運命の翼・飛翔する戦士たち 2
「お前何やっとるん? 」
突然やって来たのは言うまでもなくカーラである。しかし、なぜ関西弁なのか?
「ミメ何とかとか言うたな、お前。まぁた性懲りなく私の手下にちょっかい出すつもりか、おい? 」
(こいつ、クレイドフルとの闘いであまり消耗している風がないですね)
一先ず、冷静に状況を分析する、ミメント。
「それとも何か、以前の私のテク忘れられないのか? 何ならここで致してもいいぞ」
邪な笑いを浮かべるカーラ。そしてミメントの顎をくいと持ち上げる。
「いえ、それには及びませんから。わたくしはその辺で失礼させていただきます。フイリン、またお会いしましょう」
そう言い残し、そそくさと去って行くミメント。後には「エントムドの光」を押し付けられたフイリンが。
カーラ、それに気が付いたようで、
「ん? フイリン、何だそれは? 」
今までの事情を話すフイリン。
「これ、どうしたものでしょうか? 」
「あいつが何のつもりでお前にくれようとしたのかは分からないが、まあ、捨てるのも何だし、もしかしていい値段で売れるかもしれないから持っておこう」「それにしてもフイリンお前、もしかしてミメントに気に入られたんじゃないか? 」
「えー、それは勘弁して欲しいです・・」
心底嫌そうな口ぶりのフイリン。
そしてレイミのことを話すカーラ。
「そうですか・・。あの子らの行き場が得られたのは喜ばしいですが・・、レイミさんとマノンさんが行ってしまうなんて・・」
「どうせそのうち会えるだろう。それにしてもレイミ、『王族をやめる』とか啖呵切っておいて結局頼るんじゃないか。出生からの運命には逆らえないということか・・」
何やらぶつぶつ文句を言っているカーラ。そんなカーラにフイリンは微笑みながら、
「カーラさん、もしかして、レイミさん居なくなって寂しいのですか? 」
「はあ?!そんな訳あるか。バカ言うな。うるさいのが居なくなってむしろ清々してるわ」
顔真っ赤にして反論し、ずいずいと先に歩いていく、カーラである。
「・・・素直じゃないですね」
モルタヘイドの城へ帰還途中のレイミとルウカスの一行。魔動車の後部座席に収まっているレイミ。やはりいろいろ考えるところがあるようで押し黙っている。隣に座っているのはやはりルウカス。本人は「気を使うことのできるイケている男」を意識しているのかいないのか、レイミに話しかける。
「姫様、お父上と顔合わすのが気まずい、とおっしゃるのであればこのルウカスが取り直して差し上げます。ですから安心してください」
「あ、ありがとう、ルウカス。でもこれは私自身の問題だから私個人で・・何とかします・・」
(ううむ、もっと俺を頼ってくれないと困るのだがなあ・・)
一方、マノンは救出した少女らと共に別の魔動車に乗っていた。とはいってもこちらの方は元々貨物輸送のための荷室に押し込められた、といった感じなのだ。予定外の人員と言う事で仕方が無いと言えば仕方ないのであるが、歩かされるよりはましと思う事にした。
少女たちは一律に不安そうな表情をしている。幾らレイミが「何とかする」と言っていた所で手放しに信用できるものではないだろう。
「心配しなくていい。レイミ姫は必ず約束は守る。あいつは・・いや彼女はそういう人だから」(それにしても私もヤキが回ったか・・只の小娘と思っていたのに・・)
少女らに語り掛けるマノン。彼女自身も何やら思うものがあるのであろうか。クレイドフルの居城から出発する直前のこと、マノンの事を胡散臭げに扱うルウカスと兵たちに向かいレイミはこう言った。
「この人は私・レイミの近衛隊長です。たった今任命しました。いいですね、マノン・ウオウ? 」
「え?!あっ?!はいっ! 」
思わず返事をしてしまったが。「近衛隊長か・・悪くはない響きだ」一人ニヤけるマノン。
そういえば、この城を見るのはどのくらいぶりなのだろうか? 実際はそれほどの月日でもないのだが、感覚的にもう何年もたっていたのでは、という感じもする。
「姫様、お疲れでしょうから父上に会われるのは明日になさってください、娘たちには開いている部屋に通しておきますので」
「うん、お願いルウカス」
精神的にも肉体的にも疲れが見えているレイミ。
「えーと、ひ、姫様、私もお供しましょうか? 」
ぎこちない言い方をするマノン。
「・・無理しなくていいよ、マノン。普段はレイミでいいから・・」「貴方も別の部屋で休んでいて」
おぼつかない足取りで自室に入るレイミ。懐かしむ余裕もないのだが、
(ああ、ちゃんと掃除とかしてくれていたんだ・・)
何やら思う所があるのか、涙が出てきたレイミ。父上に対する言い訳考えられたのだろうか?
