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戦慄の王都・道化を憐れむ唄 5

(それにしてもルウカスの野郎、やけに「グワイエットの乱」に拘ってないか? 単に私の過去の恥部をさらけ出したいのなら他にも・・)

 頭に血が上りつつも、それでも冷静に状況を分析しようとするカーラ。

「ふふふっ、なかなか初々しいではないか、カーラよ。今の貴様からは想像だにできんな」

 カッとなり一言言い返そうとするが、(こいつ、私を挑発しいきり立たせるのが目的なのか? )

 

 破壊の痕も生々しい街を彷徨いうろついている少女カーラ。彼女の前に一人の少年が飛び出して来た。

「お前が・・お前らが父さんと母さんを・・よくも・・」

 彼の手には小型の石弓が握られている。矢はぴたりと彼女の胸元を指している。射出される矢。避ける間もなくカーラの右胸に刺さる。

「うっ! 」

 逃げようとする少年。が、逃げることは叶わなかった。彼を捕らえたのは革命団のメンバー。

「このガキ、グワイエット様の愛妾であられるカーラ様を傷つけるとはいい度胸だ。さては反革命分子だな~? なら処刑しないとなぁ! 」

「やめて! まだ子供じゃないの。見逃してあげて! 」

 叫ぶカーラ。

だが・・。

「いいや、なりませぬ、カーラ様。こいつは見逃せば我らにとって仇名す存在となる。雑草は芽のうちに摘み取るべきです! 」

 ゴキッと嫌な音がした。地面に放り出される少年。それはすでに動かぬ物体と化していた。

 涙を流し、矢を引き抜くカーラ。傷口からは止めどなく血が流れだす。

(これが革命なの? この様な子供たちを幸せにするのが革命じゃなかったの? )

(この痛み、一生忘れられないものになる・・)


「カーラよ。『魔物の子』と虐げられられ蔑まれ恐れられ忌み嫌われていた君ならこの矮小なる人間どもに恨みと憎しみを抱いていても当然のはずだ」「その怒りと憎しみの力が革命成就の原動力となるのだ」

「だから僕を信じてついて来ればいい」


「このメンバーの中に王国のスパイが居る」

「お前だ! モーブ・リンジ! 」

「? ふざけるな! なぜ俺が? 」

「お前が王国の秘密警察と会っていたという証言がある」


「しかし、グワイエット様も物好きだなー。あんなわけわからん半妖の女を口説くなんてな」

「いや単にあいつの持っている得体の知れない力が欲しいだけだろ」


「貴方が王国のスパイだったのね・・。意外だわ、一番過激な主張をしていた貴方が・・」

「バレなければもう少しで国王暗殺まで成功したかもしれないのに・・」


「グワイエット・ラオット。汝を国家騒乱罪にて死刑に処す」

「違う! 俺は首謀者じゃない。俺は嵌められただけだ! 俺を唆したのは半妖の魔女・カーラ。カーラ・エンジェルウィッチ! 」


「違う?!これはどういうことだ? 」

 いきなりどうしたか? 突然として狼狽えだすルウカス。

「? (何だ、こいつ? )」

 ルウカスの動揺が影響したのか、宝玉の呪縛が緩んだ気がする。

「俺の聞いた話と違うではないか? 」

 とりあえずはよくわからないがチャンス到来とみて間違いない。

「カーラが裏切ったりしなければグワイエットの革命は成功したはず」

(今だッ! )

 ついにカーラの呪縛は解けた。体の自由を取り戻すことができた。

「ルウカス! きさまぁ、よくも散々胸糞悪い物を見せつけてくれたな! 百倍にして返してやるかんなあ! 」」

 怒り心頭、心なしか目が燃えているようにも見えるカーラ。

「一つ聞こう。なぜお前はグワイエットの乱に妙にこだわる? もしやお前は・・? 」

「まだだ。まだ俺は負けはせん。」

 往生際悪く、まだ宝玉を振りかざそうとするルウカス。だが・・。

「ルウカスお前、周り見てみろ」

 言われて見て、ハッとするルウカス。なぜなら・・いつの間にか宝玉の力が作り出していた異空間は消滅し以前の闘場に戻っていたからだ。そしてそれと同時に砕け散る宝玉。ホークウィンド王やレイミ、フイリン含む観客たちはあまりの展開に言葉も出ないでいる。

