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我が歩むは修羅の道・背後に広がるは死の荒野 4

「フイリン、新しいお茶入ったよ」

 レイミ、ポットを手に持ち、フイリンを呼ぶ。

 ベランダへの扉は開けっぱなしで、カーテンだけが風に揺れている。

「フイリン? 何、かくれんぼでもしたいの? 」

 ベランダに出てみるレイミ。きょろきょろと目を動かすがフイリンは居ない。

「まさか、下に落ちたりはしていないよね? 」

 手すりから乗り出し、下を見てみる。星明りがあるとはいえ夜は暗い。が・・。

「!?何これ!?」

 見つけたのはエンバーゴが残していったロープだった。

「まさか・・・」

 彼女の心の臓の鼓動が早まるのを感じた。


 ベッドに横たわっている二人。情事を終えたとみえる。

 少し身を起こし、今までいたしていた相手に語り掛けるカーラ。

 「そういえばお前、彼氏いるんだろう? それなのにこんなに乱れて・・エッチだなぁ」

 まだ、ベッドに横たえ、起き上がることもできないでいる、彼女。さすがにドキリとする。

「な、なぜそれを・・? 」

 カーラ、起き上がり彼女を撫でつつ、

「この前たまたま見たんだけどね、お前城門の所の警備の兵隊とえらく親し気だったしな」「男から寝取るのは最高だわ、うひひひひ」

「さあて、今度は私のことを気持ちよくしてもらおうかなあ? 」

 ドドドド・・

 何やら部屋の外が騒がしいようだ。

「んん? 夜中だというのに何かうるさいなー、まあいいや・・」

 バタン!!大音量とともにいきなり部屋のドアが開いた。

「カーラ! 大変! フイリンが! 」

 入ってきたのはレイミ。ベッドの中の彼女に気付いたようだが、それ所ではない、といった体で、

「フイリンが攫われたの! 」

「何!?」

 さすがに驚愕するカーラであった。


 城内は騒然としていた。無理もない。警備の兵が殺害され、むざむざと賊の侵入を許してしまったのだから。

「一体何事が起きた? 明確に報告せよ! 」

 ホークウィンド王が広間に姿を見せた。夜とはいえまだ就寝には早い時間であるゆえ、自室で過ごしていたのであろう、私服姿のままであった。

「報告いたします! 城門の警備兵二名が何者かによって殺害されております」

 隊長ルウカスが王に報告する。

「両名とも鋭利な刃物とおぼしき物で数か所に渡って切断されております。抵抗の跡は全く見られませんでした。このような殺害方に思い当たるのは最早伝説と化しているニンジュツと・・」

「大変です! 城の庭園内でも犠牲が! こちらは男女数名ですがいずれも・・その・・何というか、鈍器のようなもので・・あの・・原型がほとんど・・」

 別の兵士が報告に上がる。

「フイリンが! フイリンが攫われたの! 」

 別方向からレイミが駆けてくる。後ろにはカーラの姿も。

「何だと!?なぜあの娘が? 」「賊の目的はあの娘だったというのか? 」

 訝しがるホークウィンド・キルミスター王。

 そこに、

「隊長! あっ陛下も・・。城門の詰め所にこのような物が! 」

 一人の兵が入ってきた。手には、そう、エンバーゴが残していった手紙が握られていた。

 手紙を開き、読み入るルウカス。そして、手紙を王に見せる。王、読み終えると、

「カーラ、お前当てだ・・」カーラに手渡した。

「? 」早速読むカーラ。レイミも覗き込んでいる。その文面は一体・・。


『カーラ・エンジェルウィッチよ、レイミ姫は我が手にある。返して欲しくばグレイソン廃城跡に一人で来い』


「つまりフイリンは私と間違われて攫われたってことなの? 」

 カーラ、手紙を二つに引きちぎる。

「どこの馬の骨だか知らんが舐めた真似しやがって、糞が! 」

 城外に向かって歩き出す、と、レイミが踏み出してくる。

「私も行きます! フイリンは私の身代わりになったようなものだから」

「なりませぬ、姫様! 」

 割って入ったのはルウカス隊長であった。

「軍隊長である私が参る。よろしいですかな? 陛下」

 カーラ、いかにも迷惑気な表情で

「奴の指名は私だ、お前は関係ない、すっこんでろ」

「奴には我が兵が殺されておる、捨ておくわけにはいかん」

「私がフイリンを助けたいから。ねえいいでしょ、お父様、カーラと一緒なら絶対に大丈夫だから! 」

 これでは収拾がつかない。

「わかった、お前たち皆で行くがいい。カーラよ、ルウカスよ、娘を頼んだぞ」

 ひどく疲労困憊した感じで、半ば投げやりぽく命じる王であるが。

(それにしても誰が何のために・・? もしやジュダスプーリ王国が絡んでいるのかもしれぬか・・? )


 魔動車を駆り、グレイソン廃城跡に向かう一行。一台にはカーラとレイミが、もう一台にはルウカスと数名の兵士が乗っている。本当なら一台で行くべき所なのだが、カーラが強引に自分とレイミとを別の車に分けたのだった。

 正直ルウカスは面白くなかった。(陛下は俺よりもあのカーラの方を頼りにしているのではないか? )という疑惑が頭から離れなかった。「舐めた真似しやがって・・断じて許さん・・! 」その呟きは部下の兵たちを惨殺した賊に向けたものであろうか?

(フイリンとかいう娘などどうでもいい、問題は・・カーラめが出しゃばり、姫様の|衛人(ナイト)気取りなのが)


 グレイソン廃城跡・・。そこはいかにも不気味な雰囲気の漂う場所であった。かつては豪勢な城であったであろうそれは今では崩れ落ちており、まさに昔の光今何処、といった風情である。ましてはこの夜中、幽霊でも出たとしてもおかしくはなさそうだ。

「何か怖そうな所ね・・」

 いつもの気丈さと打って変わって少し脅えが見えるレイミ。カーラ、レイミの肩抱きつつ、

「ここはかつてのグワイエットの乱において、反乱軍の侵攻を受け、城の住人全員が虐殺されたといういわく付きだ・・。何しろ一族郎党皆殺しとなって、後の時代になっても不気味な噂が絶えなかったので、再建されることもなくそのまま放置されているそうな」

「怖い、なんて言ってられない。なぜならフイリンの方がもっと怖い思いしているだろうから」

 レイミのフイリンを思う気持ちに嘘偽りがあろうはずがなかった。だが、

「レイミ、お前はここに居ろ。何しろ奴は『一人で来い』と抜かしていた。下手打つとフイリンがヤバいことになってしまう」

 カーラ単独で歩み出す。今回ばかりはフイリンの危機を言われるとレイミも納得するしかなかった。が、

「我らも行く、お前一人に任せられぬ! 」

 ルウカスと兵の一行がしゃしゃり出ようとしてくる。カーラ、露骨に顔しかめるのだが、

「お願い、ルウカス。ここはカーラの言う事聞いてあげて! 」

 叫ぶレイミ。

「しかし、幾ら姫様の頼みでもこれだけは・・」

 するとレイミ、何とも信じられぬ行動に! なんと跪き、深々と頭を下げたではないか!

「フイリンの・・命に係るから・・。お願い! 」

 さすがにルウカス、レイミ姫がここまでするとは思わなかった。

「わ、わかりました・・・、言う事を聞きます、だからそのようなことはおやめください、姫様! 」


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