12話はヒロイン①の能力説明。
そして迎えた当日、というか翌日。俺たちは授業が終わるや否や現地に直行していた。
大明館高校は大分市中心街からそれほど遠くないが、蚤の市開会まであと30分を切っている。
初回はそこそこ手続きに手間取るという話も聞く。急ぐに越したことはなかろう。
「どうしましょう社さん。私まだ心の準備が…」
「あと30分でご準備お願いしますよ」
冗談めかして言ったつもりだったが…機子は必死に手のひらに『人』と書いて飲み込み始めた。
その勢いたるや、本場のわんこそばのようだ。
「まったく…君達の都合でアッシー君させられてる私の身にもなってみなよ。 あーあ、面倒だなぁ」
霖先生は不満げだ。こっちがお願いした反面反論しづらいのだが…
「いいんですか? なら交通費は部費から捻出しますよ」
「…自腹じゃだめ?」
「言わずもがなでしょうよ」
「だよねー」
ゆるい会話だ。しかし互いが互いの弱みを握りあっているというのはけっこう面倒だな。
「そういえば機子、お前の道具って電話だったか?」
「何で知って…あっ、あの時見てましたね。はい、そうです。日本初の自動交換方式の電話ですよ」
「具体的には?」
「電話ですっ」
「いやだからそれで何ができるんだ?」
「だから電話ですって」
いまいち噛み合わない。『電話』とは一体…?
「…どういうことだ?」
「そうですねぇ…『自分がいる市内の任意の場所に聴覚と声を飛ばす道具』って感じですね」
ふむ、何となく理解した。要は『電話番号の代わりに座標を用いる電話』なんだな。
「…もしかしてその『電話』をかけている途中に座標はずらせるか?」
「…? まぁ、はい。それが何か?」
「だとしたら蚤の市で探知に応用できるかとおもってな」
聴覚による音の探知。千里眼ならぬ千里耳というわけだ。 そうは言っても現実では範囲が広すぎたり、雑音が多すぎたりで上手くいかないだろうが。
「そういえば出来ますね。どうです? 私の道具、役に立ちます?」
「あぁ、十二分にな」
車はもう大分大分市街を走っている。会場まではもう少しだろう。
…大分大分市街って紛らわしいな。