「くっ、くそっ、なんてこった・・! 折角手に入れた『ヒムゼンの宝玉』なのにこのような結末になるとはな・・」「こうなった以上何としてもカーラ、貴様を殺す! 」

 やけになり、剣を抜きカーラに斬りかからんとするルウカス。

「やめて! ルウカス! 」

 レイミの叫び声が聞こえたが構わず襲ってくる。だがしかし、軽くいなされ、背後から蹴りを入れられてしまうのだった。地面に跪き、さすがに戦意も消失したかルウカス、

「くそっ、最早これまでか・・これ以上恥をさらすくらいなら・・」

 あろうことか、剣を自らの鳩尾に突き立てようとする。

「ああっ! 」

 思わず悲鳴をあげるレイミ。だが次の瞬間には剣はカーラの手の内にあった。

「何いっちょ前に自決しようとしてんだよ、ばーか。お前にはまだ聞きたいことがあると言ったろう」

「俺は・・グワイエットの子孫なのだ・・そう、お前の裏切りにより野望が潰えてしまった男のな」 

 ルウカスの突然の告白。

「な、何ですって・・!?」

 やはり驚くレイミ。観客たちは騒めく。

「グワイエットの乱が失敗に終わったのは私・カーラが裏切ったせいだとお前は信じていた・・。だが先程の『ヒムゼンの宝玉』を使った過去再現では思っていたのと違っていた、で、ショックを受けたと? 」

「・・・」

 ルウカス、無言のまま答えず。

「・・ある意味納得だわ。お前はあのクズ野郎の子孫なだけある。それにしてもなー、あの野郎、ストイックなふりしていやがってしっかり子孫は残していたという訳か・・。とことん舐め腐った真似しおるなあ」

 如何にも嫌な物思い出してしまった、という感じで顔しかめるカーラ。

「しかも嘘をついていた、ときたもんだ」

 

「カーラ。僕ら二人でこの世界を手に入れよう。理想の世界を作り上げるのだ」

「二人で・・か。・・くっくくくっ、世界を手にするのは私だけだ! お前はここで朽ち果てるがよいわ! 」


「・・・みたいなのを想像していたのか? え、おい? 」

 なおもねちねちとルウカスを嬲りまくるカーラである。

「ルウカスよ」

 いつの間に側に来ていたのはホークウィンド王。

「お主、このわしを謀っていたのか? 何より信頼していたというのに」「元よりわしの信頼を得て、この王国を我が手にするつもりであったのか? 」

 詰問する王。彼の目には怒りとも悲しみともつかぬ光が宿っている。やはり、長年の信頼を裏切られたことに対する様々な思いがあるのであろう。

何も答えないルウカス、だがぽつりと一言・・。

「俺はグワイエットの意志を継ぐつもりだった・・。しかし、それも潰えた」


 数日後。

城の中庭。レイミとフイリンがティータイムをしている。側にはカーラとマノンも居る。

「ルウカスさん、国外追放で済んだのは幸いでしたねえ」

 茶飲みに口をつけつつ、フイリンが呟く。

「お父様は確実に死刑にするつもりだったし・・。私は減刑を頼んではみたけれど聞く耳もっていなかったのに・・」 

 そしてカーラに目を向けるレイミ。

「ねえ、カーラ。もしかして貴方何かお父様に嘆願したりとかしたの? 」

「はあ? バカ言うな。何で私があんな野郎を助けるような真似しなければならんのよ。今までの地位を剥奪されて身一つで国追い出されるのって死ぬよりキツいんじゃないの」

 菓子をかじりながら面倒くさそうに答える。

「ま、これであの親父もうるさい事あまり言わなくなったろ? またどこか遊びにでも行くか? 」

「悪いとは言わないがほどほどにな」

 かなり城での暮らしが板についているマノンであった。

「ルウカスが持っていた『ヒムゼンの宝玉』ねえ・・。私もカーラの過去見てみたかったかも」

「やめて。全然面白いものじゃないから。見てても楽しくないから」

 やたらムキになって否定するカーラ。

(そういえばあいつが持っていた『ヒムゼンの宝玉』どこで手に入れたのか聞きそびれたな・・まあ、大体想像つくが)


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