14話は受付。
受付には1人の若い男性が立っている。服装は…何故かタキシードだ。
近年本物の『蚤の市』は衰退してしまったが、絶対タキシードとかを着るイベントではなかったはず。運営さん方は蚤の市を何だと思っているのだろう。
それはともかくまずは受付だ。とりあえず話しかける。
「すみません、蚤の市に参加予定の者なんですが…」
「確認します。首藤様と…あのすみません、杜社様の下のお名前は…」
「…杜社です」
「大変失礼しました」
受付の人は澄ました顔で言う。もう少し申し訳無さげにしてくれてもいいんだが…
「いえ、いいんですよ。あとその2人で合ってます」
そう、いいんだ。慣れたし。モリシャと呼ばれるのはまだいい方で、シャモリ、シャシャとかひどい時には一文字も読めないとか言われるしな。
「でしたらお二人の道具の能力をお教えください」
道具も登録しておかなきゃいけないらしい。もしかして本人確認の意味もあるのだろうか。
「えぇと…俺がざっくり言えば他の能力への干渉能力で」
「私が聴覚の延長と音声発信って感じですか?」
「いえいえ、そういうのではなくて名前です」
「なら俺のが神祇要録っていう本で…」
「いえ、そういうのでもありません。例えば『地獄を灼く黒き焔』みたいな、そんな感じのヤツです」
まじか。おれは道具にそんなこっぱずかしい名前を付けなきゃいけないのか? 是非とも御免被りたい。
「私道具にそんな変な名前つけてませんっ。どうしましょう社さんっ」
「つけてないと言われましてもこればかりは規則でして」
くそっ、制度が縦割り過ぎる。ここは押しても引いても無駄だと判断しておく。
「ちょっとタイム貰えますか」
「ええ、構いませんよ」
ここはひとつ機子と相談といこう。ノー相談で勝手に決めてセンスないって思われたら嫌だからな。
「さて、どうしようか」
「どうしますかね」
「まず俺の方を考えようか…やっぱルビは振らなきゃいけないかな」
「特徴も捉えるべきでしょうね」
俺の道具の特徴…やはり『神社』はキーワードとなるだろう。 というかそれ以外特にない。
「そうですね…漢字の方は『神域』とか使います?」
まぁ妥当なところか。いやしかし…
「あの神社に神はいないからな…『領域』ってところだろう」
「じゃあ読みはシンプルイズベストで『エリア』にしません?」
「…うん、それならあの受付の人も納得するだろうな。 あとはお前の道具だけど…」
そう言えばまだ電話としか聞いてなかった。どういう謂れのある電話なのだろう。
「私の電話は自動交換方式が初めて取り入れられたものです。だからその特徴を反映してか『通話』出来る範囲は自分がいる市内に限定されちゃうんですよね」
「なるほど…ならそのまんま『自動交換方式』とかでいいんじゃないか? 読みは『オート』とかで」
「それで決まりですねっ。申請しに行きましょう」
何も考えていないネーミングだったが気に入ってくれたようで何よりだ。
俺は受付のお兄さんに再び話しかける。
「すいません、俺が『領域』でこいつが『自動交換方式』でお願いします。漢字は…」
「ここに書いてくだされば結構です。十分かっこいいと判断しました」
お気に召したようでいらっしゃる。まぁこんな面倒なのもこれで終わりのはず…
「では次は技の方をーー」
いや、終わるはずがなかった。この手のバトルにおいて能力名と技名は必須だしな。
しかし、あぁ…もう相談するのが面倒だ。
「機子、もうこの場で俺の独断で決めようと思う。お前のその…技? に関してはあとで説明するから」
「はいっ、とりあえず了解です」
「そうだな…こいつのが『大音声』、俺のが『神祇要録、〇〇』。あっ、〇〇には神社名が入ります。あと…念のためにもう一つーー」
これはできれば使いたくない、霖先生が言うところの『性格の悪い使い方』だ。しかしいつか必要に迫られた時のために登録だけはしておこう。
その『時』が永遠に来ないことを願いつつ。
「…『夢に果ては無からんや』で、お願いします」




