我が歩むは修羅の道・背後に広がるは死の荒野 2
隣国の不穏な動きをよそにモルタヘイド王国・キルミスター城は表向き平穏であった。
城内の会議室において、ホークウィンド・キルミスター王と彼の側近にして兵たちの士官であるルウカスが何やら会議中であるようだ。その外にも重臣らしき人物が数名。
まず、口火を切るルウカス。見た所まだ若い人物だ。この若さで重要な地位を占めるとは優秀な人物なのであろうか。
「ジェダスプーリの者ども、あれ以来特に新たな動きはないようです。それが却って不気味ではありますが・・」
王、思案しつつ
「ふむ、くれぐれも警戒は怠るな。ルウカスよ、我が国の防衛をカーラのみに頼ることになってしまったら軍の存在意義がなくなってしまうぞ・・そういえばカーラめ、勝手に娘を連れ出した上に危険な目にまで遭わせよって・・。いかに山賊どもの壊滅に繋がったとはいえ・・」「ルウカスよ、そなた、その山賊の討伐にも手こずっておったな? 」
ルウカス、先のデムボガー襲来において軍隊は全くいい所無しでカーラに全てを持っていかれてしまったのが悔しくてたまらないでいた。その上、山賊討伐もカーラにやられてしまったというのでは立つ瀬があろうはずもない。
(くっ・・何としても次回は挽回しないと陛下の信頼が・・これ以上カーラめの好きにさせていたら堪ったものではない・・)「そういえば姫様とカーラめがその山賊から救い出したという娘を連れてきたようですが」
王、今までの険しい顔と打って変わり、
「ふむ、フイリン・アーセルとかいったな。聞くところによるとまだ幼いながら中々聡明で賢い娘なようで、レイミも気に入っており、城の使用人共の評判も悪くないようだ」
やはり愛娘であるレイミのことに関しては甘くなるのか?
「お言葉ですが、陛下」
重臣の一人が口を挟む。
「あの娘、女神アンジュエラに仕えるシスターであるそうですが? 異神の信徒である者は何かと面倒なことに・・」
その言葉を遮るキルミスター王。
「行き過ぎた布教活動をやり出す、とかでないのなら別にかまわぬ」「そのにあの娘・・」
「何か? 」
「いや、何でもない、捨て置け」
この城の庭園、そこには様々な種類の花が植えてある。季節ごとの変化が楽しめるであろう花壇、あのキルミスター王に花を愛でる趣味があるとも思えないでもないが・・。
その花を眺めているのは、誰あろう、フイリンであった。腰を下ろし愛おしそうにうっとりと眺めている。
「フイリン、あなた花が好きなの? 」
いきなり背後からの声。少しビクッとして振り向くと居たのはレイミ姫であった。いつものようにいかにも「姫」らしいドレスを身に付けている。
「あ、は、はい、好きです、花を見ていると心が和みます」
レイミ、フイリンの隣に来て一緒に腰を下ろす。
「この花壇はね、私の亡くなったお母様のものだったの」「お母様は花が好きで、自分でも種を蒔いたり、手入れをしたりしていたわ」「私も一緒になってやろうしたけれど、どうしてもね・・」「あまり気が乗らないというか・・興味持てなかったというか・・私はどちらかというと剣技とかの武術の方が好きでね・・」「変だよね、何かあまり女の子らしくなくて・・」
とうとうと語り出すレイミ。なぜフイリン相手にここまで話す気になったのか・・? 彼女自身にもよくわからなかった。
「フイリン、あなたこの花壇の世話やってみるといいよ、お母様も喜んでくださるはず・・」
「姫様・・」
「あー『姫様』はやめてね、レイミでいいよ」
「え? でも・・」
すると、
「あー姫様、ここにいらしたんですか?そろそろ勉学の時間ですよ」
彼女を呼ぶ声が聞こえる。
「あっ、もうこんな時間か、そうだフイリン、あなたも一緒に来なよ」
レイミ、フイリンの手を取り、引っ張っていく。
その一連のやり取りを見ていたのは・・そうカーラである。
「ったく、レイミめ、すっかりフイリンに夢中になっていて・・以前はあれほど私を慕いまくっていたのに・・」
「ま、いいや、その方が好きにナンパもできるしな・・」
何か負け惜しみにしか聞こえない。しかし、彼女でも寂しさを感じるのであろうか?
所変わり、ジュダスプーリ王国。城内のとある一室ではイアンヒルとエンバーゴ、バスオブンが揃っていた。
「お前、先程は自信たっぷりであったが、何か策でもあるのか? 」
剃られた残りの髭を撫でながらイアンヒルが尋ねる。
「当り前でっせ、まず奴の居る城に潜入して・・」
その言葉を遮り、
「バカな! 相手の城内でやらかすつもりか? 騒ぎ起こせばたちまち兵共が出て来て多勢に無勢となるぞ!?」
「最後まで話聞けや、まずキルミスターの姫を攫い人質とし、カーラを誘い出すのだ」「無論、わしらにとって地の利が取れる場所でな! 」
イアンヒル、まだ釈然とせず、
「随分と簡単に言うが、城に潜入し姫を攫うのが一苦労なのではないのか? 」
「ふん、わしらに任せろ、と言ったはずだがなぁ? そんな事はわしにとって造作もないことよ、キヒヒヒ」
片手の義手の爪をカチャカチャと鳴らし、いかにも自信たっぷりという態度を取るのだった。そこまで言われれば黙るしかない。
「分かったら楽しみに待ってて下せえヨ、ケケケ」「行くぞ!バスオブン! 」
「うむ」




