運命の翼・飛翔する戦士たち 5
「痛いか? なら次は気持ちいい事してやろう」
猛烈に嫌な予感がしているであろうパラス。お構いなしに、服を剥ぎ取り胸を露わにする。そして背後からパラスの見かけは幼い胸をこねくり回す。
「んあっ! 」
意志とは裏腹に思わず声が出てしまう。
「こ、この不埒者がッ! 」
さらに口をキスで塞ぐ。舌を入れ、唇の裏や歯茎をも舐め回す。たちまち唾液に塗れる口回り。
「ぷはっ、く、口吸いとは破廉恥な真似を・・」
「よし、次はそっちの方を気持ちよく・・」
「あのーすみませんが・・」
(そうだ、フイリンが居たんだ。こいつはいかん)
「何かこう、絵面的にすごくまずいんじゃないか、という気がするのですが」
「いや、言ったと思うけどこいつは見かけと違って300年以上生きている奴だから・・」
二人が揉めている隙をついて抜け出そうとするパラス。
「おのれ、カーラ、屈辱極まりない真似をしてくれおって。許さん!」
反撃に転じるパラス。背後よりカーラの腕を捩じ上げる。
「今度こそは逃さぬ。先ずはきさんの四肢を引きちぎってくれるわ」
「ううっ、こいつ何て力だ・・」
「ああっ、やめてください!」
フイリンがパラスを引き離しにかかる。触れられ、思わず飛びのいてしまう。(しまった、こいつが居たの忘却しておった)
「ふん、案外間抜けだな、こいつ」
再び、魔除け(?)代わりにフイリンを前に立たせ、パラスの側に寄る。
「おい、なぜ私がここの道を通るの知った? 」
顔を背けながら
「あちしはもう数年眠るつもりだったのに無理やり目覚めさせた輩がおった。きやつは確か何やらの魔女とか名乗りをあげたもうた。憤りを覚え、そ奴を食ろうてやろうとしたらそいつは言った・・。『もうすぐここに来る者が居ります。半分魔の者の血を引く、かつて悪名を轟かせた、銀の女帝・カーラ・エンジェルウィッチその者が』とな」
「あいつか・・」
「あいつですね・・」
頷く二人。
「一つ聞くがなぜ食事に一服盛るとかしなかった? 痺れ薬でも持っておけば楽だったろうに。尤もそんな事しても私にはすぐ見破られるけどな」
「はあ? 薬など混ぜたら血が不味くなるであろうが。風呂を用意したのも不潔なままだと嫌であるからだ」
「意外といい人なのかも」
「いや、それは無いと思うぞ・・。ところでお前これ知っているか? 」
そう言うと「エントムドの光」を取り出してパラスに見せた。
「これは『エントムドの光』か。なぜお主がこの様な物を所持しておる? 」
簡単にそれまでの事柄を説明する。
「浮世には愚か極まりない輩が居るものよ。それより主ら、それを使って何事かしようとするつもりではあるまいな? 」
「ふん、見損なうな。仮に何かやらかすとしても私にはこんな物は別に必要としない」
「ならば、お主の手で破砕してくれぬか? この様な物は我らの如き魔の者にとっては害悪極まりないのでな。あと無論人間らにとってもな」「魔の者と人の者とは互いに関わらぬ方が身のためと思うが」「あちきも大っぴらに面倒事起こしとうない。なるべくひそやかに暮らしたいのだ」
どうしたものか・・と一瞬思案するカーラ。(大した値がつかない物ならいらないか・・しかし・・)
「どうするかそのうち考えて何とかするわ。それよりお前、私の血欲しいのだろ? いいよ、吸っても」
「え!?」
意外な言葉に驚くパラス。
「いいから。何遠慮しているんだ」
何の心境の変化なのか? 少々腑に落ちない思いもあるが、
「そうか。ならば言葉に甘えるとしよう」
互いに床に座り込み向き合う形になった。カーラの膝の上に跨り、両腕を背中に回しつつ、首筋に口を近づける。少し舐めて濡らし、静かに牙を突き立て、溢れ来る血を啜る。
(ん!?全く痛みは感じない・・それどころか何か気持ちよくなってきた・・)思わずぎゅっとパラスを強く抱きしめるカーラ。
「先程はあちしに気持ち良い事をしてくれた。今度はあちしがお主にしてやろうぞ」
耳元で囁き掛けるパラス・トロスダイ。顔に似合わずねちっこい物言いだ。そして、見かけだけは幼い手をカーラの寝着の脇より入れ、胸を弄る。
「いや、いいから。フイリンが見てる。まだあいつにはそういうの早いから」
強がりつつも、顔は紅潮し、息も荒くなっている。
「・・お主がどの面下げてそげな事言うのか、という気もするが・・まあよい」
多少残念そうな顔しつつ、カーラから離れ立ち去っていくパラス。
「お主の血、なかなか美味であった。できればまた賞味したいものだ」
(最初から強引な真似しないで土下座でもしてお願いしたら、カーラさん普通に血を吸わせてくれたのではないでしょうか・・)
「あーあ、こっちはゆっくり休みたいのに全くいらん事してくれよって・・。寝なおすぞ、フイリン」
そう言って寝室に入っていくカーラ。フイリンも後を追う。これでようやくゆっくり眠れそうだ。果たして今後ゆっくりと惰眠をむさぼれる時がどのくらいあるのか? それはまだ分からない。
「きやつ等ようやく出て行きおったが・・。久々に上質の血を得られたから、魔力も漲りつつある」「とりあえず傀儡共を直さねば・・」
翌日の夜更けに目を覚ました、パラス。
「それにしても、あの魔女め。あちしをカーラに対するかませに使うつもりだったのか? 」
寝床より起き上がり、窓辺に近づき表を眺める。
「ふむ、いい月夜だ」
「本当ですね、パラスさん」
「!?」
はっと、後ろを振り向く。
「ミメント・モーライ! いつの間に入りよった? 」
そこには、いつものフード付きローブを被ったミメント・モーライが立っていた。その質問には答えず、
「意外とあっさり負けてしまいましたねぇ、パラス・トロスダイさん。カーラ相手に詰めが甘かった、という所でしょうか」
「きさん、あちしを嗤いに来たのか? 諍いを起こすというならば容赦せぬぞ」
牙を剥きだし、目を光らせ、今にもミメントに飛び掛からんとするパラス。
「あら、そんな怖い顔なさると折角の可愛らしさが台無しですわよ。貴方がその少女の姿を留めているのもその愛らしさで相手の油断を誘う、というおつもりがあるのでしょうしね」
「・・で、何用か? 」
矛を収めるパラス。
「貴方も魔の者の端くれであるのなら、魔界女帝・セパルティーラをご存じでしょう? 」
「奴がどうかしたのか? 」
「彼女、どうもここ人界にちょっかい出したがっているみたいでしてね」「今後、何かと騒がしいことになりそうです。もしそうなれば対抗処置が必要となるかと」
「きやつにカーラめをぶつけると? 」
「そうです、何しろカーラは・・」
不穏な空気が、パラス・トロスダイの屋敷内を支配する。
「お主の思う通りにカーラめが動くかな? あの者、伊達に長生きしてはおらぬぞ。尤もあちしに比べればひよっ子ではあるが」




