【 大坂城・極楽橋の決戦 】 秀頼と茶々姫をアジャストせよ
序章 【 突然の開幕 】
いつも最高のラグジュアリーは、長くは続かないもの。
ある夜、絶世のクレオパトラがヤチヒロの胸元で、完全に心の警戒を解除して愛おしそうに眠りについた、その瞬間だった。
黄金の台の片隅から、シュルシュルと不気味な音が響く。
ヤチヒロ:「え……? この匂い、まさか」
見ると、空中テラスのきらびやかな松明の光を突き破り、古びた「魔法のランプ」が浮遊していた。その注ぎ口から、紫色の怪しい煙がモクモクと立ち上る。
ヤチヒロ:「おい待てコラ! まだ俺、このエジプトの財宝を半分も八王子の口座に移してないんだけど! 次の定例ミーティングは!? 午後からのプレゼンは!?」
必死に抵抗しようとするが、ランプの煙は容赦なくヤチヒロの鼻腔へと吸い込まれていく。強制瞬間ワープの力が、彼の魂を肉体から引き剥がしていく。
ヤチヒロ:「ああっ、俺の、俺の極上のエジプシャンハーレムがァァーー!」
意識が遠ざかる中、最後に見たのは、愛欲に溺れたクレオパトラの、幸せそうな寝顔だった。
「うわあああマジでいい加減にしろよコラ!!!
今度は古代エジプトかよ!!!
おい、時空の裏でランプを擦り続けてるクソ黒幕!!!
煙の演出サボって、バグ負けしてんじゃねえよ!!!
主人公ヤチヒロは読者の化身なんだから、今すぐあのピラミッドのベッドにロールバックしろォォォ!!!(大激怒)」
カチリ、と時空の歯車が回る。
気がつけば、大天使ガブリエルⅡ・ヤチヒロはまた別の、見知らぬ異世界へと放り出されていた。次は果たして、どんな美少女を救い、どんなカオスな姿で愛欲に溺れるのだろうか。
八王子市生まれの男子、ヤチヒロの放浪記は、まだ、始まったばかりである。
第一章 【 大坂城・極楽橋の決戦。秀頼と茶々姫をアジャストせよ 】
カチリ、ピピッ、ジーーーー。
今度は煙のバグが激しく、ヤチヒロは空中ではなく、大坂城の「極楽橋」のド真ん中に激突するように転移した。
ヤチヒロ:「痛ててっ!……なんだよ、今回はワープの着地まで雑かよ!?」
しかし、いつものように「気がついたらベッドの上」ではない。目の前では、包囲された大坂城の天守が黒煙を上げ、眼下には冷たく渦巻くお堀の水。
手鏡代わりに、漆黒の南蛮胴具足の胸プレートを覗き込む。
映ったのは、背中に六つの純白の翼を静かに休ませる、超絶クールな大天使ガブリエルⅡ・ヤチヒロ(22歳)。
ヤチヒロ:「よし、見た目は読者の化身、20代最強の俺のままだな。……だけど、これ、ベッドの上でいちゃついてる状況じゃなくないか!?」
橋の向こうから、一人の誇り高き少年武将が、深手を負いながらも一人の美しい女性を背中でかばって立ちはだかっていた。
それが、若き城主・豊臣秀頼。そして彼が命がけで守っているのが、母であり絶世の美女・茶々姫(淀殿)だった。
茶々姫:「秀頼、もうよいのです。徳川の手に落ちるくらいなら、このまま母と共に……」
秀頼:「母上、諦めてはなりませぬ! 豊臣の血は、私がこの命に代えても……!」
二人の背中からは、強大な豊臣の怨念が、炎のような紅蓮のオーラとなって立ち上っている。そう、茶々姫こそが、ヤチヒロが追い求め続ける「羽衣天女」の魂の宿り主。そして秀頼もまた、母を守るために限界を超えて「阿修羅」の如き戦闘オーラを放っていた。
第二章 【 問答無用の「リアル交渉」と、臭銀平の冷徹な包囲網 】
そこに立ち塞がるのは、お馴染みの妖怪「臭銀平」。だが、今回はヘラヘラと笑いながら一撃で倒されるような雑魚ではない。
空中をびっしりと埋め尽くす「検閲・監視カメラ」の防壁。彼の一挙手一投足が、豊臣の退路を完全に断ち切る絶対的なシステムとなっていた。
臭銀平:「ウオオオォン! これ以上の抵抗は無意味である! 歴史のデータベース(台帳)に従い、豊臣の血脈を今ここで完全抹消(検閲デリート)する!」
