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心ともなく手にしたらんは習癖の成せし業。
常の習いにて承知なり。事も無くば音沙汰、文沙汰すらも届かぬ、寂寞たる時報の壁紙。
座も狭きて障りこそあれ、傍に控えし甲斐もあらざらん此のスマホ。惰性の右手が手練れ、さても何処へなぞりしや。
「鼓舞しちゃう?」
やはり曲者かな、内省さんの先手。さがなしに微笑みて虚を衝きたれば、無季の茫然へと一目の情け。
何時しか遅鈍の意より指先の権を掠め取りたるや、躊躇待たずと液晶なぞりてタップしたるは虚栄の扉。
セルフィー収めし秘蔵の画廊なり。
「いやいや、鼓舞じゃねえし、自負だし、自負!」
皮肉とも響きたるポジティビティ。いっそ逃避と謗れしものなら如何ほども楽となりや。
己が鼻っ柱を訝しげたれども、秘めし自惚れには及ぶべくも非ず。
懐疑なる自賛と明瞭な実相の境界面、乳化を試みとても矜持が虚しく飛散するは明々白々、まさに混ぜるな危険。
「これなんかいいかも?」
無季の立て板なる虚勢を置きざりしや、スクロール。
やぶさかの揺らぎへと逸る葛藤、内省さんの知る処にあれば、厭わずの指先に自重がある筈も無し。
斯くして徘徊も早々と辿り着きたり、お気に召しの印を飾りし己が肖像。
「あー、これか」
レンズ掲げも項垂れるに傾斜45度、上目遣いの角度良し。仄明かり最適の光彩にて差し傾きの光源も絶好なり。
口角尖りに控えるも、目元意識に浮かぶ謙虚の微笑まことに宜しく。さり気と頬をなぞりし手捌き、遠近対比の小道具にて絶の妙。
盛りに盛りし会心の一枚。技法セオリーなれども加工の誘惑退けたるは、無季の慎ましやかな意地に他あるまい。
「どう?」
「これなら……まだ押し通せる、はず」
軽々の推量さておき、二極も相向かいて意気投合したり。軽佻浮薄にて息を吹き返したるお調子者。
臆しに据えた憂いを御座なりに、慢心が滴らん舌先を転がしたるや、安直の陶酔に浮かぶブルーライト、無季の瞳孔を灯す。
「ぶっちゃけさ、アプリならいけそうな気も……」
アルバムに奉りし心驕り、まさに字の如く自画自賛の逸品なり。
一場春夢を自悦の故と割り切れど、此のまま秘匿と埋もれたるも惜しきかな、手前味噌。
場当たりの気息に乗り出さんや。手玉に取られし右手の権、有頂天にて奪還せん。
「やるの?マッチングアプリ」
「いや、やんないけど……」
聞き及ぶは縁の場、昨今と馴染みて然り。
魅せに寄せし辺幅修飾。お披露目するに限りては最適たらんと言いたりしも、気概なるは更々非ず、無季の言うは易し。
内省さんの真率なる詰問に気圧されしかな、返す末尾も窄みて打ち消さん。




