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狂乱の魔人・狂気のスラッシュ感染 1

 カーラらが来ているのは国の辺境のとある村だった。周りは畑ばかりで人家がぽつぽつとある程度の寂れた村。

なぜこのような所に来ているのか?


「ねえ、カーラ。今暇でしょ? 」 

 城の自室でグダっているカーラ。そこにいきなり入ってきたレイミ。

「何だ? えっちな事したくなったのか? 」

 敷物の上に寝そべり、何やらいかがわしそうな本を読んでいたカーラ。 

 レイミ、その言は相手にせず、

「貴方、そろそろ暴れたくなったんじゃない? 何かそれっぽい訴えがあったので調査に行こうと思うんだけど」

「・・・話せ」

「国の東の方にナイシュという村があって、そこに最近怪しげな魔法使いだかが現れて悪さしまくっているから何とかして欲しいみたいな訴えがお城の方に来たの」「折角だから私が視察がてら行ってみようかと」「あ、もちろんお父様には許可もらったからね」


 カーラは先のルウカスの件の後のホークウィンド王とのやり取りを思い出していた。

「王様、あんたルウカスのこと薄々気付いていたんじゃないの? それでもしかしてボロ出すかもしれないことを想定してあのアホな武闘大会を許可したんだろう? 」

 王、一瞬沈黙したが、

「わしかて節穴ではない。奴の普段よりの言動に怪しげな分を感じたのは確かだ。例えば妙に娘の気を引くような事を意識しているようだったりな・・。しかし、わしはあやつを重用していた。実際優秀な軍人であるのは確かだったからな。娘の・・レイミの婿にしてもよいと考えていたくらいだ・・」

 何のかんの言ってもルウカスの正体は王にとってもショックだったのであろうか。珍しく饒舌な感じであった。

「だが、勘違いするな、カーラよ。わしは貴様を許したわけではないことを。幾ら娘に気に入られているからと言っていい気にならんことだ」

「はいはい。分かってますよ。この城結構居心地はいいし、寝食分くらいは働いてもいいかなー、みたいな」(あんたの娘、からかうと面白いしね、ふひひ)


「で、結局お前らもついて来るのね・・」

「当たり前だ。お前と姫様・・レイミと二人きりにさせる訳にはいかん」

 ナイシュ村に向かう魔動車。そこにはカーラ、レイミのほかマノンとフイリンも同行していた。

「あれ? 誰か立っているみたい」

 レイミの声に前方をよく見てみる。すると確かに誰かが立っているのが見えるので近づいてみる。

「あっ、あれはもしかして・・」

「ミメント?!ミメント・モーライ!?」 

 それは見覚えのある人物、ミメント・モーライその人だった。

「別に止まる必要ないな? 」

「そうですね」

 彼女をシカトして走り去ろうとする一行。


「無視するなんて酷くありません? 」

「!?!?」

 何と言う事か。ミメントはいつの間にやらちゃっかりと魔動車の座席に座っているではないか。

「お前・・、いつの間に・・」

「で、何の用なんですか? 」

 露骨に嫌そうな顔しているフイリン。

「貴方方、ナイシュ村に行くのでしょう? その地に居ついて悪事を働いている魔法使いを退治するために」

(なぜそれを? )

「最近、特定の勢力の動きが活発になってきています。貴方方もそれは感じているのでは? 」

「一つ聞きたい。ルウカスに『エントムドの宝玉』を渡したのはお前なんだろ? 」

「それが何か? 」

「あんたねえ! 」

 思わず憤り車上にもかかわらず立ち上がりそうになるレイミ。

「彼はそれを求めていた・・。恐らく己が以前より抱いていた疑問の答えを。結果として救われたのではないのでしょうか? 」

「・・それは屁理屈ではないですか? 救われたとおっしゃれますが結果として城を追われることとなった」

「あのまま城に居たとしていずれ過激な行動を起こすことになったでしょう。それこそレイミさん、貴方のお父上を殺害するに至るような・・」

「・・・」

 レイミ、何か言おうとするが上手い言葉思いつかず押し黙る。

「私・・、はっきり言ってあなたのそういう所嫌いです! 」

 ミメントに対し嫌悪感露わにするフイリン。

「お前、フイリンにここまで嫌われるのって相当だぞ・・」

 面倒くさそうにつぶやくマノン。

「あら、貴方もあまり人の事言えるとは思えませんが。大体・・」

「あーうるさい。もうどうでもいいわ。先急ぐぞ」 

 一喝するカーラ。さすがに皆黙る。ただ走る魔道車。


「何が起きたのか詳しく聞かせてもらえないか? 」

 マノンが一同を代表し、村の長を名乗った初老の人物に話を促す。 ここは村の集会場として使われている建物なのだろうか。ただ気になるのはあちこちに壊れた跡が見受けられるのである。やはり何らかのトラブルめいたことが起こっているのだろう。

「実は・・今から一月ほど前のことになりますが・・、突如として大魔導士を自称する男が手下どもを引き連れ現れまして、この村を荒らし出したのです。食料を奪い、女子(おなご)を犯し、いや・・・女ばかりか男でさえも・・そして少年少女を攫ったりと・・。攫われた者たちは一体どうされてしまっているのか・・」

 促されぽつぽつと話始める村の長。

「・・何というか、かなりとんでもない奴らの様だな・・色々な意味で」

「その自称・大魔導士の男はザイクロファーと名乗っておりました」

「・・ザイクロファーですか・・」

 ミメントがぽつりとつぶやく。

「ん? そいつを知っているのか、ミメント? 」

「え・・ええ、まあ・・。正直あまりお近づきになりなくない輩なのですが・・」

「んったく、お前の知り合いには碌なのがおらんじゃないか」

 ジト目でミメントを睨むカーラ。さすがに反論もできず黙るミメント。

「お願いいたします。どうか村をお救いください」


「あー、めんどくせーからさっさと片付けて帰るぞ。で、そのザイ何とかという野郎はどこに居るんだ? 」

 村長が言うには連中は村はずれの森を抜けた先の荒れ地に居を構えているらしい。

「それにしても・・この世の中にはなぜ悪い事をする人がこんなにも多いのでしょう? 」

 ぽつり呟くフイリン。

「そりゃあ己の欲望に忠実過ぎる奴らが多いからだわな。まさに力こそ正義。弱肉強食。真面目で正直に生きている奴が馬鹿を見る世の中ときたもんだ。フイリン、お前も悪堕ちしたっていいんだぜ、んけけけけ」

 フイリンの頬っぺたをつんつんしつつまたしても茶化すカーラ。フイリン涙目。

「もう、よしなさいよ・・」

 たしなめるレイミ。

「前も言ったような気がするが、そんなフイリンの事が(わりと嫌いじゃない・・)」

「えっ?!何か言った? よく聞こえなかったけど」

「何でもない、先急ぐぞ」

 周辺の景色はあくまで平和そうに見えた。これから起こる騒動など何も関係ないが如く。

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