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もう愛を夢にみない  作者: 藁の家
自由な人
71/124

異能者 1

《ここだよーここだよー

 分かるかな?ここだよー》

(聞こえました。

 そちらは聞こえますか?)


 目印のように呼び続ける声を拾い、リーシアは近くの木にもたれかかって腰を下ろした。

 地面に座るのは行儀が良くないものの、幼い頃は庭で遊んで普通に座っていた。


《地面に、座るなんて……行儀作法の出来ていない子か》


 ジオを見付けてすぐイシュテらしき監視者の声を拾い、リーシアは丁度良いとジオに説明した。


《この声は聞こえましたか?》

《このって?》

《秘密裏に私に護衛が付いているようです。

 色々ありまして。

 恐らく近くで私を見ています》

《こっちは巡回の警備員が『いい加減に帰れ』っ見てくるくらいだな。

 そっちが問題なければ大丈夫だと思う。

 異能を感知でも出来ない限りは》

《そんなことが出来るのです?》


 リーシアは感情が表情に現れるのを避けるため、眠るように俯いた。


《こんな所で眠るだなんて、警戒心がないのか。

 それとも無くなっていた異能が戻ったか。

 どちらにせよ後でルクレイス様にご報告か》


 声が先程より大きく聞こえた気がして、リーシアは答えが返る前に問いを重ねた。


《聞こえましたか?》

《ああ、居るって分かってれば拾えるかな。

 後嫌悪が強くなったかな。

 強い感情は声が大きいから。

 この会話には気付いて無さそうだ》

《今はまだ彼女に嫌われていますしね》

《……あんた、冷静だなぁ。

 普通心を読まれるとか、聞こえてくるとかなると慌てるもんだが。

 自分が嫌われてるとか、な》

《――元々他人の私生活が覗き視える能力ですので。

 後ろめたさなどには慣れています》

《……》


 言葉でなく感情が伝わってきて、リーシアはジオはやはり良い人なのだろうと感じた。

 言葉でないため言い表すのは難しいが、同情や共感――それに加えて、リーシアには理由が理解できなかったが、尊敬称賛に似た感情を感じた。


《この私の気持ちも伝わっています?》

《お互いに。

 強いお嬢様だと思って》

《そうです……?》

《まぁ、今は時間制限を気にするか。

 連れのお嬢様は撒いて来たんだな?》

《えぇと……心が読めるようになったと気付かれたくなかったので、一時間の約束で私は散歩している事になっています。

 今は寝たふりをしております》

《お嬢さんの具合が悪そうに見えたら監視も不審に思うだろうな。

 適度に動いて誤魔化しながらだ》

(分かりました》


 リーシアは適度に目を開けて周囲を見回したり、体を伸ばしたりしようと思った。

 それから逸れた話を戻した。


《異能を感知する何かが有るのですか?》

《異能を感知する異能者が居てな。

 そいつが出先で見付けて国に報告していた。

 だから外に見えない異能者も結構見付かってたよ。

 見つかると兵に囲まれて強制的にお召し上げ。

 一応俺らの出身国はそれで異能者を見付けてるって話だ》

《事実は違うのですか?》

《分からない。

 俺達の周りには魔石なんて無かった。

 そんな道具があるらしい噂は聞いてたが噂だと思ってたし、伯爵様に見せて貰って驚いたくらいだ。

 ただ上層部が知らなかったとは思えない。

 能力で探してるなら何人もいないはずだが、異能関知の魔石を持ってるなら怖いな》

《……ジオ様の出身は》


 リーシアの頭に幾つかの国が浮かんだ。

 魔石の存在が噂止まり。

 強引な徴兵には兵の派遣先があるはずだ。

 仮想にしろ、現実にしろ、内紛や侵略で兵を必要としている可能性がある。

 異能者を人として扱わず、兵器として、または奴隷として使う国。

 それが可能なら締め付けや情報統制の厳しい国だ。


《その中にあるよ》

《では……見付からず逃げてこられたのですね》

《能力を最大限に使ってね。

 まぁ、そんな話はいいよ。

 恥ずかしいから会ったばかりの俺の為にそんなに喜ばないで》

《すいません》


 リーシアはジオ達が使い潰されず逃げ切れた事を嬉しく思った。

 会ったばかりの他人といえ、無事を喜んでしまった。

 嬉しく思ったのが伝わってしまって、リーシアも恥ずかしくなってきて、近くに生えた花を眺めて気を紛らわせた。


《ルクレイス様――ええと、私の異能に気付いた王子様ですが、もしかするかもしれません。

 そういった能力を使える方に調べられたかもしれません。

 異能者と怪しんでも確信を持つのは難しいはずですから》

《それは怖いな。

 あんたなら分かると思うが、外に力が出ない異能はバレにくい》

《はい》

《俺達の力までバレないよう気を付けてほしい》

《達と言うのは、ゼオ様も?》


 それはリーシアが気になっていた部分だった。

 心を読まれると知りながら、どれだけの人が隣を許すだろう。

