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死か栄光か・見知らぬ明日に向かい走り続ける 6

「ご、ごめんなさい、変な事してしまったみたいで」

「幾ら正気を失いかけていたとはいえ、あまりにも恥ずかしい真似してしまって・・」

 しばらく時間がたち、ようやく正気に戻ったレイミとフイリン、マノンに対し頭を下げている。

「気にすることはない。とにかく無事でよかった」

 二人に対し、このような優しい目つきできたのか、とカーラでなくても思わず突っ込みたくなるくらいの目をしているマノンだ。

「ちっ、意外と早く回復してしまってなあ・・もっとあのままだったら面白かったのに・・」

 本気で残念そうな表情でカーラが言う。

 マノン、カーラを無言でどつく。

 

「あーいい湯だ、あの気色悪いぬらぬらをようやく洗い流せる」

 一行は温泉の湯舟に浸かっていた。怪物退治に成功したので約束通り村の施設を自由に使用できるようになったのである。

「温泉あったのは有難いわね、これであの忌々しい粘液も浄化できそうだし」

 いかにも気持ちよさそうに目を閉じているレイミ。

 一方、カーラはフイリンの胸元を凝視している。

「ううむ。今までよく見た事なかったが、フイリンお前レイミより胸あるんじゃないか? 」

「ち、ちょっと、何言っているんですか? 恥ずかしいから止してください。えっちなのはいけないです! 」

 顔を赤らめ、胸を手で隠そうとするフイリン。

「ふっふっふ、では確かめてみようね♡」

「ああっ・・」

「はあ・・何やってんだか・・」

 レイミ、半ば呆れつつ少し離れたところに居るマノンに近寄る。

「こんな所で何だけど改めてお礼言わせてもらうわ、協力してくれてありがとう」

「いや・・まあ成り行きで仕方なくだ・・、それよりレイミ姫だっけ、この前は・・その・・」

 言葉を詰まらせるマノン。彼女なりに先の戦いでの行為を気にしているのであろう。

「いいよ、それはもう。正直、あの時は死を覚悟したけれど・・。でも貴方、根は悪い人じゃなさそうだし、許してあげる」

 マノンの手を取るレイミ。そしてその手を握り締める。

(女の人と思えない程ごつい手だなあ、やっぱりああいう大きな剣振り回したりしているからかな・・) 

「それにしても・・あの召喚者の人は何だったんだろうな? 色々聞き出す前に逃げられちゃったし・・」

「う、うん、それについてはこれは私の考えなのだが」

 あわて気味に話し始めるマノン。

「この世界には意図的に混乱を作り出そうとする勢力が居たりする」「そのためにあちこちで事件を起こしたりしているのだ」

「何のためにそんな事を? 」

「世の中が乱れれば乱れる程人心が荒廃し、闇や混沌を望む者が活動しやすくなる。それを目論んでいる奴らが存在しているのだ」

 レイミ、とりあえず黙って聞いている。

「奴らも一枚岩ではない。今の世の中に不満があり変えたいと思っている者、己が権力を持つ側になりたいと思っている者、単に利益を得たいだけの者・・」

「平和・平穏な世界などつまらない、暴力沙汰やら争いごとが多い方が刺激があって楽しい、そう思っている奴らも大勢居るってことだ。なあ、マノン、お前もその口じゃないのか? 」

 いつの間にか側に来ていたカーラ。

「迷惑な話ですね。無力な一般の人たちにしてみれば平和な世界が一番でしょうに・・」

 フイリンも来た。

「確かに私は今まで傭兵隊をやっていた以上、争い事あった方が仕事になる。それゆえそのような輩と組んだこともあったが・・」

「ま、別に私はそんな奴らが何しようと知ったこっちゃない、己に火の粉が降りかからない限りはな」

 そう言いつつ、湯にどっぷりと浸かるカーラであった。

 

 翌朝、村を旅立つ一行。何事もなく走りゆく魔動車。ただ以前と違うのは、乗っている人物が一人増えている、ということだ。

「何でお前がしれっと一緒に居るんだ? 」

 ハンドル握りつつ問うカーラ。

「いいじゃないの、人数多い方が楽しいよ」

 助け船をだすレイミ。

「ああそうか、また私のテクを味わいたいのだな? 」

 マノン、憮然として、

「この2人に口説かれたからだ。子供の頼みは断れん」

(・・子供、ですか・・)「そうだ、マノンさんお菓子いかがです? 」

 フイリン、村で購入した菓子の入れ物を差し出す。穀物の粉をこね、形を整え焼き上げた菓子だ。中には果実を煮て甘く味付けしたペーストが入っている。

「私は血となり肉となるもの以外口にしない主義なのだが・・」

「そんな事言わずに。美味しいですよ」

 一つを手に取り、口に運ぶ。

「まあ、たまにはいいんじゃないかな・・」 

 そんな微笑ましい光景とは裏腹に、何やら不穏な物が近づきつつあることに誰も気付かなかった。上空から彼女ら一行の乗る車を監視している者、それは・・。眼球に翼を生やしたような異形の生物、そう、かの射干玉(ぬばたま)の魔女・ミメント・モーライの使役する使い魔、マルコリンである。 


「かの、カーラ・エンジェルウィッチにモルタヘイド王国の姫レイミですか・・あら、見知った顔が見えますね・・、マノン、なぜ貴方がそこに? 」

 何処かの街に新たに構えたのであろう、彼女のアジトの中、モニターの役割をしている水晶球を見つめるミメント。

「まさか、カーラに誑し込まれでもしましたか? 、マノン・ウオウ。・・・いずれにせよ、敵に回るのであれば容赦しませんけれどね・・」

 そして椅子より立ち上がり、髪をかき上げ腰を伸ばしつつ、呟く。

「それにしても最近余計な真似をする有象無象が増えてきましたね・・。我らだけでなく魔の者たちも活動を開始したと思われますが・・さて、どうしましょうか? 」


 街道に立ててある標識は「ここよりブラーガ国」と表示されていた。国境を超えたのだ。

「もうしばらく走ればこの国最初の街があるはずだが・・」

 ここしばらくの間、山また山、まわりは生い茂った木々ばかり、という単調な景色が続いている。

「あっ街が見えてきましたよ」

 フイリンが指さす方向にようやく人家の群れらしきものが見えてきた。もう数分もあれば到達するであろう。

「なるべく早くモルタヘイドから遠ざかりたいけれど・・」

 不安そうにレイミは言うが、

「それなら色々物資を補給しないとな」

 街中に入り、商店を目指すことにする。

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