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戦慄の王都・道化を憐れむ唄 1

 モルタヘイド王国・王都。その外れに一軒の家があった。かなり古く一見廃屋かと見まがうような家であったが、その中に人影が見える。

「カーラさん、これからどうするのです? 」

 室内の古びた椅子に座るフイリン。そしてカーラの二人。

「レイミの親父、ムチャクチャ怒っておるだろうからな。それにルウカスのバカは私を始末したくて堪らないだろうし、いきなりノコノコ出て行くわけにもいかないしな」

 そう、カーラとフイリンはモルタヘイドに戻ってきていたのだった。むろん、目的はレイミらに会うためであろう。

「だがむろんこのままで何もしないわけにいかない。上手くマノンに接触できればいいのだが・・」

「私が行ってみる、というのはどうでしょうか? 」

「お前が一人でノコノコ行くというのも不自然だしな。レイミに会わせられず捕えられてナニなことされるかもしれない・・」

 

「フイリン、上手く城に入り込む方法見つかったぞ」

 翌日のことである。その日カーラは街に買い出しに出たのだった。きょとんとした顔のフイリンの元に一枚のチラシを見せる。そのチラシにはこうあった。

『王室主催武闘大会開催・キルミスター城』

「ええ!?何ですか? これ? 」

 目を近づけ凝視するフイリン。そこにはさらにこうあった。

『王室では王族直属の護衛を務められる優秀かつ精強な人材を求めている。本大会における成績優秀者にはその道が開けるであろう。性別・年齢・出生は問わぬ。我と思う者は来たれよ! 当日参加受付可』

「まさか、これに出るつもりですか? でも・・」

「うん、言いたいことは分かる。連中に顔が割れているのに出ようとしてどうする? というんだろう。何心配するな。策はある」

「・・・(何か話が出来過ぎな気もしますが)」

 一抹の不安を抱くフイリン。だが、カーラを信用しようとも思う。何しろ今まで彼女を信じてきて間違ったことは無かったはずだから。多分・・。

 

 大会当日、キルミスター城外部に設けられた参加者受付所。かなり大々的に宣伝していたようなのだが、参加希望者の姿は皆無に近い。

「大会参加の方ですね、お名前を」

「ミステリアスガールX! 略してミスX! 」

 唖然とし、改めてその参加者をまじまじと見つめる受付担当者。そいつはマントを全身に纏い、奇妙極まりない覆面を着用していた。そして脇には少女らしき人物が居るのだが、その彼女も顔には大き目のマスクと濃い色の眼鏡を直用しているのだった。

「そちらの方は? 」

 脇の少女を指す受付。

「こいつは付き人だ」

 訝し気な受付。だが断る理由もないので、

「・・別に覆面着用したらいけないという決まりもないですし、案内に従って控室にいらしてください」


 通された控室は案外に小綺麗で広めの部屋だった。係りの者は「案内があるまでここに居てくれ」と言っていたので大人しく待っていることにした。

「始まるのは何時からだっけ? 」

「チラシによると10時からです」

「まだかなり時間あるな。それにしても気が利かないな、飲み物の一つでも出せや、と」

「あの、このマスクと色眼鏡取っていいですか? 何か苦しいし、違和感あるし」

 すると、コンコンと扉がノックされた。「入れ」と言う間もなく開けて入って来た者は・・。

「久しぶりだな、カーラ、フイリン」

「!?マノン!?」

 入って来たのは、今やレイミ姫の衛士をやっているはずのマノンその人であった。

「い、いや、私はカーラなどという者ではない。謎の格闘家・ミスXだ」  

「・・ゆっくり話したいのはやまやまだが、あまり長時間ここに居ると怪しまれるから」

「え? それはどういう事・・? 」

「一つ言っておく。この大会はルウカスが仕組んだ茶番だ」 

 一同一瞬の沈黙。妙な空気が流れる。

「うん、まあ、何となく怪しい雰囲気は感じたけどな・・」「あいつが決勝に出てきて勝者と戦う、とかいうシナリオなんだろ? それなら願ったりだ。レイミの前で奴の恥ずかしい姿晒してやる。ふひひひひ」


 レイミはどうにも落ち着けなかった。身寄りのない娘たちを救うため、飛び出した城に戻ることとなった現実。父王・ホークウィンドやルウカスの目が厳しくなっているので最早以前のように城の外に自由にでるということができなくなっていた。せめてもの救いはマノンが側に居ることか。

 カーラやフイリンに無性に会いたいと思う気持ちは日ごとに募っていく。

「こうして離れてみるとカーラ(あいつ)のことばかり気になっている・・」

 それにもう一つ気にかかるのが父王の腹心と言える部下、ルウカスのこと。彼が自分に対する態度はどうも仕える王の娘ということを考慮しても、何とも・・上手く言えないが・・・腹に一物あるのではんいか、という気がして仕方ない。幼い頃より目を掛けてもらった、ということはあるにせよ。カーラやマノンやフイリンに対し異様に敵愾心を持っていることにもモヤっとしたものを感じている。

 

 ホークウィンド王はイラついていた。愛娘は自分の元に帰って来たものの、自分を散々コケにしたカーラに対し、未だ苦々しく思っていた。

(奴め、人の娘を弄んだ上に、わしの恩も忘れコケにするような真似してくれおって・・このまま済ませる訳にはいかぬ)

 苦虫を嚙み潰したような表情で自室内をうろうろ歩き回っている。すると部屋の戸をノックする者がいる。

「誰だ? 」

「ルウカスにてございます」

「入れ」

 気のせいなのか何なのか、ルウカスやけに嬉しそうな表情をしている。

「陛下、憎きカーラめを始末する妙案を考えました故、ぜひお耳に入れたいと」

「始末か・・。そうしたいのは山々ではあるが、困ったことに娘が奴を異様に慕ってしまっておる。下手殺そうものならわしもお前もただでは済みそうにないぞよ」

「ふふ、何も物理的に殺すばかりが能ではありませぬ。姫様にも愛想をつかされるほど無様を晒させ、精神的に葬る、というやり方もありまする」

「・・苦しゅうない、その方法とやらを申してみよ」 

「私めは実はカーラをひれ伏せさせられるあるアイテムを探し出すことができまして」

「ほう、それは初耳だ。それにしてもお主いつの間にその様な物を? 」

「見つけ出すのに少々手間取りました故」


 また、控室をノックする者がいる。今度は大会の係りの者だ。

「武闘大会ですが、参加者少数のため、ミスX様にはいきなり決勝を戦っていただきます」

「!?ちょっと待て!?おかしくないか? 仮にも王室主催の大会だろう? 参加者がろくすっぽ集まらないなんてことあるのか? 」 

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