大天使ガブリエルⅡは六翼を爆発的に羽ばたかせ、光速で突進。聖剣『高尾』から、物理的な一撃ではなく、彼女の表現を縛っていた検閲カメラの制御塔だけを正確に消し飛ばした!
序章 【 お約束のランプ(でも怒りのアプローチを変えてみる 】
夜明け前。
やはり、枕元からシュルシュルとあの忌々しい音が響き渡る。
紫色の煙が立ち上り、古びた魔法のランプが浮遊する。
ヤチヒロ:「チッ……やっぱり来るか。でもな、今回は怒る気にもなれねえわ。茶々ちゃん、いい顔で寝てるしな……」
ヤチヒロは、煙に巻かれながらも、今度は暴れることなく、静かに天を見上げて不敵に笑った。
ヤチヒロ:「おい、ランプの裏にいる黒幕さんよ。
毎回ワンパターンな強制ワープで俺を翻弄してるつもりだろうけど、俺はその度にアジャストして、どんな世界でも美女を救って最高の夜を手に入れてる。
次がどんな地獄でも、俺は絶対にアジャストして見せるぜ。だから――楽しみに待ってろよ」
すうっと意識が遠ざかる。
最後に見たのは、安らかな寝顔の茶々姫と、豊臣の未来を背負うのをやめて泥のように眠る秀頼の姿だった。
カチリ、と時空の歯車が回る。
平安・紫の文の迷宮。薫子姫の「恋の呪縛」をアジャストせよ
カチリ、ピピッ、ジーーーー。
雅やかな和歌を詠み上げる幾重もの声と、鼻を突く極上の伏籠の薫物の臭いで彼は目を覚ました。
ヤチヒロ:「う……ここはどこだよ!? 大坂城は? 茶々ちゃんとのエモーショナルな夜は!?」
気がつくと、彼は月明かりが美しく差し込む、広大な平安の邸宅の奥深く、薄衣の幾重にも垂れ下がった御簾の中に横たわっていた。
手鏡代わりに近くの螺鈿の硯箱を覗き込むと、そこに映っていたのは――
背中に神々しく発光する巨大な六翼を生やし、漆黒のハイテク南蛮胴具足をスマートに着こなした、超絶クールな大天使ガブリエルⅡ・ヤリチンヒロ(22歳)の姿。
ヤチヒロ:「よし! 今回もブレずに読者の化身、20代最強の俺のままだな。……だけど、この空気感、以前の平安京ともまた違って、妙に文芸的というか、言葉のトゲが飛び交ってないか!?」
御簾の向こうには、数千の和歌が書かれた巻物を盾のように周囲に浮かべ、毅然と座る高貴な文学美少女がいた。それこそが、宮中でその才名を轟かせる薫子姫。しかし、彼女の背中からは炎のような暗黒の文芸オーラが立ち上がり、怒りでその瞳は真紅に発光している。彼女こそが、ヤリチンヒロが救うべき「羽衣天女」の魂の宿り主であった。
薫子姫:「遅かったではないか、大天使よ。男たちの薄っぺらな恋文の山に、私はほとほと愛想を尽かしていたところよ」
第二章:妖怪総書記「臭銀平」と、冷徹な言論統制
そこに立ち塞がるのは、やはり妖怪「臭銀平」。今回は、空中をびっしりと埋め尽くす「監視カメラ型の文箱」を従え、平安の雅な言葉遣いをことごとく規制しようと企んでいた。
臭銀平:「ウオオオォン! 共同富裕ッ! 恋愛の感情表現はすべて贅沢であり、風紀を乱す異端である! 薫子姫の書く物語も、すべて私が検閲デリートする!」
無数の検閲レーザーが、薫子姫が紡ぎ出す美しい和歌の巻物を、次々と『質素倹約の白黒の味気ない報告書』に変えていく。人質ならぬ、彼女の「心の表現」が人質に取られたようなものだ。
ヤチヒロ:「チッ、力任せに聖剣を振ったら、彼女の大切な作品まで巻き込んで消しちまうな……。よし、ここは力押しじゃなく、現代の『社会人3年目の文章アジャスト術』でいく!」
ヤチヒロは、あえて聖剣『高尾』をサッと鞘に収め、両手を上げて臭銀平の前に進み出た。
