炎の力・強襲!紅き独眼 5
「させるか! 」
気剣を出したのとは逆の腕先に気を纏い、大剣を受け止める。
大音響を立て、気にぶつかる大剣。次の瞬間、気が消え、剣がカーラの体に袈裟懸けにヒットする。
「うっ!?」
弾かれ、背後の岩に背中から激突する。思わず吐血してしまう程の衝撃だ。
(ちっ、"気"を余計に使い過ぎたか・・、ダメージの蓄積も影響しているな・・)
油断なく剣を携え、近寄って来るマノン。その表情は勝利を確信しているかのようだ。
「白銀の女帝・カーラ・エンジェルウィッチも最早これまでのようだな」
「ふっ、やめておけ、お前に私を殺すことなどできはしない。それでもやるつもりなら残った方の目も失くすだけじゃ済まないぞ」
口元から血を流しつつ、上目遣いに睨みつけながらなおも不敵に振る舞う。
「この期に及んでハッタリを・・」「死ねい! 」
マノンがとどめ刺すべく剣を頭上に振り上げた刹那、カーラ、口に含んでいた血をぶわっと顔面目掛けて吹き付けた!
「うわっ!?」
いきなりの目潰しにも等しい攻撃にたじろぐマノン。隙ありとばかりに渾身の気力を込め、剣を打ち砕きにかかる。まるでガラスの如く砕ける、大剣・ラウダーザンヘル。
そしてカーラ、マノンの背後に回り込み、羽交い締めにする。
「逆転したな、筋肉バカ」
「くっ、素手での戦いなら私の方に分がある、お前のその細腕で私とやり合うなど・・!?何をする!?」
何とカーラ、マノンの服の脇から手を突っ込み、胸を触り出したではないか!
「ふむ、筋肉と脂肪分が程よくバランス取れてなかなか良い揉み心地となっている」「なかなか良いブツを持っているじゃないか」
薄笑いを浮かべ、攻め続ける。
「ふん、私はとうに女を捨てている。そんな破廉恥な真似しても無駄だ」
「お前みたいなのは必ずそう言う。しかし、女であることを捨てきれず未練を残しているんだよな」「本当に女を捨てたいのなら、その胸に付いている物も邪魔だろう? 私が取り去ってやろうか? 」
「うっ・・うぐぐ・・」
図星突かれたか、言葉を失うマノン。
「本当に女を捨てたのなら、この野郎共の前でひん剥かれても平気だよなー? 」
マノンの上着をビリリと剥ぎ取る。あらわになる乳房。
「見るなっ! お前ら見るんじゃない! 」
「おっ・・おお・・」
部下の傭兵共もどう反応すべきか困惑しているようだ。
「さあて、もっと楽しい事しちゃおうかー♡」
「くっ、糞がっ、いっそ殺せ・・」
マノンの視力が回復してきた。どうやら悔し涙が血を洗い流したか? 彼女の目に入ったのは只呆然と佇んでいる部下たち。生死を共にしてきたはずの部下たち。
「おっ、入りました、『くっころ』。安心しろ、いたぶりまくってから殺してやるから」
最早、やりたい放題である。これでは完全に悪役ではないのか? いや元からか。
舌がうなじを這い、耳を攻め、そしてそのしなやかな指が下腹部を弄っていく。そして、入って行く先は・・・。
「んん~、どうした? もう濡れてるじゃないか? 見掛けに寄らず感じやすいみたいだな? 」
「んっ、うっ・・ぅっ・・」
必死に声を押し殺しているマノン。
「いいんだよ、気持ちよかったら遠慮なく声出して」
執拗に指を動かし、キスで口を塞ぎにかかる。
「うっ・・ああっ! 」
がっくりと崩れ落ち、膝をつくマノン。はあはあと荒い息遣いが聞こえる。
そして、残った傭兵どもをギロリと睨みつけるカーラ。手をくきくきと鳴らしつつ、
「さて、殲滅戦といこうか、お前ら死ぬ前にいい物見れてよかったな? 」
「う、うわ、隊長がこうもあっさりと・・」「た、たすけくれい! 」
一斉に逃亡していく傭兵たちであった。
「あーあ、みんな逃げてったよ、お前人望無いな、うけけ・・」
四つん這いになっているマノンに追い打ちをかける。
「それはそれとして・・」
ここでようやくレイミらの方に目を向けるカーラ。
