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「でもさぁ、妥協してまでって……正直どうなんだろうなぁ」
急き心に競り合いたり、慎み紛いて狐疑逡巡かな。
無季も散々と世の常知りたれば、耳も存分と肥やしたる御年頃。喩え心弾み非ずも敢えて矜持を折らば、福と育む華道とて有らんは承知なれども、心根それを許したらず。
やはり『でも』である。
「割り切れないよね」
暗に添いたれば含意を抉りて然り、内省さんの慰撫詞。
まこと肺腑に沁みたり御尤も。無季の隠匿せし情を手枷としたるや、遺憾とて拭わせず。
二律背反の坩堝へ落としたらん。
「せめてさあ、なんかこう……魅かれるもんがないと、……じゃね?」
斯くの有り様踏まえとて、拘泥たらんは図太きことかな。
無季は事苦しの覚えを隠さずも語調を濁したれど、自尊の天秤たるはお手盛りにて目減りをさせず。
末尾に問わんや、隔靴掻痒へと雑ざりし失笑、ちいさく鼻を鳴らす。
「ま、そもそも期待はしてなかったし、どうせこんなもんだろって思ってたしぃ」
開き直りて漂わん言辞、事象ならぬ自性へと流したり。
無季の覚え及ばぬ儘も気遣いたる右手の人差し指。物憂しのリズムに乗らば天板の上にて手練れのタップを刻む。
「自信、無くなっちゃった?」
己が欺瞞の要を晒さん、滑らかに伏したる自責の化身。
やさぐれを紡ぎし婉曲を飛び越えしや、センシティブへと爪を立てるは獲物を仕留めん獣と似たり。
「……べつにぃ」
阿吽の枝葉末節、此処へと至りて透けに透けしかな。
ミニマルなるぶっきら棒、応じに逸りも言下に窮さば、含みもぐうとて鳴らずの関の山。
遅ればせし宛てなき希薄の暗澹は煮汁の如く。託つの芯とて醒めに沁みたらん。
「つか、そんなもん最初から……」
「無かった?」
覚えずも痛き腹とならんや、斯くも弄られたれば如何とも極まりが悪し。
此処は我を卑下したり、内省さんの不躾なるを躱さんとすれども、先駆けにて阻みたるは準備万端の布陣。
「な……」
低き出鼻も挫かれし、無季の胡乱なる撞着の腰とて折れたらん。
淀み縺れて後も続かずや、半ば開きの儘に固まりしスロット、結び叶わず息すら漏れぬ。
「それともあった?」
さり気の対義、縋りし藁ほども甲斐が無し。
内省さんの奸智なる御為顔。差し出したり進退維谷の妙に、無季の恣意たるギアとて噛み合わず。
虚しきかな自恃の原動機、空回りにて焼け付かん。
「あーっ、もうどうでもいい!」
不興の混迷に蒸されし髪、如何ともむず痒き。いっそ搔いて乱したき衝動、匙を投げにて封じたり。
テーブルへと失墜せし慨嘆。心してのことに非ずば、釣られに雪崩れし眼の未練たるや。
刹那と縋りて捉えたらん、天板の脇にて伏せしコンフォート。多元の蔵にして魔法の鏡。
つまるところ無粋と申さば、先ほど仕舞い忘れたスマートフォンのことである。
「スマホな」