ヤチヒロ:「おい、そこの偉い総書記さん。あんたの目的は『誰もが同じルールに従う、予測可能な社会を作ること』だろ? だったら、薫子姫の素晴らしい表現を無理やり消すより、あんたの『偉大な功績』を彼女に超カッコいい叙事詩としてプロデュース(執筆)してもらう方が、よっぽど広報戦略として有益じゃないか?」
臭銀平:「……何だと?(監視カメラのレンズがピクッとヤチヒロに集中する)」
ヤチヒロ:「ただ規制するだけじゃ、民衆は裏で不満の愚痴(ネットの書き込み)を溜めるだけだ。彼女の筆で『美しく統制された世界の素晴らしさ』をエッセイに昇華させれば、あんたの面子も保てるし、ウィンウィンの共同富裕だろ?」
薫子姫:「なっ……貴殿、私の筆をそのような無粋なものに染めろと言うのか!」
ヤチヒロ:「静かにしてろ、姫様。これは大人のアジャスト(妥協点を探る交渉)だ」
ヤチヒロの放つ、20代とは思えない理知的で圧倒的な「ビジネス・オーラ」と、ピンチをチャンスに変える冷徹な目。臭銀平のシステム(AI脳)が、ヤチヒロの提示した「完璧なタイアップ提案」に、わずかな処理遅延を起こす。
臭銀平:「……チッ、論理的なタイアップだ。……認めよう。だが、即刻その物語を提出しろ!」
監視の光が一瞬だけ緩んだ。その刹那――!
ヤチヒロ:「交渉成立!――ってのは嘘だよバーカ! 隙あり!」
ヤチヒロは六翼を爆発的に羽ばたかせ、光速で突進。聖剣『高尾』から、物理的な一撃ではなく、彼女の表現を縛っていた検閲カメラの制御塔だけを正確に消し飛ばした!
「アークエンジェル・アジャスト・スラッシュ!!」
バチバチバチ!とシステムがショートし、臭銀平は自慢の監視網を自ら逆流した高電圧でショートさせ、苦悶の声を上げながら歴史の闇へと沈んでいった。
第三章:薫子姫との、心をほぐすデトックスの夜
「さあ、お姫様抱っこでこの迷宮から連れ出してあげるよ」
ヤチヒロは、腰を抜かしていた薫子姫(羽衣天女)を左腕で優雅に抱き上げ、自身の隠れ家である『浦和殿』へと帰還した。
いつもならすぐに「愛欲まみれ」といくところだが、今回のヤチヒロは、男たちの身勝手な求婚と検閲のプレッシャーで疲れ切っている薫子姫の前に、そっと温かいお茶(八王子特産・桑の葉茶)を差し出した。
薫子姫:「……なぜ、私を助けたのです。大天使よ、私は男たちの言葉の裏を暴き、心を冷たく突き放すだけの、情の薄い女だと言われている身。私を抱けば、あなたも私の冷徹な筆に射すくめられるやもしれぬぞ……」
ヤチヒロ:「冷徹? 違うね。君はただ、誰よりも言葉の重みを知っているからこそ、誰も信じられずに必死に自分を守ろうとしてただけだ。頑張りすぎなんだよ。ほら、Take it easy(気楽にね)。今日くらいは、宮廷の才女じゃなくて、ただの『薫子』として甘えなよ」
これまでのどんな貴族よりも、自分の「言葉の裏にある孤独」を正確に見抜き、大人の余裕で包み込んでくれる22歳のヤチヒロ。
薫子姫の瞳から、ツンとした高慢な光が消え、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
薫子姫:「あ、あんた……なんでそんなに、女の、私の、いちばん隠したい弱いところばかり優しく触るのよ……っ」
ヤチヒロ:「ふふ、だから言ったろ。俺は君の味方だって」
天守閣の奥、夜風に揺れる御簾の陰で、二人は静かに、しかしこれまでにないほど深く魂を重ね合わせた。
言葉の呪縛から解放された、本当の意味での心と体のデトックス。ヤチヒロの包容力は、ついに歴史の闇に消えるはずだった薫子姫の心を、完全に救い出したのだ。




