現実という名の壁を越えろ 2
営業開始となった店内。扉が開きさっそく客が入って来る。
「いらっしゃいませー」
テーブルに案内する先輩。その後レイミに向かい、
「さあ、あのお客さんから注文取ってきてみて」
「は、はい・・」
緊張しまくりで客に向かう。
「大丈夫でしょうか? レイミさん・・」
「ったく、ガラにもなく」
とりあえず見守るカーラとフイリンであるが。
レイミは男性客二人組が座るテーブルに近づく。一人は小太りでハゲていてもう一人はがっしりとした体格で角刈りで髭を蓄えている。
「ご、ご注文は・・ええとお決まりでしょうか? 」
男二人、無言のままじろりとレイミを見つめる。
一瞬びびるレイミだが気を取り直してもう一度、
「あのーご注文は・・? 」
次の瞬間ハゲの方の男がいきなりレイミのスカートの下から手を突っ込み、尻を撫でまわしたのであった。
「ふひひ、ご注文はお・ま・えだよーん」
実に気色の悪い下卑た声で囁く。当然の如く驚き怒りも覚えるレイミであるがここはぐっと堪えて、精一杯の作り笑いで、
「そういう事は・・お止めくださいな、ここはそういうお店ではありませんから」
すると、男ども二人「くっくっくっ」と笑いだすではないか。
「? 」
「何勘違いしているんだよねーちゃん、ここはそういう店なんだがなあ」
「おめーも分かっていて働いているんだろ? 」
「そ、そんな・・そんな事聞いてないし・・」
そんな様子を遠くから見たフイリン、
「あのー、先輩さん・・もしかしてこのお店、いかがわしいお店だったりするのですか? 」
「え? あなたたち分かっていて来たんじゃないの? 」
「くをら! お前、何じたばたしてるんだ、素直にお客様の言う事聞かんかい! 」
騒ぎを聞きつけたのか店長がしゃしゃり出てきた。
調子こいて今度は服の中にまで手を突っ込み、さらにレイミの手を取り自分の股間に持ってこさせる。
(ううっ、なぜこんなことに・・)屈辱と悔しさで思わず涙が出てきてしまうレイミ。
この野郎、今度は胸まで弄って来た。
「ふむ、生娘の成長しきっていない乳は絶妙だわ、ふへへへへへ」
だがしかし、彼のその喜びは次の瞬間奈落へと落とされるのであった・・。
「ごめんなさーい、手が滑っちゃいましたぁーー! 」
声が聞こえたかと思う間もなくいきなり酒瓶が彼の脳天にヒットした。酒と血と瓶の破片があたりに飛び散る。
「カーラ! 」歓喜するレイミ。
「あー今度は足が滑ったわー! 」
今度はもう一人の男の側頭部にハイキックをかます。床に無様に崩れ落ちている二人。そいつを踏みつけつつカーラ高らかに、
「聞けや、ボケども。レイミの乳や〇〇〇を弄っていいのは私だけだッ! 」
「・・・」
「おっお前はーーっ! 何てことしてくれるんだ!?」
目を剥きまくり、鼻の穴も開ききらせ顔全体に冷汗を浮かび上がらせつつ激怒する店長。
「この方々はここブラーガ王国の高官であらせられるのだぞ」
「ええっ?!あんなお下品極まりない人たちが国の高官? 」
思わず絶句するフイリン。当然である。
「お前ら、こんな真似してただで済むと思っているのか? 下手すれば死刑は免れんぞ~、だが助かる方法はある。このわしが口添えしてやれば少しは罪がかるくなるかもしれんぞ。そうしてもらいたかったら素直にわしの言う事聞くことだなあ。まずは手始めにその・・・」
「ふっ・・ふふふふふ」
いきなり笑いだすカーラ。周りの者たちは皆「? 」となる。
「何が可笑しい? 気でも狂ったか? 」
カーラ、レイミの肩抱き抱えつつ、ビッと店長を指さしこう言い放つ。
「ただで済まないのはお前らの方だ。なぜならこのお方はモルタヘイド王国の姫君、レイミ・キルミスターその人なるぞ! 」
「!? 」
一同絶句する。むろん、レイミやフイリンも含めて。
「何を言う事事欠いて出鱈目抜かすんだ、ハッタリかますのならもう少し本当らしい事をだな・・」
「レイミ、例のあれ出して」
レイミに囁く。
「あれって何? 」
「ほら、あの何とかカード」
レイミ、使用停止を食らい使えなくなりすっかり役立たずとなってしまった『王家のスペシャルセレブリティゴールドカード』を取り出しカーラに渡す。
それを受け取ったカーラ、店長の眼前に見せつける。
店長、当初は半信半疑であったが、じっくり見据えた末、
「こ、これは紛れもなく本物の・・王族のみしか所有を許されないという・・。あ、あうっ!?本物のレイミ姫だとしてなぜこのような所に? 」
うろたえまくる店長。そんな彼に対し優位に立ったことを見せつけるが如く
「姫様はお忍びで周辺の国々の文化や風俗を学び研究するために視察したりしておられるのだ。このような店で飛び込みで働いてみるのも研修の一環なのだ。それよりお前、姫様にこんな真似しておいてただで済むとは思ってないだろうなぁ? 」
ねちねちと攻めるカーラ。
「父上のホークウィンド・キルミスター王は怖えぞ~、隣のジュダスプーリ王国が制圧されたの知っているだろう? それはな、あろうことかその国に姫様を誘拐しようと企んだ馬鹿が居たので、怒り狂った王様に攻め滅ぼされたのだ。ここブラーガも風前の灯火だな」
店長ガタガタと震えだす。ただでさえ脂性ぎみの顔面が汗まみれと化している。事の重大さをようやくわかったようだ。隣の高官どもをチラ見するが、奴らまだ床にぶっ倒れている。そして思わず土下座の状態となってしまう。
「姫様、貴方からも何か言ってやって下さい」
話振られたレイミ、どうするのか。
「・・この私が受けた屈辱と侮辱、貴方方の首を差し出す程度では償いきれませんね。この国もジュダスプーリ同様我がモルタヘイド王国に制圧占領されることになるでしょう」
普段ならカーラのこんな話に乗ったりしないレイミであるが余程許せないのであろう、ノリノリで話を合わせている。
「あの子がモルダヘイドの姫って・・本当なの? 」
隣のフイリンに尋ねる先輩店員。
「え、ええ、本当です・・」
二人に若干引きつつも、答える。
「とは言え・・」
話を続けるカーラ。
「我々とて正直無駄な流血は避けたい。お前も戦争の元凶の汚名着せられるのは嫌だろう? そこでだ、示談といこうじゃないか? 」
「そ、それで許していただけるんで? 」
店長、さすがに少しほっとしたようだ。
「うむ、応じさえすればこの件に関して今後一切不問とする。ねえ姫様? 」
「うっ!? そ、そうね、正直釈然としない所もあるけど、問題長引かせてもしょうがないし」
「で、如何ほどの金額を・・」
「そ、そんな!?もう少しその、手心を・・」
表示された金額が不満と見え、抗議する店長だが。
「あ、そう。拒否すると。それが何意味するか分かっているんでしょうねぇ? 大体この店、しこたま儲かって居そうだしその程度の金額問題なさそうだと思うけど、ねえ姫様? 」
「ん!? そ、そうね、私の怒りと悲しみを癒すにはそれでも足りないくらいだけどね」
店長に攻寄る二人。たじろぐ店長。
「わ、わかりました。おっしゃる通りにいたします・・」
腹の中でにやりとするカーラとレイミ。
(いいんでしょうか・・)
何も言えないフイリンであった。




