たまゆらな瞑目にて黙したるや。間をおきて浮かべし含笑に、紛いなりも雲外蒼天の悟りを見たり。
「明日から!明日からちゃんと考えていく!」
方々省みたり逡巡の回し車、断へと至らずは紋切型の常。
今宵も倣いて此処までと、呆気なぞりて暖簾を下ろしたるや、己が明日へと切りし煩悶の手形。債の落し処に揺るぎ非ず、不渡りとても覚悟の上。
「無季ちゃん、いつもそう言ってるね」
所詮、今宵は憂さ晴らさんや、泡沫の一席。
此の折如きに何を当てにすべきや否やと、趣意立ち返りて空虚を満たさんグラス掲げし。
寂寥の座に名残りて寄り添いたる、憫笑に心許なきを浮かべん鏡像の鼻っ柱。言の葉が棘、小憎らしくも愚直なれば疎みに勝らん愛おしき。
此れ優しく突きてほくそ笑みたり。
「そういうわけで、また明日」




