死か栄光か・見知らぬ明日に向かい走り続ける 1
戦勝に沸き立つモルタヘイド王国国内。だが、国民の熱狂とは裏腹に王城では・・。
「お父様、レイミは失望しました! 」「先の事件を口実にジュダスプーリに戦争仕掛けるなんて・・」
『ジュダスプーリ征伐戦役』(と、ホークウィンド王が勝手に名付けた)終結後、王城に帰還した王に向かいレイミが問いただす。
憮然とし、一瞥をくれながら返答する王。
「綺麗事ではこの生き馬の目を抜く戦乱の世ではやってはいけぬ。何事も機に乗じるのが得策なのだ。お前もいずれ理解するようになるであろう」「三日後に王国軍の戦勝パレードを行うことになった。当然お前も参加してもらう」
不満そうな表情で黙るレイミ。
「あーあ、可愛い娘に嫌われちゃったねえ、王様」
後から現れたカーラ、相変わらず茶化すような調子で薄ら笑いを浮かべている。
「カーラか、今回も大儀であった。敵の別動隊を退け、将の一人を打ち取った上に、またしても娘を守ってくれたようで」「何か望みの物があったら申してみよ」
茶化しには乗らない王であった。
「別にいいよ。あんたの娘さんの『初めて』をいただいたから。ふひひ」
彼女にしてみれば王をからかうつもりだったのであろう。しかし、王の反応は意外なものであった。
「そうか、娘が欲しかったのか? かまわんよ。その代わりだ、今後も我がモルタヘイド王国ため働いてもらおう」
この言葉にはさしものカーラも困惑した。
「前も言ったはずだが・・。私はお前の戦争に加担する気など無いと」
レイミは無言で走り去って行った。いつもなら何らかの口を利きそうなのだが。
(レイミ・・)心配になったのか、レイミを負うカーラ。
(何しているんだろう? 私は? ヤキが回ったか・・)
「あ、カーラさん、今レイミさんが自室の方に・・」
途中、出会ったフイリン。彼女もついて来る。
「入るぞ」
部屋の中にはベッドに突っ伏しているレイミ。どうやら声も立てず泣いているようである。
カーラ、ベッドの上に腰を下ろし、話しかける。
「どうやらお前の親父はお前を私に売ってもいい腹積もりらしい。・・・・ショックか? 」
まだ無言のまま突っ伏している、レイミ。
「お前はその父親の事どう思っていた? 聖人君子とでも思っていたか? あいつは所詮俗物だ。私は初めて会ったときから確信していた」
そっとレイミの頭に手を置く。微かな震えが伝わって来る。すると、レイミ、ぽつりと語り始めた。
「私は、貴方にならかまわない。このままならいずれは政略結婚でどこかの国の訳の分からない男に売られてしまうかもしれないから、それくらいなら・・。貴方は口は悪いし、品は無いし、えっちだし、性格も若干悪いし・・。でも、私のこと、何度も身を挺して助けてくれた・・、だからどうしても嫌いになんかなれない・・」
そして、がばっと起き上がり、いなや、
「お願い、カーラ、私を抱いて! 」
その眼差しはあくまで真剣そのものであった。ゆえにカーラもいつもの如く、軽口を叩ける雰囲気ではなかった。
「本気で言っているのか? レイミ・・? 」
さすがに驚き、目をみはるカーラ。
「私だってもう小娘じゃないから・・カーラ、貴方になら私の初めてをあげてもいい・・」
そして、完全に蚊帳の外となったフイリン、無言で立ち去る。
「もう一度聞く。悔いはないな? 」
レイミ、こくりと頷き、
「らしくないわよ、カーラ。普段の貴方なら有無を言わさず押し倒すでしょうに」
カーラ、レイミの肩を引き寄せ、口づけをかます。
今までにない熱烈なキス。
一瞬頭の中がぼーっとなるレイミ。そして次に来る物を期待するが。
意外にもカーラ、レイミをそのままそっとベッドに寝かしつけるのだった。
「・・ちょっ、何? まさかそれで終わる気なの? 馬鹿にしないでよ! 」
言うなりカーラの横面を張る。パシッ、と鋭い音が寝室に響く。
普段のカーラならば怒りのあまり殴り返すくらいはするのだろうが、今の彼女は妙に沈着であった。
「レイミ・・。気持ちは分かるが、お前のことが嫌いなわけじゃない。むしろ・・だからこそここで一線を越えてしまったら取り返しがつかないことになりそうで・・」
「だから、私は後悔なんかしないと・・! 」
無言でレイミを抱きしめるカーラ。
「本当、らしくないよな・・私・・」
レイミ、何となくカーラの思念が体の中に流れてくるような感じになった。
(この人、本気で私のことを・・だからこそ・・)
「分かったよ、カーラ。私もっと自分のことを大切にする。だからお願い。せめて今夜は一緒に居て・・」
奇しくも季節は夏が訪れたばかり。熱く長い夜が今始まる・・。




