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「……そもそもさぁ」
「そもそも?」
差し当たり羞恥も空振りたるを悟らば、安堵にほぐれんは四方を泳ぐ挙動の眼。物怖じに探りて気を取り直さんや、仕切りをも直さん。
無季のアンニュイ副詞を焚き付けし、内省さんの音頭が入る。
「なんつーか、ああいうのってさ、私には合わないつーか、違うつーか」
気随なる述懐を並べし、頬杖にて歪むニヒル。
一蓮托生の見地を煙に巻かん愚行たるや、勘案あやふやに濁せど底意の虚実は頑とも触れたらず。
「ほら、婚パとかもさぁ、……なんかイマイチだったつーか」
無季の物憂しなる惚けの告。
待ち侘びとて事も為らずを心得たり、渋々に鞭打ちて動きたれども心乗らずば昇華へ至る訳も非ずの談。
無作為の右手、のったり弛みしサラダに箸を伸ばしたり。味覚も打ち棄てたる惰性の咀嚼に倦みし言の葉が混じる。
「そこそこアプローチされてたよね?」
「ん……そうだったかなぁ?」
言下を待ち伏せんは、内省さんの聞き上手。促したるは夢幻泡影の如き一幕なり。
其れは確と然りの追憶なれども、当人たる耳は優越さらさらも沸かず。詮ずる処は実りの無き一節に過ぎずや。
無季は箸先咥えの傍ら首も傾げし、赤心不在の謙虚で二の句を濁すも止む無しのこと。
「なんか期待してたのと違う、つーか、ピンとこなかった、つーかぁ」
感興催さずば元より歯牙にも掛けずの心掛け。
語り寄られし幾多の憶ありとて、さても遡りて顔のひとつも浮かびたらんや、有象無象。虚勢の華と飾るも能わずかな。
いやはや、無季の心根有り体に記さば倨傲の羅列とならんも避け難し。
「理想が高すぎたのかな?」
ありふれなる障りを揶揄せしかな、内省さんの岡目八目。
無季もこの期に及びて白馬の王子いざ知らずの心得。選り好みは些か驕りたりも世の習い苦きと弁えあらば、己が足元知らずと背伸びたるつもり更々無し。
胸裏に痞えたる責めの句、因敗為成の叩き台と迫まりては甚だ不本意と眉を顰めん。
「いやいや、別に高望みしたつもりねぇし、普通ならいいって思ってたし」
今さら乙女に戻りて赤き糸を手繰るつもりあらず。況して玉の輿など夢のまた夢が如し。
分も相応にて求めたりし邂逅、ただただ平凡たらんつもりと念にて押したるは常套の句。
つもりつもりの羅針盤、人生羇旅も不如意極まれしかな。
「普通?」
なぞりて問わん、内省さんの反復なる調べ。
世に詞ありとて定まりを知らず。聞き馴れたりて触りも良きかな、曖昧なるクッション。
各々倣いて腑に落とさんや、暗黙の主観なり。
「……普通、つか、私的にはハードル下げたつもりだったけど」
その件なる委細、察しに容易くも語らずの情け。
省みたれば主旨顕然の場に呑まれて気負いが過ぎしや、目利きもネガティブに傾きたりし憶え。
己が采配にて身の丈を見立てたり。願わしきを堪えに折り伏したつもりなれど、世態との隔たり埋めるに適わずのリアル。
幾歳を積み上げたれば見識広がりて遠望よくよく見えしも、細事の寛容狭まりて拗れと為さん。
此れ、観念の老眼と名付けたり。




