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邂逅・悪の華と聖女 4

「余計な事してすみません、でも! 」

 カーラの前方に進出し、またしても防御障壁を張ろうとするフイリン。

(あのような子供でも役に立つ力を持っているのに・・私はなぜ無力なの・・)

 思わず拳を握りしめるレイミ。

(悔しいけれど所詮私は箱入りのお姫様でしかないのか・・)

見えない壁に阻まれ、カーラに近づけない山賊ども。故にカーラが体勢立て直すのには十分な時を稼げた。

「フゥーー」

 精神を集中させているのか? 低く呟いているのが見て取れる。

「破あっ!!」

 気合の入った一声と共に両手より弾き出された閃光のようなもの・・。いや、光だけでなく風圧の様な物も周囲の者たちには感じられたのだ。

 その閃光の渦は唸りを上げ、山賊の集団に襲い掛かる。そして・・・。

 手足が飛び、身体を切り裂かれ、体液・腹腸をぶちまけ、悲鳴上げる間もなく絶命させられる山賊ども。これは"気"の力による鎌鼬のようなものなのかもしれない。

 わずかに生き残った数名の一人、

「こ、この技は・・・思い出したぜ、こいつはあのカーラだ! 地獄の娼婦(ヘル・ハーロット)・カーラ・エンジェルウィッチだ! 間違いねえ! 」

 今更思い出してももう遅すぎだ。

「う、うわー」「こいつは敵うわけねえ」「たすけてくれいっ」蜘蛛の子を散らすように遁走していく残りの山賊手下どもであった。

 そして、後に残るはお頭ただ一人。奴も先程の技を少しは喰らったと見えて左腕の肘から先が消えている。そしてカーラは無言で奴にすたすたと近づいていく。

「うっ、ううっ、わ、悪かった、今度こそ本当に悪いと思ってる、もう山賊はやらねえ・・」

 またしても地べたに額を擦りつけるお頭、腕の痛みも感じないのか全身汗びっしょりである。

「・・・」

 やはり何も言わないカーラ。その顔からは表情さえ消えている。

(こんなカーラ今まで見たこと無い、これは本気で怒っているな・・ま、無理ないけど)

 レイミ、意外と冷静に分析しているが。

 お頭の元に近づいたカーラ、這いつくばる奴を思い切り見下ろしたかと思えば、その後頭部を思いっきり踏みつけた?!

「ぶぐっ!?」

 地面にめり込み、声にならない声を立てるお頭。その後頭部をなおもぐりぐりと踏みにじるカーラ。

「もが、へがが、むぐが・・っ」

 お頭、何か言いたそうなのだろうが、呻いているようにしか聞こえない。

 ごぎっ!・・鈍い音が鳴り響き、お頭、ぴくりとも動かなくなった。どうやら頭蓋が砕かれたとみえる。

 そして、踵を返し、こちらに戻って来るカーラ。彼女の表情は先ほどとはうって変わって微かに笑みを浮かべていた。

 カーラの元に駆け寄るレイミ、とフイリン。

「もう・・一時はどうなるかと・・本当心配したんだから!」

 感極まったのか大粒の涙をぽろぽろ落とすレイミ。せっかくの新調した服も汚れ、あちこち綻びてしまっている。

「まったく・・とんだデートになってしまったな・・」

 レイミを抱きしめつつ頭を撫でてやるカーラであった。

「あの・・私余計な事してしまったでしょうか? 」

 不安げに尋ねるフイリン・・。カーラ、彼女を一瞥し、少しぶっきらぼうな口調で答える。

「別に・・あんなのは無くても何とかなったけど・・まあ、少しは役に立ったから良いとしとくわ」

「あ、ありがとうございます・・」

 しかし、フイリン、何やら顔色が悪い。さらに足元もふらついている感じだ。

「どうした? 疲れでも出てきたか? 」

「大丈夫? 顔青いよ」

 レイミも心配そうに声をかけ、手を取ってやろうとする。

「い、いえ何とも・・ないです・・ううっっ! 」

 口を押えあわててどこかへ走っていくフイリン。

「ははーん、アレのせいか、小娘には刺激強すぎたかな」

 カーラが指さした先には先程の山賊どもの惨殺死体が転がっている。なるほど、無理もない。

「しかし、レイミ、お前はわりと平気そうだな? 意外というか・・」

「あまり平気というわけでもないけれど、あなたと一緒に居たときのあれやこれやで慣れてしまったから・・」

 いや、慣れるなよ・・。

「ふう~ん、オーク(ブタ野郎)相手にちびっていたとは思えな・・痛っ! 」

 レイミ、思い切りカーラの頭をグーで殴りつける。

「それは忘れてね! 」

 

「何と恐ろしい! 」

 突然のしわがれた声が空気を変える。そう、「聖楽園の南」の巡礼団リーダーの老人である。

「この得体の知れぬ殺人技、悪魔の所業としか思えぬ! 」

 明らかに彼の眼には異形のモノに対する恐れと嫌悪感がありありと宿っているのであった。半ば狂気さえ見て取れる。そして、同じように頷く巡礼の男女・・。

「ちょっと! 何ふざけた事言っているのよ! 彼女が、カーラが戦ってくれなかったらあなたたち皆殺されるか奴隷として売られるかだったのよ! 分かってんの? 」

 憤りを隠さず反論するレイミ。彼女の顔は紅潮しているのが見て取れる。

「そうです、その通りです! 」

 声のした方向に向く。いつの間にかフイリンが戻ってきた。彼女の手には(スタッフ)が握られている。磨き上げた木製で装飾が施され頂部には宝玉がはめ込まれている作りだ。これが彼女が「取り上げられた」という(スタッフ)なのであろう。

「私だってアンジュエラ様の教えを守り争いを極力避けてきました」「でもあの人たち、山賊たちはこちらの言い分を一切聞こうともせず一方的に襲ってきたじゃないですか! 」「少々やり過ぎたかもしれませんが・・うっ・・」

 必死にカーラ擁護するフイリン。しかし、まだ吐きそうなのか?

「ねえ、カーラ、何か言ってやったら? 」

 レイミがカーラに向き直る。

「ほっとけ、ああいう輩は何言っても聞く耳なんか持ってはいないからな。相手するだけ無駄だわ」「そのうち痛い目に遭いながらくたばるだけだ」「その時初めて後悔するか、あくまで己の信念貫くのかは知らんけどな」

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