魔界典章・我が故郷は魔性の地 2
「言うなれば、人の勢力圏に干渉すべきと主張する者と、あくまで不干渉を貫こうとするものだ・・」「言うまでもなく我々の考えは後者だ」
カーラ、とりあえず黙ってウェグウェイの話に耳を傾けている。
「魔の者が人と必要以上に交わるのは互いに不幸な結果を招くことにしかならない・・君もそう思うだろう? カーラ殿」
「まあ、確かにその通りなんじゃないかな・・、そういえば最近魔の者がどうとかいう出来事があったりしていたな・・」「で、あんたらは何が言いたいのよ? わざわざ人呼びつけてどうしてくれと言うのよ? 」
短気なカーラ、やはりまどろっこしい言い方には我慢できないようだ。
「これはすまぬ。君はまどろっこしいのは嫌いだったな」「なら単刀直入に言おう。我々の下に就いてもらいたい」
あまりの事に状況が整理できないカーラ。何か言うのも忘れている。
「・・・」
「君の人の世界における活躍ぶりは私の耳にも届いている。なかなか大したもののようだが」
「いやーそれほどでも・・」
誉められて悪い気はしないようだ。が。
「悪いけれど、私はそんな事は正直どうでもいいんで。あんたら魔の連中が何しようが興味も関心もないし」「だから、味方欲しかったら誰か他を当たってね」
ウェグウェイ、彼女がそういう返事をするであろう事は予想していたのだろう、少しも慌てず、
「そうか。だがな、魔と人との均等が崩れれば今まで通りの生活はできぬようになる。君が好きであろう、美食や女色を楽しんだりするようなのがな」「奴らは人の者の世界を支配下に置きたがっている・・」
「・・・」
しばらく考え込むカーラ。
「要するにその、人界にチョッカイ出してくるバカ共を潰せばいいんだな? 」
(こいつがどういうつもりで私に汚れ仕事させようとするのか今一つ分からんが・・ここは一旦様子を見るか・・)
「用は済んだか? なら帰るぞ」
せっかちにも立ち上がり、部屋を出ようとするカーラ。すると・・。
「「私共がご案内いたします」」
タイミングよく来たフロトサムとジェストム。
「どうぞこちらへ」
先に立って案内する、双子。しかし、
「なあ? さっき来たのと方向違わないか? 」
問うカーラ。確かに先に来たのとは明らか違う所を通っている。何のつもりなのか?
「おい、帰るんじゃないのかよ?!」
すると振り向いたフロトサム、
「貴方には試練を受けてもらいます。セパルティラ様のご命令なので」
(セパルティラ? あの部屋に居た女の方か? そういえばあいつ、一言も何も言わなかった・・、奴は一体・・? )
気が付くとカーラの前には何やら空間が口を開けており、それは明らかにここと異なる世界に繋がっているようだ。
「?!」
呆気に取られている間もなく、背を押され異空間に入ってしまうカーラ。
「ちっくしょー、お前ら何しやがる!?」
怒鳴っても入り口は既に閉じられていた。
「行ったか? 」
「「はい、セパルティラ様」」
いつの間に双子の側に来ていた、セパルティラ。
「あの・・本当にこれでよろしいのですか? カーラ様はあなたの・・」
「つまらぬ事を言うでない! お前たちは私の言う通りにしておればよい」
強い口調で叱責する。
「・・はぃ」
消沈した双子をしり目に元の道を去って行くセパルティラ。
(カーラ、貴様の力どれ程か見せてもらう。もしこの試練に脱落するのなら、所詮その程度だったということだ)
「あいつらの差し金か・・いきなりこんな所に放り出しやがってどうしろと? 」「それにしてもここはどこなんだ? 一応魔の界の一部ということなのだろうか? 」
悩んだ所で仕方ない。それよりも「試練」とやらをさっさと済ませて元の人の界に帰ることを考えた方がいいと思うカーラだった。
そんなわけで道らしきものを歩き始める。周りを見回してみるがこちらに来た時同様、紫色の空といい、見慣れぬ植生といい、どうにも生理的に受け入れられそうにもない景色だ。
「どうにも好きになれない風景だが・・ずっと居れば慣れてしまえるのだろうか・・」
今までの人の界を懐かしく感じる。
ふと前方を凝視し見る。何だろうか? 道のど真ん中に何かがあるように見える。
「何だ? あれは? 」
恐る恐る近づいてみる。どうやら人が横たわっているように見える。
それはどうも少女の様だ。何といったらいいのか、服装などやはり人の界の物とは異なる感じの物を身に付けている。歳の頃はレイミと同じくらいか、少し下か、な感じであった。灰青色が掛かったわりと短めの髪の毛、そして魔の界の者をてき面に感じさせるのは尖り気味の耳に額より少し上に生えている短めの角・・の様な物・・。そんな少女が倒れているのだ。
(それにしても・・なぜこんな所に倒れているのだ? もしかすると何らかの罠という可能性があるかも・・)
当惑するカーラ。それならいっそ見なかった事にしておこう、とばかりにそのまますたすたと立ち去ろうとする。別に何もない。
(考え過ぎか・・)
踵を返し、再び少女の元に戻る。
「おい、お前、大丈夫か? 生きてるか? 」
爪先でげしげしと小突きながら話しかけてみる。すると、
「う・・う~~ん・・」
微かにうめき声を上げる少女。どうやら息はあるようだ。
「おーい、しっかりしろ、立てるか? 」
「うっ・・うむむむ・・」
何か言いたそうな少女。
「お、お腹すいた・・」
(何だこいつ、行き倒れなんか? )「悪いな、生憎食べ物持ち合わせていないわ」
すると少女、いきなりがばっとばかりに起き上がり、次の瞬間、
「なら・・・あんたを食べたる~~! 」
言うや否や襲い掛かって来たのである。
「へっへっへっ、特におっぱいが美味そうっす。思わずむしゃぶりつきたくなるっす」
よだれを滴らせ、カーラの乳に齧りつこうとする。
「な、何だこいつは!?吉外か!?」
カーラ、少女の首根っこをひっ掴み、そのまま地面に叩きつけた。そして背の上に跨り、足を締め上げる。プロレス技でいう所の蠍固めみたいな感じだ。
「貴様~、ガキの分際でこの私を物理的に食おうとはいい度胸しているじゃないか」
さらに締め上げるカーラ。
「ああっ。い、痛いっ、あああああっっっ! 」
手でバンバンと地面を叩き、悲鳴をあげる。
「ご、ごめんなさいぃぃ、許して。お願い」
「ごめんで済めば警察はいらないんだよ」
「うっ、うぎゃぁぁぁぁっ!!」
さらに絶叫する。