「レイミ、こいつの止めはお前が刺してやれ」
いつの間に拾ったのか、レイミが使用していた剣を投げて地面に刺す。
「え!?ええっ!?」
いきなり話振られて戸惑うレイミ。
「お前、『その手を血で汚す覚悟はある』って言ったよな? 」
「そりゃ、言ったけれど・・でもこの人もう抵抗する力もないみたいだし・・ほっといてもいいんじゃないかな、と・・」
「あのなあ、ここで見逃したりすれば後で逆襲しに来るぞ。こいつにされた行為を思い出せ。憎しみを怒りに変えろ! 」
煽るカーラ。
「レイミさん・・」
心配そうに見つめるフイリン。
レイミ、刺さった剣を引き抜き、ずりずりと引きずりながらマノンの方に近づいていく。マノンは覚悟決めたのか、諦め、自暴自棄となったのか、身体を横たえている。
「最早、足掻いても仕方あるまい。このような辱しめを受けて生きていても恥を晒すだけだ。レイミ姫、その手で止め刺すがいい、そして私の流した血をお前の糧とするがよい・・」
レイミ、マノンを見下ろし、ごくりと喉を鳴らす。そして、剣を上げようとしつつ、
「あー何か腕が痛いわー、これは骨折れているなあ、身体もあちこちあんたのせいで痛いわー、これじゃ力出なくて止め刺せないわー・・」
再び戻っていくレイミ。
ほっとした表情のフイリン。そしてマノンの元に近寄り、自分の身に付けていたケープを掛けてやる。
「あの、余計な事かもしれないけど、そのままではあんまりだし、どうぞ」
「・・こいつらは・・まあ、いいわ・・」「どうやらダメージも回復してきたし今回は生かしておいてやる、ありがたく思え」
去って行く三人。マノンは屈辱と悔しさと悲しさが入り混じって何とも言えない気持ちとなっている。
(必ず借りは返してやる・・)
王都のミメント・モーライの隠れ家。
「どうやらこの国もおしまいのようですね」「そろそろここも潮時ですか・・」
カーテン越しに、窓の外を覗いている。その外の道路をモルタヘイドの軍が王城目指し、進軍していく。奥の方に引き込もうとする彼女の元に、何やら怪しい生物が飛来してきた。巨大な眼球の両脇に蝙蝠のような翼を生やし、かぎ爪を持った手だか足だかわからない器官が下部に生えている。
「あら、お帰り、マルコリン」
どうやら、彼女の使役する使い魔であるようだ。
「マノンガ マケタ カーラニヤラレタ」
甲高く耳障りな声で報告している。
「何ですって!?マノン程の者でも? 」「それで彼女はどうなったの? 殺されたの? 」
普段冷静を装っているぽいミメントだが、妙に動揺している。
「イヤ シンデハイナイ タダ シンシントモニカナリノダメージウケテル」
「(そう・・よかった・・)い、いや、大口叩いていた割に無様ですね。期待外れもいい所です。やはりここは私自身が出るしかないようですね」
ジュダスプーリ王城に突入しつつある、将・ルウカスとホークウィンド王率いる軍勢。
「陛下、スコトラビスは討ちましたが、もう一人の将官、グレプトンは一体何処に行ったのでしょうか? 」
「ふん、大方、恐怖に駆られて逃亡したのであろう、愚王たるロブハムホード王の部下などその程度だ」
部下の兵士らに連行され、引き出されたのは件のロブハムホード王。
「貴様~、キルミスターのぉぉお! 何のつもりだ? このような暴挙、許されると思っているのかぁ? 」
「ふん、そちらの方から我が国に狼藉働いておいて今更何を言うか! 」
「あれは部下が勝手にやらかした事だ、わしは何も知らんかった・・」
この期に及んで言い訳をするロブハムホード王である。
ホークウィンド王、ふん、と鼻で笑いつつ、
「それなら部下の行いを全く把握していなかったということで、いずれにせよ、一国を統治する王として失格もいい所ですな」「そなたに王たる資格など無い! 」
剣を振るい、ロブハムホードの首を一撃の元に撥ね飛ばすのであった。




