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さてさて、徒然なるかな此の片隅。如何に漫然と耽りとて、四方の時宜は宴もたけなわと言わんばかりの様相。

方々を飛び交いたる陶然は美醜を問わずして活況に昂りたらんや。各々が座も一段と面白き頃合いであろう。

とりわけ盛況の旗頭となりし一際目を引きたる若人一団の宴。青臭きも快活なる哄笑を高鳴らせたり。

此れには孤高なる籠城の主も、ついと心に懸かりしかな。


「盛り上がってんなぁ、大学生の合コン……なのかな?」


所見の憶測たらん語彙、らしくも歳相応にて未だ死語とは至らずも、所詮は男女が集いてこそのラベル。如何様に張り替えたりとて秘めたる主旨に変わりはあるまい。


「私にもさぁ、あんな頃があったんだよなぁ」


「あったねー」


見立てるに干支一巡ほど若き彼らが放たん生気の熱きこと。

無季は自閉の壁越しにて身を妬きつつも、在りし日を重ねに噛みしめんは輝き補正のノスタルジア。

敢えて自明を裏打ちたらん、内省さんの一語が何とも心憎し。


「あの頃の自分がさ、なんだが遠く感じる、つーか」


回顧に交錯したるは綺羅星の一角たらん煌きと、軽佻浮薄も無邪気なりし我が滑稽。

ついぞ苦笑も漏れたれど、バイタリティが溢れたらん其の頃。己が身のことに思えずば感慨も陰の省み。

拗れた羨望と隠微な寂寥が否応にも懐旧の情へと入りたらん。


「いやなんつーか、今の私て……、こんな筈じゃなかった……つーか」


つーか、つーかと淀みたり、儘ならぬは常世の性。

無季は如何なる展望を描きて此処まで歩みたりか。遅きに失しは承知ながら、不明瞭なる現今への道筋に偲ばん忸怩の軌跡。


「……まずいよなぁ、このままじゃ」


幾度となるかな、改めに悟らん由々しき。

心肝より低く唸りたるは地のシリアス、殊更に身の煩い向かいとても所詮は当座の凌ぎ。

郷愁に酔わん右手の人差し指、空虚なるグラスを小さく打ち鳴らす。


「無季ちゃん、もう行かないの?」


俄かに割り込みて拍子を欠きたるは、内省さんの借問。

袖手傍観にて収まらずば此の刻ぞと爪を立てたり。無季を惰弱なる煩悶より吊り上げん。


「行かないのて……、街コンのこと?もう行かないて決めたよな」

「ないない、絶対行かない!」


にべもなく修辞を反復せし、無季の意固地。

慮外の問いに卑屈と首を振りたれど、思いあたり即ちたるは心残しにも映りて片腹痛し。


「また誘われたら?」


「だからぁ、行かねぇっつーの!」


無季は前のめりて躍起に念押したり、語尾も自ずと上がらん。

飄々を繋ぎて綻びを探らんとする内省さんを牽制せんや。矢継ぎ早に丸めし右手、まねき猫にも似たりて天板へと振り下ろしたるは、恰も不退転への鼓舞が如く。

未練の袖を断ち切らんが打ち響き、「カン!」と此の座を轟かせたり。


(あっ……)


巧まずも存外と響きたる迂闊の打音に一言唖然の体。

事も無げに澄まし切れずや、無季は俄かの注視を浴びまいと身を竦めたれど、詰まる処は杞憂なり。

軽率じわじわ染み入る右手の痛恨一打とて、斯くも雑踏なれば衆目も寄せるには至らず。

周章の一点凝視に固まりたる小人の彫像、何とも疲れしことかな。


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