血の祝祭・鬼女と半妖 5
対峙するカーラとクレイドフル。両者の間には何物も入り込めぬ異様なオーラが立ち込めているようだ。
「貴様だけは許せん! 滅ぼす」
カーラの腕から、"気"を具現化させた剣が伸びる。
「ふん、『悪の華』『地獄の娼婦』『白銀の女帝』などと言われた貴様が随分と腑抜けた物よのお。今の貴様など容易に始末できそうだわ」
裂けた口を歪ませニタニタ笑うクレイドフル。
「そうか? お前に対してなら存分に残虐になれるぞ、私」
負けじとにたぁ、と笑うカーラ。次の瞬間、間髪入れず振るわれる気剣。クレイドフルの片腕を斬り落とした。
「さて、お次はどこぶった斬ってやろうか? ・・って?!」
何とクレイドフル、斬られた腕が再生しているではないか。
(こいつ・・再生能力も得ているのか? しかも私のよりも早い・・)
「貴様・・、この私に傷を負わすとは・・。許さぬ! 」
側の壁に掛けてあった奇怪な形状の刃をした剣を取り、斬りかかって来るクレイドフル。余裕で身をかわすカーラ。
「ケッ、てめーが傷物にされるのは嫌だってか? 最低だな」「下手な剣技だ。こんなので私を殺る気なのか? お前」
しかし、その剣、何と刃が変形し、かわしたカーラに向かい襲い来る。そう、まるでその剣自体が意識でもあるかのように。
「?!うっ!?何だこれは? 」
「くっくっく・・この邪剣ボルドルワーは私の秘術により思うがままに動かせるのよ。こいつから逃れることはできぬ! 」
「ふん、実力の無い奴に限って小細工を弄したがるな」
何とか反撃の機会を狙おうとするが、かわし続けるのが精いっぱいの状態である。
「何しろこの邪剣には処女の生き血をたっぷりと吸わせて強化してあるからなあ、魔力は極限まで高まっておるのよ、フハハ」
すると何としたことか、カーラ、その邪剣の刀身を素手で掴んだではないか? 当然の如く、手からは激しく出血している。
「貴様何を考えておる?!敵わぬと悟り気が触れたか? 」
さすがにクレイドフルも驚いたようだ。
「処女の血で強化したというのなら私の血でその効果を消し去ったる! 」
いつもの如く不敵に笑い返すカーラ。確信があるのだろうか?
「何を馬鹿なことを! 」
「ははっ、非処女で半妖の穢れまくった血だぞ、存分に味わえ! 」
思い切り手に力を籠める。そして、脆くもまるで湿気た煎餅のごとく軟化し崩れ行く邪剣ボルドルワー。
「ぐっ・・」
さっさと残った剣の柄を投げ捨てたかと思えば、いきなり後方に飛びのくクレイドフル。カーラの次の攻撃を恐れたのか? いや・・。
「こうなったなら私の真の能力を出さねばなるまい」
みるみるうちに変貌するクレイドフル。四つん這いになったと思ったら手足が伸び、爪も鍵爪へと変化していく。髪は逆立ち、口は益々裂け、歯は鋭く尖り、目は爛々と光っている。
さすがのカーラも若干引いたようである。
「ウギョゴゲーーーッ! 」
そして言葉なのかどうなのか分からぬ叫び声を上げ襲い掛かって来るのだった。
「・・こいつ、マジに人間やめているのか・・」
気弾を放つカーラ。奴はそれを避け、壁や天井をもわしわしと這いまわっている。見るも奇怪で悍ましい姿である。
「げほっ! 」
いきなり口から何かを吐きかけて来た。かろうじて避けるも飛沫の一部が飛んできて付着してしまったようだ。
「うわぁ、汚っ! あちっ! 」
しかも、付着したそれは皮膚を焼いたようだ。強力な酸なのか、まともに喰らおうものなら大ダメージとなるところだ。
(半端に斬ったところですぐ再生してしまう。ならば再生不可能なくらいにぶち壊せばいい・・)
「ゲェーーーッ! 」
今度は鋭い爪で引っ掻きにくる。さらに噛みつき掛かる。何だか段々攻撃方法が原始的になってくるようだ・・。
一方のカーラ、まだ反撃せず攻撃を避け、かわしている。
「避けるだけで精一杯か、半妖のクズめが。所詮貴様はその程度でしかなかったようだな」「今度こそ無様に死ね、カーラ! 」
天井より一気に降り襲うクレイドフル。
が。
カーラ、身体に気を纏いそれを手先に集中させ、上方に一気に放出する。重力に従い落下するクレイドフルにそれを避ける術などない。もろに喰らい粉砕されるクレイドフルの肉体であった。
「馬鹿め、ただ単に避けているだけだとでも思っていたのか? その分"気"力を練っていたんだよ」
そして部屋中に飛び散りまくったかつてクレイドフルだった物に向かい
「いい姿になったな、クレイドフル」
と。
半分ひしゃげたクレイドフルの頭部から脚が生え、
「おのれぇぇぇぇ、カーラぁ! 」
カーラの方に向かい這いずって来るではないか。
「あああっ、何て往生際の悪い奴なんだ、糞うざいったらありゃしない! 」
いい加減、うんざりしたようにカーラ、さっさとダメ押しの気弾を食らわせ今度こそ完璧に頭部を塵と化す。
その頃、外の世界では・・。
例の城を見下ろす丘の上、そこに一人の人物が立っていた。その人物には、見覚えがある。褐色の艶やかな肌、腰ほどにもある黒く長い髪、やや垂れ気味の金色の瞳を持つ目、そう、以前にカーラと戦い破れた、射干玉の魔女・ミメント・モーライではないか。
件の城は、あちこち火の手が上がっている。カーラらが後始末をしているのであろうか。
「あら、まあ、どなたの所業か分かりませんが随分と派手にやってくれているようですね。わたくしが手を煩わせる必要が無くなったのは幸いと言うべきか・・、新たに開発した魔法を試す機会が伸びたのは残念ですが・・」
何かが飛来してきた。彼女の使い魔、マルコリンだ。
「クレイドルフルハシンダ。ヤッタノハカーラダ。カーラ・エンジェルウィッチ・・」
一瞬ぴくりと顔を引きつらせるミメント・モーライ。
「カーラが!?うふふ、ぜひ戦いをこの目で見たかったものですね。つくづく残念です・・」
心底残念そうなミメントであった。だが。
「今のカーラなら戦いで消耗しているはず。これはまたとないチャンスですわ、ふふふふふっ」




