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戦慄の王都・道化を憐れむ唄 4

 とりあえず、相手の出方を伺うしかないカーラ。

(あんな野郎は速攻でぶち殺してもいいのだが、そうしてしまうとレイミに完全に憎まれるな・・。いや、あのような小娘に今更憎まれようが何しようが構わないはずなのに・・。どうした? 私? )

 葛藤するカーラだが、そうしているうちにルウカスはその宝玉を高く掲げる。まるで太陽の如く眩い閃光を発する宝玉。一瞬盲目になるほどだ。


「・・・? ここはどこだ? 確かに闘場で戦い始めたはずだが・・? 」

 戸惑うカーラ。無理もない。今、彼女が居る場所は何やら白とも灰色ともつかないモヤだか霧だか霞だかが漂っている場所。観客が居るはずなのに声も聞こえない。

「カーラよ。この場所は『ヒムゼンの宝玉』が作り出した空間。貴様と俺はそこに入り込んでいる」

 ルウカスが姿を見せた。いきなり妙な事を言い出したが。

「この空間は人の過去を克明に暴き出すことができるのだ。当然貴様の忘れ去りたいであろう過去もな」

「??」

 カーラは疑問を感じた。ルウカスのような一介の人間がなぜこのような特殊なアイテムを手にすることができたのか? ここまでして私を追い詰めたいのか? その執念は一体どこから来ているのか? 訊いた所で答えてはくれないであろう。ならば、身体に訊くのみ。

「ごちゃごちゃうるさい。要するにお前をぶっ倒せばいいだけだろ」 

 再び光を発する宝玉。その光がカーラの脳内に入って来るのを感じる。

「何だ? これは? 」

 ある光景が見えてくる。それは今から百数年前。あの「グワイエットの乱」の真っただ中・・。

「カーラ・・、カーラよ」

 呼びかけて来る者がいる。まだ年若い男、美形ではあるが何か神経質そうな・・言うならばある種の狂気を抱いていそうな人物だ。彼がグワイエットなのであろう。

「グワイエット!?」

 答えたのはまだ幼さの残る少女・・・丁度今のレイミと同じくらいの年齢に見える。銀の髪に紅い瞳の持ち主・・これは明らかにカーラその者だ。

「おい!?何だこれは? やめろ! こんな物を見せるな! 」

 しかし、場面はカーラの叫びと関係なしに進む。

「カーラよ、革命を成功に導くためには君の存在がが必要なのだ。魔の者と人の者との血を引く君が協力してくれるのなら必ず革命は成就するだろう・・」「そう、王族の支配するこの腐り切った体制を打倒し、誰もが平等に・・真に争いも貧困も差別も無い世界を作り上げるのだ」

 そう言うとグワイエットは少女・カーラの手を取り、目を見据えるのだった。

 それに頬を赤らめる少女・カーラ。

「やめろ! 昔の私。そんな奴の甘言に騙されるんじゃない。そいつは・・」

「ハッハッハッ。無駄だ、カーラ。その光景は過去のお前の記憶を忠実に暴き出しているだけにすぎん。いくら心の奥底に封じたつもりの物でもこうして白日の下に晒されるのだッ! 」

 勝ち誇ったが如くカーラに向かい、ビッと指を突きつけ、高笑うルウカス。

 対して目を見開き、冷汗を浮かべ、動揺を隠すこともできなくなっているカーラ・・。

 まだ続く、過去の光景。さらにそんな少女カーラをぐいと抱き寄せるグワイエット。そして・・。

「うわあああああああああっ!!! 」

 カーラの絶叫が響き渡る。

「畜生~っっ! やめろやめないか! 」

 錯乱し、なりふり構わず、写し絵に突っかかろうとするカーラ。しかし、むろんのこと何も手ごたえなどあろうはずもない。

(そうだ・・こんなことしても意味はない。つまりは・・)

 宝玉をかざし続けるルウカスに向かおうとする。

「お前を潰せばこの糞忌々しい"絵"は消える! 」

「ふん、意外と早く我に返りつつあるか・・だがこのヒムゼンの宝玉の力はそれだけではないぞ」

 さらに一際怪しく輝く宝玉。すると・・。

「何だ!?体が動かない? 」

「ふふふっ、どうだ、ピクリとも動けまい。観念して続きを楽しめ」 

 場面はどこかの小綺麗な室内を映し出す。そこに居るのはグワイエットと少女カーラ。二人とも半裸という姿だ。

「グワイエット・・。実は・・私・・初めてじゃないの・・。」「・・幻滅した? 」

「そんな事気にしないさ。これからの君の歩むべき道を鑑みれば矮小な事でしかない」

「・・ありがとう、グワイエット・・。私、貴方に身も心も捧げます。そして一生ついていきます」

  

 カーラ、ギリギリと歯ぎしりをし、握った拳からは血が垂れだしている。

「ルウカス・・、きさまあぁぁっ、絶対に生かしておかない。苦痛の限りを尽くして殺す! 」


「・・・あの二人さっきから微動だにしていないのですが、一体何が? 」

「何だかあの空間だけ時が停止しているかのような・・? 」

 疑問に感じているのはレイミとフイリンだけではなかった。観客席も騒めきだしている。

「おい、何やってんだ? あの二人? 」

「全然動かねえぞ? 」

「舐めとんのか、ちゃんと楽しませろよ」

「分けわかんねえ事してんじゃねえよ。俺が一発気合入れてやるわ」

 一人の男、たぶん城の兵士の一人と思われる・・が闘場に降り立ち、二人の側に近づいていく。と、

「うわっ? 何だこれ? 何か見えない壁のようなものがあるのか? 近づけねえ・・」 

 がしがしと何もない空間を殴りつけている。

(ルウカスめ。散々景気の良い事を抜かしておったが・・。一体何をしているのだ? 本当にカーラに勝てる気でいるのか? )

 周りの喧騒にも影響されたか、段々と渋い顔になっていくホークウィンド王であった。

 

「よくやった、カーラ。この調子で王族の犬どもを皆殺しにするのだ。」「君は実に素晴らしい子だ。君の持つ力は軍隊一個師団に相当する」

 目前には破壊された建造物。そして息絶えた人の死体が転がる。 

(これは、私がやったのか・・? いくら正義の革命のためとはいえ・・いや、グワイエットが間違っているはずはない。そう、彼はこう言っていた。『大義のために多少の犠牲はやむを得ないことだ』と・・) 

「どうかしたか? カーラ。何か浮かぬ顔をしているが。君の持てる力がこの僕のための役に立って嬉しいよ」

「何でもありません・・。少し疲れただけです・・」


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