第11話にて第一部終了。
特に実のない会話をしつつ、俺たちはとある交差点を通過した。
「…おい谷崎、お前の家はさっきの交差点を曲がったところだろう。まさか自分の住所も忘れたのか? 」
「さっ、さすがの私でもそんなわけないでしょう? これはちょっと勢い余ったというか…その…。とっ、とにかくまた明日会いましょう」
ふむ…この様子では恐らくクロだな。落としにかかれば簡単に落ちるだろうが…まぁいいか、面倒だし。
「はい谷崎さん。また明日ですっ」
「私のことは『潤』でいいわ。社はダメだけど」
「えぇ…。別にそう呼ぶ気はないからいいんだが…」
「はいっ、わかりました。また明日ですね、潤さん」
引き返す谷崎の頭上には三日月が浮かんでいる。県庁所在地とはいえ大分市は広い。…要するに郊外は田舎なのだ。したがって周りの街灯も少なく、なかなかの星空なのだが…慣れとは恐ろしいもので、特に感慨もない。
「それにしても綺麗な星ですねっ。前にいた街とは比ぶべくもありません」
「…そうか、それはよかった」
俺も小学校の頃はこんな感じだったはずなのだが…いつの間に俺の心は汚れてしまったのだろう。なんとなく罪悪感を感じる。
「ーー話は変わるが…機子、お前は主犯さんと仲良くできるか?」
「それはもちろんですが…どうしてそんなことを?」
「恐らく明日から主犯さんはリーダー格から失墜する。今までお前に向かっていた流れがそっちにかわりかねない」
「わかりました。社さんと繋がりのある私が付いていれば微妙な均衡が保てるってことですね」
やはりこいつは理解が早い。余計な説明が省けて楽だ。
「しかしわかりません、どうしてあの方…社さんのいう『主犯さん』があんなことをしたのか。この疑問のせいで私はアクションを起こせなかったんですよね」
「うーん…これはあくまで想像に過ぎないが…主犯さんは恐らく中学時代にリーダー格になったんだ。強い道具にそれなりに整った容姿、祭り上げられるには十分だろうな」
「それなりって…けっこう辛辣ですね」
「まぁ何故か俺の周りが高水準だからそう見えるだけかもな…話を戻すが、多分本人も乗せられやすい性質だったんだろう。
そして周りが『主犯さんはこうあるべきだ』とか『主犯さんならこうするはずだ』っていうのを押しつけるようになった…正に『偶像』だな。
そうしていうちに期待に応えようとする主犯さんは周りに上手いように操られるようになったんだ。
といっても本人たちには操っている自覚も操られている自覚もないだろうがな」
軽い調子で言った。こんなの重々しく喋っても何がどうなるわけでもないし。
それにしてもこんな長文を喋ったのは久しぶりだ。喉が疲れてしまった…ような気がする。
「なるほど…私が感じていた違和感はそれでしたか」
「しかし言った通りただの想像だからな、実際のところもっと混み合った事情があるかもしれない」
「それはそうですが、信憑性はなかなかですよ」
そんな話をしつつ、住宅街までたどり着いた。そろそろ聞いた住所の場所だと思うが…。
「ーーそろそろお前の家じゃないか?」
「はいっ、そこの角を曲がったらすぐです。このへんでもう大丈夫ですよ」
「そうか? じゃあここでお別れだな」
「そうですね、ではーー」
「そうそう、言い忘れていたが…蚤の市明日だから。よろしく頼むよ」
「ーーぇ?」
「えええぇぇーーっっ」
閑静な住宅街にこだまする声。呆然とする機子を尻目に、俺は住宅街をあとにする。
しょうがない。だってこれ以上居たら不審者扱いされそうだし。