いつもなら「そこな臭銀平!」とヤチヒロが一閃して終わるところだが、今回の敵は冷徹だ。無数の槍兵とレーザー照射が、一斉に茶々姫と秀頼の脳天をロックオンする。人質を取られたようなものだ。
ヤチヒロ:「チッ、力任せに聖剣を振ったら、後ろの二人まで巻き込むな……。よし、ここは力押しじゃなく、現代の『社会人3年目の交渉術』でいく!」
ヤチヒロは、あえて聖剣『高尾』をサッと鞘に収め、両手を上げて臭銀平の前に進み出た。
ヤチヒロ:「おい、そこの偉い総書記さん。あんたの目的は『豊臣というブランド(影響力)を消すこと』だろ? だったら、ここで二人を殺して『悲劇のヒーロー・ヒロイン』として永遠に歴史にアーカイブ化される方が、あんたにとって都合が悪くないか?」
臭銀平:「……何だと?(監視カメラのレンズがピクッとヤチヒロに集中する)」
ヤチヒロ:「死人は反論しないから、美化されて永遠に生き続けるんだよ。だったら、俺がこの二人を引き取って、別の時空に完全移籍させる。豊臣の名前をこの世界から完全に『自主回収』してやるよ。これならあんたの面子も保てるし、共同富裕だろ?」
秀頼:「なっ……貴殿、何を勝手なことを!」
ヤチヒロ:「静かにしてろ、お坊ちゃん。これは大人のアジャスト(妥協点を探る交渉)だ」
ヤチヒロの放つ、20代とは思えない理知的で圧倒的な「ビジネス・オーラ」と、ピンチをチャンスに変える冷徹な目。臭銀平のシステム(AI脳)が、ヤチヒロの提示した「win-winの提案」に、わずかなバグと処理遅延を起こす。
臭銀平:「……チッ、論理的な妥協案だ。……認めよう。だが、即刻この時空から退去しろ!」
監視の光が一瞬だけ緩んだ。その刹那――!
ヤチヒロ:「交渉成立!――ってのは嘘だよバーカ! 隙あり!」
ヤチヒロは六翼を爆発的に羽ばたかせ、光速で突進。聖剣『高尾』から、物理的な一撃ではなく、二人の背後を狙う検閲カメラの制御塔だけを正確に消し飛ばした!
「アークエンジェル・アジャスト・スラッシュ!!」
バチバチバチ!とシステムがショートし、臭銀平は自慢の監視網を自ら逆流した高電圧でショートさせ、苦悶の声を上げながら堀の底へと沈んでいった。
第三章 【 心の傷を癒す、本当のデトックス 】
「さあ、お姫様抱っこは一人ずつね」
ヤチヒロは、気を失った秀頼を右肩に担ぎ、腰を抜かしていた茶々姫(羽衣天女)を左腕で優雅に抱き上げた。
浦和城へと帰還した夜。
いつもならすぐに「愛欲まみれ」といくところだが、今回のヤチヒロは、戦火をくぐり抜けてガタガタと震えている茶々姫の肩に、そっとお湯を注いだお茶(八王子特産・桑の葉茶)を差し出した。
茶々姫:「……なぜ、私を助けたのです。大天使よ、私は国を滅ぼした悪女、淀殿と呼ばれた身。私を抱けば、あなたも破滅へと……」
ヤチヒロ:「悪女? 違うね。君はただ、大きなプレッシャーの中で、誰も頼れずに必死にアジャストしようとしてただけだ。頑張りすぎなんだよ。ほら、Take it easy(気楽にね)。今日くらいは、淀殿じゃなくて、ただの『茶々』として甘えなよ」
これまでの誰よりも、自分の「心の脆さ」を正確に見抜き、大人の余裕で包み込んでくれる22歳のヤリチヒロ。
茶々姫の瞳から、ツンとした高慢な光が消え、大粒の涙がこぼれ落ちる。
茶々姫:「あ、あんた……なんでそんなに、女の、私の、いちばん隠したい弱いところばかり優しく触るのよ……っ」
ヤチヒロ:「ふふ、だから言ったろ。俺は君の味方だって」
天守閣の奥、夜風に揺れる御簾の陰で、二人は静かに、しかしこれまでにないほど深く魂を重ね合わせた。秀頼は隣の部屋で、ヤチヒロが用意した「現代の極上安眠枕」で爆睡している。
戦国の緊迫感から解放された、本当の意味での心と体のデトックス。ヤチヒロの包容力は、ついに歴史の闇に消えるはずだった茶々姫の心を、完全に救い出したのだ。
ヤチヒロの放浪記は、より洗練された「アジャストの知恵」を携えて、次なる未知の時空へと続いていく。