翌日、父王・ホークウィンド・キルミスター王の元に参じるレイミ。後にはルウカスとマノンを従えている形になっている。
「レイミ・キルミスター、只今戻りました。えっと、その・・お父様並びに城の皆に迷惑と心配をかけてしまい、大変申し訳なく思っています」
跪き、頭を下げ父に謝罪する。
「分かった、もうよい。兎に角無事に戻ってくれて何よりだ。ルウカスに聞いたのだが、お前あのクレイドフルに囚われていたのか? 」
「え!?えー捕らわれたのかといえば、そのぉ・・」
すかさずマノンが助け舟を出す。
「クレイドフルのに関してですが、奴めの悪行三昧に憤ったカーラが討伐を引き受けたのです。レイミ・・いやレイミ姫は若干その手伝いをしただけです」
ホークウィンド王、マノンに対し訝し気な視線を送る。
「お主は? 一体? 」
「申し遅れました。わたくし、レイミ姫に直属の近衛隊長に任命された、マノン・ウオウと申します。以後お見知りおきを」
「・・・近衛隊長とは・・、また勝手な真似を・・。レイミよ、その者カーラめと違って信用おけるのだろうな? 」
「も、もちろんです、お父様。」
一瞬あたふたとするレイミ。
「それはそれとして、お願いしたいことがあるのですが」
そこでレイミはクレイドフルの城より救出した肉親に売られ身寄りのない少女たちの処遇を願う。そしてそこで「待っていました」とばかりにルウカスが口を挟む。
「陛下、貴方様の愛娘であられるレイミ姫は何と慈悲深く愛に満ち溢れたお方なのでしょう。今回この城に帰還したのも陛下の叱責を恐れる気持ちよりも、哀れな少女たちの処遇の方を優先したからにほか有りません。レイミ姫、彼女がモルタヘイド王国を継げば民にも大いに慕われ、将来も安泰でありましょう」
何だかやたら饒舌に早口でまくし立てている。
「ルウカス、貴方・・」
(しかし、心にも無いようなことをべらべらとよく言えるものだ、こいつは)
心の中で呆れるマノン。肝心のレイミはどう思っているのか・・。単純に彼の甘言に絆されてしまったのかどうか・・。
王が重い口を開く。
「ルウカスよ、わしはお前にカーラの討伐をも命じたはずだ。だが、お前は奴を逃してしまった・・」
「そ、それに関しては大変申し訳なく思っております。ただ、あの時は姫様の身の安全に気を取られ・・」
焦り、額に脂汗を浮かべ言い訳をするルウカス。
「まあよい。レイミもこうして無事戻って来たことであるし。レイミよ、お前の頼みは聞いてやろう。あの娘たちは城の使用人として使えばよい」
「ありがとうございます、お父様」
恐縮し頭を下げるレイミ。マノンも同様に下げる。ルウカスは・・内心王とレイミの心象を良くした、と思いほくそ笑んでいるのだろうか。
「それにしてもだ・・」
王が呟く。
「カーラ、奴も愚かな女よ。わしの元におれば互いに得する関係だったものを」




