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我が歩むは修羅の道・背後に広がるは死の荒野 5

 崩れ落ちた城の一角。おそらくこの場所がかつての栄華を誇っていた頃の中心部であったと思われる。しかし、瓦礫ばかりで往時を偲ばせるものは何一つ存在しない。

「うっ・・うーん・・」

 目覚めたのは先ほど拉致誘拐されたフイリン。夜の寒さと地面の固さゆえ、目覚めも早めであったと思われる。

(そうだ、私、いきなり変な男の人に・・)

「お目覚めの様だな、レイミ・キルミスター姫」

 はっ、として声の方角を見る。異様な巨体と筋肉質、スキンヘッドの男がそこに居た。バスオブンだ。

「安心するがよい、事が住んだら帰してやる。お前はカーラを誘い出す大事な釣り餌だ」「俺はエンバーゴと違い紳士的な男だ」

 フイリン、まだはっきりと目覚めきれない頭で思考する。

(もしかして私、レイミさんと間違えられて攫われたのでしょうか・・? )(だとしたら、彼女に成り済ましていた方が・・)

 幸いなことに手と足は拘束されているものの、口には別に何もされてはいない。そして何かを決意したのか、臆する様子もなくバスオブンに向かい、

「貴方が何者で何が目的か分かりませんが、モルダヘイドの姫である私にこの様な狼藉、ただでは済みませんよ!」

 自分でもなぜこのような言葉がすらすらと出て来るのか分からない。

 しかし、バスオブン、こちらを一瞥することも無く、

「言ったはずだ。お前はカーラを釣り出すエサだと。お前自身など別に興味など無い」「ただ、あいつ、エンバーゴはどうか分からんがな」

 全く表情を変えもせず、淡々と喋るバスオブンである。さしものフイリンも少々不気味に感じた。

(この人たちの目的はカーラさん? 賞金目的ならすでに手配は解除されているのに? なら一体なぜ? )(いずれにせよ、カーラさんが簡単にやられるはずなどない、でも・・)


 カーラは廃城の入り口に立っている。やはり崩れ落ちているが城塞の入り口であることが見て取れる。

「わざわざ特定の場所に人を呼びつけるということは、必ず罠を仕掛けてある、ということだ」「それもとびきりの剣呑なやつを」

「こうしていても始まらない・・」

 内部に足を踏み入れる。

 半妖であるカーラには通常の人間より夜目が効く。その並みの人間なら闇に紛れ見逃してしまうような周囲に張り巡らされた細い紐の数々・・。

「つくづく舐められたものだな・・」

 試しに一本の綱を引っ掛けてみる。ビュッ!と音を立て飛んでくる槍数本。

「よし! 」

 カーラ、意を決したように走り出す。切れる紐。飛び来る槍衾の数、数。竹槍植え付けた玉も落ちて来る。

 それらを避け、払い、駆ける。。囚われのフイリンの元へと。ただひたすらに。

「!?しまった!?」 

 油断したか? と思った時にはもう遅い。カーラの右足首に綱が絡んだ、と思ったら次の瞬間には宙吊りとなっていた。

「ケケケケケケ、引っかかったな~中々いい恰好だぜ、カーラ・エンジェルウィッチ! 」

 エンバーゴの声がしたが姿は見えない。その辺に隠れているのか?

「やい、お前は何者だ? 何が目的だ? フ・・いやレイミ姫は無事だろうな? 」

 ただでさえ逆さになっているのに、さらに頭に血が上って来るのが分かる。

「折角だから答えてやる。あるお方の命によりおめえを始末するためだ。あと、姫君は今ん所は無事だ。

ただし、おめえが大人しくしていればなぁ、ケケケ。」「バスオブンンンンン!!」

「おおおっっ!!」

 エンバーゴが呼ぶや否やバスオブンが姿を現した。奴は一本の鉄柱を抱えてきて地面に突き立てた。そして、その柱にはレイミと思われているフイリンが縛り付けられていたのである。

「フ・・いやレイミ! 」

「あ、ああカーラさん、助けに来てくださったのですね・・」

 感極まりはらはらと涙を流すフイリン。

 そして、闇の中から姿をようやく現したエンバーゴ。左の義手を鳴らしつつ、右手にしたナイフを彼女の胸元に突きつける。刃先が少し肌に食い込み、血がにじむ。

「聞けい! カーラ! いいか、指一本でも動かしてみろ、(こいつ)の命はねえぞ!!」

「ふっ、ふふふ・・」 

 どうしたことかいきなり笑いだすカーラ。

「? 何だ? いきなり? 気でも狂ったか!?」

 戸惑いを見せるエンバーゴだが。

「お前、馬鹿か? 私に人質など通用するとでも思ってるのか? レイミ姫(こいつ)がどうなろうと知ったこっちゃないわ」

「ふん、てめえこそそんなハッタリが通用する気でいるのか? 」

(チッ、やっぱだめか・・)内心舌打ちするカーラ。

「俺は慎重なタチでなあ、幾ら吊り下げられているとはいえ、うかつにおめえに近づいたら危なそうだからな、ここからヤらせてもらうぜ」

 そう言うとエンバーゴが取り出したのは大型の魔道銃だった。魔道銃とは魔力を凝縮した弾丸を撃ち出す武器である。従って別に魔法を使える者でなくても、魔法と同系統、同威力の能力を持ったと同じになる。

「へへっへへっ、念仏でも唱えてろ、カーラ! 」

 狙いを定め、引き金を引くエンバーゴ。

 ドゴォォォン!

 轟音とともに弾丸が飛び出し命中、カッッと、まるで昼になったかのような閃光をともなう爆発が起きた。

「いっ、いやーーーーーーーっ! 」 

 フイリンの絶叫が廃城跡に轟く。


 地に落ち、うつ伏せになったまま微動だにしないカーラ。

「おい、バスオブン、完全にくたばったかどうか様子見てこい」

「あ? もし生きていたらどうするのだ? 反撃してくる恐れがあるではないか? 俺を捨て石にするつもりか? 」

 ピクリと頭の皮膚を震わせ、明らかに憤まんやる方ないといった感じのバスオブンである。

 するとフイリン、何を思うか、

「私が行ってきましょうか? 縄を解いてくださいな」

「馬鹿抜かすんじゃねえ、まだ逃がすわけにいくか・・いや、そうだ! 」

 エンバーゴ、バスオブンに向かい、

「こいつを盾代わりとして俺も一緒に行く、それならいいだろ? 」「仮に奴が生きていたとして俺たちに手は出させねえ」

「ふむ、まあよかろう」

 エンバーゴ、フイリンの手足を縛っていた縄を切り、その背中にナイフを突きつけ、

「妙な気、起こすんじゃねえぞ」釘をさす。

 そして倒れているカーラに向かって歩き出す。


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