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血の祝祭・鬼女と半妖 6

丘を降りようとしたミメント・モーライだが何者かが近づいて来る気配を察し、足を止めた。それも一人だけでなく数人のグループのようだ。彼らの会話の声が聞こえた。

「姫様がこの近辺に来ているというのは間違いないのか? 」「しかし、よりによってあの悪名高いクレイドフルの居城の近くとは・・」

 彼女の存在に気が付いたのか、男が二人ほど向かってきた。

「おい、そこの女」

「あら、いきなり無礼な殿方ですね。口の利き方が成ってませんことよ」

 ムッとするミメント。

 すると、もう一人の男が先の男を叱りつけた。彼の方が上の立場なのであろう。

「バカ者、他の国では態度に気を付けろと言っただろう」

「ははっ申し訳ございません、ルウカス様」

「失礼した、ご婦人。無礼をお許しいただきたい」

 そう彼らはルウカスの一行。レイミを追ってとうとうここまで来たのである。

「(? はて、この者どこかで見た気が・・)つかぬ事をお聞きするが、ここいらで17位の女子を見かけなかったかですかな? ちなみに銀髪の女らが同行しておる」

「(そういえばカーラの同行者にそのくらいの子が居ましたね。この方々、その子を探している? )その銀髪の女というのは悪名高きカーラ・エンジェルウィッチの事でしょうか? 確かに彼女と共に居ましたわよ」

「!!そなた、カーラに会ったのか? 」

 驚くルウカス。

「恐らくカーラはそこのクレイドフルと何やらひと悶着起こしたに違いありませんね。貴方もクレイドフルの噂は聞いているはず。つまり貴方の捜しているその少女は・・・」

「分かった、皆まで言わんでよい。者ども、下の城に乗り込むぞ」

 ミメントの言葉を遮り、行動を開始するルウカス一行。

「あらあら、そんなに焦っていきり立っていてはあらぬ失敗をいたしますわよ。まあ、結構いい男だし、手伝って差し上げましょうかね」

 滑るような足取りでミメントも彼らの後を追い、クレイドフルの城に乗り込んでいく。

 

 城の庭はまさに阿鼻叫喚ともいえる光景が広がっていた。そこかしこにカーラとマノンが斃した覆面付けた賊どもの屍が転がっているのだった。

「これは全部カーラがやったのか? というよりこんな真似できる者は奴以外におらぬか・・」

「むっ!?」

 何としたことであろうか。転がっていた屍がずりずりと移動し一ヶ所に集まり出したではないか。そして、合体し融合し、見るも悍ましい物体へと化していく。それだけならまだしもそいつが動き出し、一行に襲い掛かって来るのであった。

「う、うわーっ! 」

「何だこいつは!? 」

 動揺し、恐怖するルウカスの兵たち。

「ええい、うろたえるな、お前ら。それでも栄光あるモルタヘイドの兵か! 」

 檄を飛ばすルウカスではあるが、彼自身もやはり内心恐怖を感じているのであろうことが何となく見て取れる。それを敏感に察知したか、ミメント・モーライ、前にしゃしゃり出る。

「あらまあ、これはまた剣呑なモノが出てきてしまいましたわね。でもこいつは見てくれだけの代物ですからそう恐れることはありません」「ここはわたくしが始末しますのでお下がり下さいな」

 そして何やらぶつぶつと呪文を唱えたかと思ったら、眼前に炎の壁が出現し、それが屍の塊りに襲い掛かる。一瞬のうちに燃え崩れ落ち塵と化す屍。

「灰は灰と化し、塵は塵となる・・・それにしてもこんな物を用意できる程強力な魔力を得ていたのでしょうか? クレイドフル・・」

 何も無かったが如くすたすたと歩みゆくミメント。

「おおーっ! 」

「すげーぜ」

 驚き喜ぶ兵たちと裏腹に複雑な表情のルウカス。

「あの女、魔法使いか・・? 恐ろしいばかりの威力だ・・そうだ、(思い出したッ、そいつは射干玉(ぬばたま)の魔女・ミメント・モーライだ! )」

  

「捕えられていた子らは全員助けたわ。・・と言っても十数人だけれど・・」

「衰弱していた方には取り合えず回復術を掛けておきました」

 レイミとフイリンが救い出した生存者を連れてカーラの元に戻って来た。

「そうか。ご苦労さんだったな」

 そして少女たちの方に向かい、例のブレスレットを取り出して見せ、

「これに見覚えのある者は居ないか? 」

 彼女らは、はた目にも憔悴しきっているのが見て取れる。やっと解放されたのにも実感がわかないのであろう。

「みんな、もう安心だからね。悪い奴はこのお姉さんがやっつけてくれたから」

 ようやく安心しつつあるのか、我を取り戻し始めた者が出始めた。しかし、そのブレスレットは誰も知らないようであった。

「・・・」

 黙って懐にしまい込むカーラ。そうこうするうちに何人かが礼をのべつつ、城から出ていく。それでも半数がその場に残っている。

「どうしたのですか? 家に帰らないのですか? 」

 フイリンの問いかけに対し、若干の沈黙の後ぽつりぽつりと話出す。

「・・実は・・私、貧しさのあまり親に売られてここに連れてこられたのです・・多分ここに残っている子は皆そうかと・・」「ですので帰る場所などありません・・」

 カーラ、深く溜息つきつつ、

「何というか・・闇の深い話だな・・」

「何とかしてあげられないかな? 」

 レイミがぽつりと呟く。

「お前がこいつら皆を養うとでも言うのか? できもしない事は軽々しく言わん方がいい」

「別にそんなつもりは・・ただ・・」

「まあまあ」

 たしなめるマノン。すると、どやどやと部屋になだれ込んで来た者たちが居る。言うまでもなく先程やって来たルウカスの一行とミメント・モーライだ。

「!!」

「!!」

 一瞬互いに驚く一同。無理もない。

「お、お前は!?」

「ルウカス!?貴方どうして? 」

「貴方は確か!?なぜここに来るのです? 」

「姫様! ご無事の様で何よりです。それにしてもこの様相は・・? 」

「クレイドフルはどうなりました? 」

「・・・」

 一瞬収拾が着かないことになってしまっている。

「姫様、探しましたぞ。クレイドフルの城に近づいたと聞いて心配でなりませんでしたがそれは杞憂に終わったようで・・」

 レイミの元に近寄り、言葉を述べるルウカス。その言葉に偽りはないのであろうが・・。

「前に言ったはずよ。私はもう城に戻るつもりはないと」

「なあ、ルウカスよ、お前の目的はこのレイミ自身だろう? 上手く誑し込んで逆玉に乗って、あわよくばモルタヘイド王家の後継者となりたい、違うか? 」

「なっ!?何を抜かすか! 俺はそのような・・」

 おおいに狼狽えるルウカス。よもや図星だったのか? 息を飲むだけの他の面子。

(あらあら、これは楽しい見ものが見れますね)

 内心面白がりほくそ笑むミメント・モーライ。

(おっと、こんな事している暇はありません、アレを見つけないと・・)

 密かに場を外そうとする。それを目ざとく見つけたのはフイリン。

(あの人、何するつもりだろう? )


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