 先程ゼオの思考に触れてしまった時、打ち合わせによってジオを考えてほしいという思考で頭が占められていた。

 ゼオは少なくともジオの能力を知って側に居る。


《あいつはあんたと同じだ》

《同じ》


 リーシアの思考は一瞬停止した。


《未来を?》

《あぁ、あいつと出会ってから異能者狩りから逃げるのが楽だった。

 ……悪い》


 狩りと聞いたリーシアの恐怖に気付き、ジオは謝った。


《大丈夫です。

 でも異能者なんて、五十人くらいしか表れないと聞きますが》

《表向きだ。

 あんたに、俺、ゼオ。

 ほら、これでもう五十三人だ》

《……》

《細かい話は町に出た時にしよう。

 今大事なのは俺らをあんたが信じられるかと、俺があんたを信じられるかだ》

《私を?》


 リーシアは考えても居なかった指摘に驚いた。

 父の紹介で訪れて、自分から異能を明かしたのだから、既に信頼されているのだと思い込んでいた。


《伯爵様は信頼してるよ。

 けど父と娘は別の人間だ。

 それにあんたは力のせいもあって中身が読みにくい》

《異能者は読みにくいのですか?》

《感情を殺すのがうまい奴、力の操作がうまい奴、読まれてるって知っていて警戒してる奴、なーんも考えてない奴。

 読みにくい相手は結構いるよ》

《私は三つ目、でしょうか》

《最後以外は当てはまってると思うけど?

 ちなみにゼオは最後な》

《まあ》


 ジオの冗談めかした付け足しに、リーシアは笑みそうになった。

 盗み見ている存在を思いだし、体を動かして誤魔化した。

 

《私も、先が分からないと人を信用するのは怖いです》

《未来が見えない今は怖いだろう?》

《……それも、いえ、当然ですね》


 ジオが心を読むと気付いた時点で、リーシアは隠し事は出来ないのだと思っている。

 ジオの『中身が読みにくい』と言う言葉を、大きくは受け止めなかった。

 未来視を知られているなら今使えないのも知っていて当たり前だと納得した。


《お二人に出会うと全く知りませんでした。

 今は確かに、怖い、です》

《今日俺達と別れたら普通に視えるようになるはずだから安心してくれ。

 ゼオがいるから視えないんだ》

《それはどういう意味でしょう……?》

《多分だけど、未来が成り立たないんじゃないかって話はしてる》

《成り立たない……?》

《未来は変わるだろう?

 ゼオとあんたの能力が全く同じならって前提だけど、ゼオが力を使ってる限りはあんたの力は正しく反応しないんだと思う。

 ってゼオが》

《ゼオ様が?》

《ヴィジット領はずっと真っ暗で未来が視えにくい。

 それでゼオは不思議に思って、あんたに辿り着いたらしい》


リーシアはぞっとした。


《なら、他にも私の能力に……》

《そうやって影響しあう能力があるならバレてるかもな。

 そもそもさっき話してた魔石があるかもしれないし。

 今バレてなくてもいつかバレる可能性はある》

《怖い……》

《だからあんたは俺達と別れたら自分の未来に集中してくれれば良い》

《……どういう意味ですか?》


 リーシアは戸惑った。

 ゼオが同じ能力を持ち、影響しあって未来が視えなくなるなら別れた後も視えないはずだ。


《ゼオはあんたをもう信じてるらしいからな》

《どうして?》


 リーシアには理由も繋がりも分からない。

 ただなんとなく、ジオが笑ったような、和んだような、そんな気配が伝わってきた。


《ヴィジット領がずーっと視えなかったからだな。

 でも二十年後くらいは何となく視えるらしい。

 多分あんたがどう動こうが変わらない部分だけ視えるんだろう、ってゼオが》

《私がどう動いても変わらない部分》

《もしくはあんたが変えた後を視てる?

 視るたびに少しづつ違うらしいし。

 まぁその辺は分からないけど。

 俺達学者じゃないしね》

《二十年後でしたら、私は確実に死んでおりますので、定まりやすいかもしれません》

《……あんたなぁ》


 ジオから哀れむような感覚が伝わってきて、リーシアは嬉しく思った。

 あったばかりこ自分の死を悼んでくれるのなら、その気持ちがありがたい、と。


《まぁ、その辺りを視て、ゼオはあんたを信頼してるんだ。

 気になる、是非会ってみたい、良い子なんだろう、って》

《私は、良い子ではありません》

《それはこれからこっちで決める。

 ゼオはあんたを信じてるから、未来を視る必要を感じてない》

《???》

《ゼオは元々あんまり力を使わないんだよ。

 今日はあんたに会えるのが楽しみで嬉しくて不安もあって使いっぱなしになってるけど、俺がこの後あんたが俺達を受け入れてるって伝えればいつも通りに戻るはずだ》

《???》

《……あんた本当に理解出来てねぇな》


 ゼオから呆れと哀れみの混ざった感情が伝わってきたものの、リーシアは何もかも理解出来なかった。

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