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魔界典章・我が故郷は魔性の地 5

「き、気に障ったら申し訳ないっす。あ、謝るっす」

「お前、人というものは魔の者以下の存在だと思っているのか? 」

「え? いやその何と言うか・・うちらの世界ではそういうふうに言われているし・・」

「ま、大体合っているけどな」

「へっ? 」

 カーラの意外な言葉に戸惑うスティハ。思わずきょとんとしてしまう。

「人なんて碌なもんじゃない。そして魔の者も同じくらい碌な物じゃないけどな」

「・・・」

 とりあえず許してはくれたのだろうか?


 二人のやり取りを物陰より見つめていた影二つ。それはカーラを魔の界に呼び寄せた例の双子、フロトサムとジェストムだ。

「私には分からない・・あのお方の考えが。セパルティラ様はあのカーラという者をどうされたいと言うのか・・? 」

「私らはあのお方の命に従うだけ・・それ以外の何物でもない」


「しかし、何か以外だな・・」

 いきなり独り言をつぶやくカーラ。

「え? 何がっすか? 」

「いや、ここの魔の連中の営みも私が居た人の界とあまり変わらないのが」

「大体、魔の者は何か特別な力を持っているようなのばかりと思っていたがそういう訳でもないのかな・・? 」

 素直に疑問を口に出す。

「そういう者も少しはいるっす。でも特別な力なんか持ち合わせていない者の方が多いっす。・・まあおいらなんかその中でも下の下の存在なんすけどね・・」

 何やらいきなり卑屈になるスティハである。やはり己の出時に関してコンプレックスがあるのであろうか。

「それにしても疲れた。どこかで休まないと」

 とりあえず何とか休めそうな岩陰を見つけ、二人して腰を下ろす。

「ちっ、どうやら休ませてはくれないようだな」

 周囲を警戒し、周りを見渡すカーラ。

「? 」

 困惑するスティハ。

「さっきのバカ共がまた性懲りもなく来やがった。さすがに敵わんと思ったかえらく数連れて来たようだ」

 忌々し気なカーラ。無理もない。せっかく一息つけるかとの思いが裏切られたのだから。

「やい、合いの子の女と化外のガキ! さっきはよくもやってくれたな。ただで済むと思うんじゃねえぞ

覚悟しやがれ」

 間違いなく先の男だ。

「せっかく拾った命、大事にしておいた方がいいと思うがな」「それとも余程死にたいのか? 」

「こいつか、お前らの言っていた女というのは? 」

 野郎共の背後より一人の男が前に出て来る。そいつはやはり魔の者に違いないのであろうが、今までの奴らとは明らかに異なるオーラを醸し出しているのが分かる。長めの髪に細く鋭い眼光の持ち主。服装もその辺の農民のものとは違っている。

(こいつ少しはできそうだ。だが・・)

 いかなる相手であろうとも決して初手から舐めてかからないカーラである。

 しかしそれは唐突に起こった。

 どこからか地鳴りのような音が聞えてきたではないか。

「ん? 何だ? }

「おい、お前何した? 」

 敵も狼狽えている。

 何という事であろう。目の前の地面が盛り上がったかと思ったら中から何やら出現した。

 それは・・・どう見ても

「これは・・棺なのか? 」

 カーラも野郎共も呆けているばかりである。

 すると棺の蓋がそろそろと開き始めるのだった。

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