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戦慄の王都・道化を憐れむ唄 3

勝利を確信し、嬉々とした表情でにじりくるボルディアーノ。そして、ミスXの片足をむんずと掴み持ち上げ宙吊りとする。もう一つの足をも掴み、股を開く形にした。

「げべべべべ、ぼめえのこっ恥ずかしい姿を晒してやるぜ。ウォデは他人に見られながらヤるのがドワイ好きなんだ~。・・おっそうだ、その前にこの覆面剥ぎ取ってやるボ! 」

 当然、覆面取るためには一旦降ろすか、両足を片手でつかんでいるかしなければならない。ボルディアーノは一瞬どうすべきか考えた。そして、考え付いたのが、足を持ち、鎖の巻き付いたままの胴をそのまま地面に思い切り叩きつける、という所業であった。鈍い音をたてながら半ば地面にめり込むような形となった。

(この野郎、一瞬意識が遠のきそうになったぞ、糞がッ! )

 衝撃で口の中を切ってしまったらしく、鉄臭い味がしつつある。そして、ボルディアーノの手が覆面に掛かった刹那・・、ガシッと思い切り彼の指に噛みつき、人差し指と中指を同時に食い千切った!

「うぐおわーーーーっ! 」

 悲鳴を上げ、飛びのくボルディアーノ。ミスX、自由になっている両足の反動を使い立ち上がった。そして、指をプッと吐き出し、血を滴らせながら、

「ケッ、糞不味い指だ、ち〇〇とザーメンの味したわ。あー気持ち悪ぅ」

 えぐい光景に観客席も静まり返っている。

 次に何と、身体に巻き付いていた鎖がブチリと千切れ、下に落ちた。

「ふう。こんな物はその気なら幾らでも千切れたのだがな・・」

 そして、観客席に向かい、手を振り上げ、

「いえーい! ファンのみんなー、ハラハラしたかーい? スリルを味わえてたのしかったろう? これからもっと楽しい物見せちゃうからご期待していてねー」

 だが、気を取り直したボルディアーノが背後から。

「ぢぐしょう、この糞アマ~もうゆるざねえ、ブッチ殺したる。ブチ殺してからメタメタに犯したる! 」「死にやがれぇぇぇぇッ」

 ミスXに鯖折りを掛けようと迫ったが、その腕は宙を切るだけだった。

「!?」

 直前で跳躍し、ボルディアーノの首を両足で締め付け、地面に引き倒す。いわゆるフランケンシュタイナーというやつである。

「おら、まだ寝るんじゃない。もっとお客様を楽しませないとなあ」

 横腹に蹴りをぶち込む。

「ぐぼっ! 」

 うめき声と共に吐しゃするボルディアーノ。が、すぐによろよろと立ち上がった。中々タフである。

「どうせお前、死刑になる身なんだろう? 同じ死ぬのだったら私に華々しく殺された方がいいだろ? 」

 手刀を腕に叩きこむ。この一撃で骨が砕けたか?

「おら、さっきの威勢はどこに行った? 」

と、今度は鳩尾にパンチをかます。再び崩れ落ちるボルディアーノ。最早、声をたてることもできなくなったか。ミスXことカーラ、彼の後ろに回り込み、後頭部の髪を引っ張り上げ、

「幾ら腐れ外道な野郎でもいささか哀れになってきたわ。あまり遊びすぎるのも疲れるしな。そろそろくたばれ」

 ギャラリーに分からぬよう手に気を込め、後頭部から頭蓋を貫通し、脳を破壊する。鼻と口から血を噴出し、今度こそ絶命するボルディアーノ。

「お、おおおお! 」

 観客席からは歓声なのだか悲鳴なのだか驚きの声なのだか分からない声が響く。係りの者がボルディアーノの元に駆け寄り、生死の確認をする。

「死亡確認」 

 数名の男たちが、荷車の様な物に彼の遺体を乗せ退場していく。

「勝者、謎のマスクドウーマン・ミスXううううっ! 」

 勝者の名をアナウンスする、司会者。そして、

「わ・・あああああ」

 またしても盛り上がりに欠ける歓声であった。

(ああ、さすがに疲れたわ・・)

「続いて第二試合、勝者のミスXと対するは、モルタヘイド王国の誇る偉大なる兵士長ルウカスぅ! 」

「ちょっと待て!?間髪入れずにそのまま次の試合かよ? そんなのありか? 」

 連戦なんてそれはないだろう、休憩入れるのが普通じゃないのか? と誰しも思うが。

「偉大なる我らが王、ホークウィンド・キルミスター王がこれより試合を観戦されます」

「おおおおおおおっ!!」

 今までにない歓声が上がる客席。そしてホークウィンド王が一番見晴らしの良い席に護衛の兵と共に入場し腰をおろした。

 対面の・・たった今ボルディアーノの亡骸が運び出されていった・・入場門よりルウカスが姿を現した。剣を携え、マントなどを纏い普段の軍装とは違った妙に派手な衣装を身に付けている。イベント用の正装だったりするのだろうか?

「カーラ・・。今こそ貴様を葬る! 」

「えーと・・、何の事でしょうか? 私は謎のマスクドウーマン・ミスXというもので・・」 

「くだらん茶番はもうよせ。そんな見え見えの扮装で誤魔化しているつもりか? 」

「ふん、そうかい。ならしょうがないな」

 そう言うと、マスクに手を掛け、自ら脱ぎ捨てた。


「ああっ、とうとうカーラさんとルウカスさんが戦う事になってしまいましたよ! 何とかならないんですか? レイミさん? 」

 ひたすら気が気じゃないフイリン。

「いや、もう私がどうこうできることじゃないから・・。カーラも手加減してくれるんじゃないかな、たぶん・・(二人とも死んでほしくない・・)」

 闘場の入り口の影から経緯を見守るしかないフイリンとレイミ。

(もしどちらかが殺されそうな事態となったなら、私が止めに入る)悲壮な決意を固めているレイミであった。


「うっ?!あれはカーラじゃないか? あいつよくおめおめと戻って来れたもんだな。ルウカス様、そんな奴さっさと()っちまってくださーい! 」

 今までとは打って変わって盛り上がり出す観客席。何と「ルウカス」コールまで起き始めている。

「カーラよ。聞こえるか? これが王国の精鋭たる俺とただの半端者でしかない貴様との違いだ。やたら悪運むばかり強い貴様だが、それもこの地で潰えるであろう」

「ガタガタ御託抜かしていないで掛かって来たらどうだ? それとも何か? 何か物喋ってないと怖くて戦えなかったり? んん~? 」

 この期に及んでルウカスを煽るカーラ。だが・・。

「何とでも抜かせ。今更貴様に何言われようとも屁とも思わんわ」

(何だ? こいつの自信は? 何か秘策でもあるというのか? こいつが、まさか・・)

 ルウカスは懐に手を入れたと思ったら何やら宝玉の様な物を取り出した。

(これは? 『エントムドの光』かと思ったら違う種類の物か? )

「カーラよ、これでお前の化けの皮を剥がしてやる」

「?!・・(あれで何をするというのだ? というか、奴はなぜあれを手に入れられたのだ?)」

 何もかも疑問だらけだ。


「あの宝玉らしきものは何なのでしょうか? ああいうのが何種類もあったりするのでしょうかね? 」

 どうしても以前手にした『エントムドの光』を思い出してしまうフイリン。

「さあ? 私はああいう事に全然詳しくないから何とも・・。少なくともうちの城にあった物じゃないみたいだし」

「七つ集めれば願いが叶うとかあったり? 」

「無い無い」

 この期に及んでボケをかますのはさすがにどうかと。


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