第二十話:京王閣燃焼、共鳴(レゾナンス)の火蓋
「先輩、妙子さん。来てくれたんですね。……今日は私の『深淵』、もっと深く見せてあげます」
葵のスーツ『萌葱』は、立川の長い直線に特化した空力カウルを増設していました。対する健吾と妙子は、検車場から一言も交わさず、しかし互いのマブイの波長を微調整し続けます。
1. 異形の二連陣:『風炎ライン』
「構えろ!」
号砲とともに、京王閣の空気が震えました。
「……行くわよ、速水。私に合わせなさい!」
妙子が先行。その後ろ、タイヤが触れ合うほどの超至近距離に健吾がピタリとつけます。
通常のラインなら、後ろの選手は風を避けるだけ。しかし、この二人は違いました。
妙子の背中の排熱フィンが逆噴射し、健吾のスーツへと「風のトンネル」を送り込む。健吾はその気流に自分のコアマブイ2500の熱を乗せ、妙子の推進力として「送り返す」。
「マブイ・レゾナンス(魂の共鳴)!!」
二台の自転車が、巨大な真紅の火の玉となってバックストレッチを駆け抜けます。
2. 葵の「深淵」が口を開く
「……すごい。熱い熱い、炎の蛇みたい。……でも」
集団の最後方で、葵が静かに目を閉じました。
コアマブイ7000が、京王閣の広大なバンク全体に広がるマブイの波動をキャッチします。
「熱は、伝わることで薄まるんです。……おやすみなさい」
葵がペダルを一漕ぎした瞬間、バンクの空気が一変しました。
彼女の放つ**『深度同期』**が、健吾と妙子の共鳴リズムを狂わせにきたのです。健吾の熱が妙子に届かず、空中で霧散し始める。
「クソッ、マブイが吸い込まれる……! 葵のやつ、バンク全体のエネルギーを自分のものにしていやがるのか!」
3. 最終コーナー、地獄の直線へ
「速水、怯まないで! 私が風を切り裂く、あなたはそのまま……突き抜けなさい!」
妙子が絶叫し、自身の外付12000を全損覚悟でブーストさせました。
風の壁を無理やりこじ開け、健吾を葵の「深淵」から引きずり出すための捨て身の先行。
「妙子……! おおぉぉぉぉっ!!」
最終コーナーを回り、現れた立川の長い直線。
内側を突き抜ける葵、中央で火花を散らす健吾と妙子の連合体。
さらに外側からは、**「ウチも混ぜろやぁぁ!」**と叫ぶ葉月凛が、暴走寸前の外付タンクから黒煙を上げて突っ込んできます。
4. 決着の瞬間:『昇龍火炎』の完成
「葵! 深度だか何だか知らねぇが、この熱だけは飲み込ませねぇ!」
健吾は、妙子が命がけで作った「風の道」で、自身のコアマブイを**臨界突破**させました。
妙子の風を燃料にし、健吾の熱が「龍」の形となって直線に昇る。
「行けえええええええっ!!」
葵の深淵を焼き払い、妙子の風を追い越し、凛の爆煙を突き抜ける。
京王閣の直線の果て。四台が横一線、目視不可能な速度でゴール板を駆け抜けました。




