魔界典章・我が故郷は魔性の地 4
「私の質問に先に答えろ」「あまり言いたくないことかもしれないがわけわからんままで済ませたくないからな」
カーラ、少しイラついたのか若干語気を荒げる。
「スティハよ、折角道連れになったんだ、隠し事は無しにしようよ、な」「私のことも話すから・・」
スティハ、少し沈黙していたが、やがて意を決したか、ぽつりと話始める。
「『化外の者』というのは、おいらたちの種族、『アックダ』のことなんす・・」
「なぜアックダが化外扱いされるのか・・正直おいらたちにもよく分からないんすが・・昔からそういう事になっているらしくて」
「自分らだけでやっているうちはいいんすが、いざ住んでいる村の外に出ようものなら・・他の種族の者からは露骨に嫌がられたり品物売ってもらえなかったり、下手すれば石投げられたり・・」
さっきとは打って変わって神妙な口調になっている。
「ん~ひょっとしたらアレだ、時の権力者によって不満のはけ口にされるために設けられた、とかだなそれは。ふん、人の界もここ魔界もやっていることは変わらんか・・」
カーラ、立ち上がり穿き捨てる。
「まったく、ヘドが出るほどむかつく」
「むっ?!・・何者だ? 」
先ほどの村落よりしばらく歩いた先の何やら木や草っぽい物が茂っている場に入ったあたりのことである。
(いつの間にか囲まれよった・・)
何かの良からぬ気配を察知したのか、カーラ、立ち止まる。
「どうかしたっすか? 」
「しっ。静かにしていろ・・」
スティハを後ろに庇い立て一歩前に出る。そして、周りを警戒しつつ、
「おい! 用があるのなら姿見せたらどうだ? えらく殺気立って居るから隠れていても意味ないぞ」
声を荒げ気味に誰何してみる。
すると、4、5名の(無論魔の者の)男が姿をおずおずと現してきた。手には棒だの農具らしき物だのを持っている。そして、
「お前、ただの合いの子ではないな」
いきなり失礼極まりない事を言ってきた。
「何物だ? 」
「あーっ!?それはこっちのセリフだ、ボケ! こっそり襲おうとしておいてとぼけてんじゃねえぞ! 」
いつものカーラである。
明らかにその剣幕にたじろいでいるであろう男たち。何を思ったか互いに何やら声を潜めながら相談し始めた・・。
「おい何かヤバそうだぞ、こいつ。簡単に殺れそうもなさそうだ」
「単にハッタリかましているだけかもしれねえだろ、所詮合いの子の女だ」
「ならお前行けよ。俺は下りる」
「怖じ気づいたのかよ、意気地なしが」
「人との合いの子にはまれに異常な能力を持っている奴が居るとかどうとか・・」
「あのお・・、しっかり聞こえているんですけれどー。要するに私を殺ろうってか? 」
しびれを切らしたカーラ、思い切り不快そうな表情で男共に迫る。
(こいつら、どう見てもプロの殺し屋とか賞金稼ぎといった類じゃない、ただのイキった百姓庶民だな)
何にせよ・・、
「身の程知れよ、ザコ共が! 」
手始めに手近な位置にいた男の側頭部に気を纏わらせた裏拳をぶち込む。悲鳴一つ上げる間もなく吹っ飛ぶ男。
「うっ、うひゃああああ!!」
無様な悲鳴を上げ、得物を放り出し逃げだす者数名。しかしそれでもまだ残っている者が居る。勇気があるのか、それとも単なる愚か者か。
「ちっ、臭っせえ合いの子風情がーっ! 」
「臭い? 私は毎日風呂に入っているぞ」
やはり愚かにもカーラに襲い掛かって来たのだった。当然の如く次の瞬間には惨めな肉塊と化し、地べたにひれ伏す事となる。そしてカーラ、その中のまだ息のある者に問う。
「おい、貴様ら、なぜ私が合いの子だと知っている? 」
「うっうう・・知らせが入った・・合いの子の女がおるからそいつを殺れば金をくれると・・」
全てを話す間もなく、うぐっ・・! と呻き息絶えた男の一人。
(ちっ、一体どこのバカがいらん事を吹き込んだ? もしや、これがあいつの言った試練? )
「あの・・、カーラさん・・」
近づいてたスティハが何やらおずおずと語り掛ける。
「カーラさん、本当に人との合いの子なんすか? 」
「?!」
一瞬何と答えたらよいのか詰まった。それは彼女自身「化外の者」と蔑まれている存在であるにも関わらず、人と魔の者との混血であるカーラに対する、明らかに見下しを含んでいると思われるその口調・・。
(虐げられている者は他者を見下したりはしない、なんて大嘘だ・・)
「だとしたら・・・どうだと言うのだ? 」
辛うじて絞り出した言葉。若干の怒気が含まれている。
「えー? 何と言うか、その・・何だか幻滅したなーという感じっす」
あっけらかんとしているというか、本人にしてみれば悪気は無いつもりなのだろうか。
「・・・」
何と反応すべきか測りかねているのか無言のまま歩んでいくカーラ。
スティハ、さすがに「ひょっとしたらこれはまずい事言ってしまったのでは? 」と感づいたのか、表情にあせりが見えてきた。あわててカーラの側に駆け寄った。




