15話は開戦まで。
俺考案の『技名』は無事に受付の人の審査を通過した。 …っていうかあれってただの主観では?という疑問を胸に抱きつつ、俺たちは無事に受付とう名の第一関門を突破した。
「それで社さん、『大音声』って何ですか?」
「そうだな…ちょっと耳寄せて」
「…普通に話してもらっていいですよ?」
「いや、周り見てくれる?」
「そう言えば変な人たちがいますね。あっ、もしかしてーー」
「まぁそうだろうな」
さっきからこの映画館に無視しようにもできない連中がいる。
とくに目立つのは柄杓で水平切りしてる人、巨大な錨を肘掛にしつつ若い女性を口説いている初老で漁師風の男性、あとは埴輪にブツブツ話しかけている男子高校生ーーあれ? あの制服は…
「1人同じ学校の人がいますね」
「そう言えば霖先生が文化部に1人入部希望がいたけど断ったって言ってたな。たしか同じ学年だ」
「へぇ…見覚えないですね。 でも何で断ったんですか? 廃部の危機じゃなかったんですか?」
「霖先生曰く『あいつは文学を侮辱した』とさ」
「何言ったんですかね…」
「さぁ?」
しかし同じ学年なら見覚えあっても良さそうなものだが…主犯さんなら知ってるだろうか。 あの変な高校生、よく見れば割と整った顔立ちだし。
「あっ、解りましたよ。手の内を見せないようにってことですねっ。うーん…でも…」
「何だ? 歯切れの悪い」
「あのぅ、耳打ちは構わないんですけど…出来れば息とか少なめにしてもらえると助かる…と言いますかその…」
赤い顔+遠慮がちな目+モジモジした仕草。確信した。今この状況、俺でなければ理性を失うシチュだな。
この俺を誰と心得る。小学校の時に『杜くんってあえてぼかしたこといちいち指摘してきてウザいよね』と言われた杜社だ。
機子の(あえてぼかすが)弱点が耳があることはスルっと丸っとお見通しだぁっ。だぁっ。だぁっ。
ーーあのドラマは素晴らしい作品だよな。特に主人公が貧乳のところとか最高。
「はいはい、気をつけるから。ほら、耳寄せて」
「うぅ…ほんとですね…」
素直な機子はスッと自分の弱点を晒す。一瞬魔が差してフッとやりたくなったがここは我慢だ。
「大音声っていうのは古語で大声って意味…いやこの説明はいらないか。そうだな、『これ』はお前の道具の基本の能力の応用で…大丈夫か? 場所変えようか」
機子の頬が赤くなっているのがわかる。何かに必死で耐えているのも。
「いえ…大丈夫れすっ…からぁ…。 …というかぁ…ここで場所を変えっ…ますと、きっと私は社さっ…んに食べられーー」
ませんから。…いや、据え膳であれば食べる覚悟はありますけどね? 確かに俺は性欲は薄いが、それでも確かに存在するのだから。
「大丈夫じゃなさそうなのはわかったから手短に行くが…言ってしまえばただ相手の耳元で叫ぶだけだ」
「耳元で、ですか?」




